表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
5/7

「ずっと覚えていた」第五話【 覚えている】

第五話『覚えている』


 翌朝。


 希美は写真を見つめていた。


 昨夜見つけた一枚。


 幼い自分。


 そして。


 玲という名前の男の子。


 何度見ても思い出せない。


 こんな子いただろうか。


 こんな顔だっただろうか。


 分からない。


 記憶の中にいない。


 それでも。


 胸の奥が妙にざわついた。


玲「何見てるの?」


 声に驚いて振り返る。


 玲だった。


 いつの間にか後ろに立っている。


希美「うわっ!」

玲「ごめん」


 全然悪びれていない。


 希美は写真を差し出した。


希美「この子知ってる?」


 玲が写真を見る。


 その瞬間だった。


 玲の表情が止まる。


 本当に一瞬だけ。


 だが確かに止まった。


玲「……誰?」


 玲はそう言った。


 けれど。


 希美は初めて思う。


 今、嘘をついたような


 そう感じた。


希美「知らない?」

玲「知らない」


 玲は写真を返した。


 いつもの表情。


 いつもの声。


 なのに。


 何かが違った。


 その日の午後。


 希美は実家へ電話を掛けた。


 母親が出る。


希美「昔さ」

母「どうしたの?」


希美「玲くんって子いた?」


 少し沈黙があった。


母「あら」


 母は懐かしそうに笑った。


母「いたわねぇ」


 希美の鼓動が少し速くなる。


希美「どんな子?」

母「よく遊んでたじゃない」


希美「え?」

母「覚えてないの?」


 覚えていない。


 本当に。


 何も。


 母は少し考えていた。


母「確か川で――」


 その時。


 電話が切れた。


 画面を見る。


 圏外でもない。


 電池もある。


 なのに切れている。


希美「え?」


 掛け直そうとした。


 だが。


玲「希美」


 後ろから声がした。


 希美は振り返る。


 玲が立っている。


 静かな表情。


 いつもと同じなのに。


 なぜか少し怖かった。


玲「夕飯何食べたい?」


 あまりにも自然な話題だった。


 希美は数秒黙る。


希美「……カレー」

玲「分かった」


 玲はキッチンへ向かった。


 何事もなかったように。


 希美はスマホを見下ろした。


 胸の奥がざわつく。


 偶然。


 たぶん偶然。


 そう思おうとした。


 だが。


 夜。


 眠る前。


 ふと気付く。


 写真がない。


 テーブルに置いたはずだった。


 どこを探しても見つからない。


希美「……あれ?」


 小さく呟く。


 その声に答える人はいない。


 リビングは静かだった。


 ただ。


 窓の外の風だけが揺れていた。


第六話へ続く▶︎▶︎▶︎


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ