第三十五話 どっちから脱がせるか決めたのかな?
パンツの紐をくわえるか、パンツのリボンをくわえるか、史上最高難易度の二択に挑戦中のまー君は答えを出せずに悩み続けている。誰でも悩んでしまうような問題である上に、第三の選択肢もあるという事で答えにたどり着けそうにもない。
ゆかではなくゆいのパンツを先におろすという選択は選ばないので実質二択のようにも思えるのだけれど、ゆいが自分のパンツの紐を少しだけほどこうとしているのは罠なのだろうか。それとも、純粋に手伝ってくれようとしているだけなのだろうか。その答えにもたどり着けそうにない。
いっそのこと、二人同時に脱がせてみるというのはどうだろうかと考えてみたものの、それを実行するためにはゆかとゆい両名に協力してもらう必要があるという事になるし、協力してもらえるのだとしたらこんな面倒な問題を出すはずがないという考えもあった。ゆかもゆいも楽しそうだったり恥ずかしそうだったりしていて、演技なのか素なのか判断が出来ないのも悩んでしまう要因の一つだった。
「お姉ちゃんの方ばっかり見てると、私がお尻を出したことに気付かないかもしれないよ。お姉ちゃんのことが気になるのはわかるけど、私だって気持ちがあるんだからね」
「そうですよ。私ばっかり見てないでゆいちゃんの事も見てください。そんなにジッとパンツを見られるのも恥ずかしいんですからね」
「それで、どっちから脱がせるか決めたのかな?」
「やっぱり、ゆかちゃんの方からにしようかな。初志貫徹、首尾一貫、終始一貫、徹頭徹尾、有言実行で行こうと思う」
「なんか、難しい言葉を並べてごまかそうとしているみたいだけど、はたから見たお兄ちゃんはお姉ちゃんのパンツの紐を口で解こうとしている変態にしか見えないんだからね。それだけは忘れちゃダメだよ」
「真顔でパンツを見てるのはますます変態チックだけど、ニヤケ顔で見られるのも変態っぽくて嫌かも。でも、お兄ちゃんだったらまだマシかなとは思うよ」
「あんまりひどいこと言わないでよ。俺だってどうしたらいいのかわからないんだからね。だからこそ、最初に決めたゆかちゃんの方から脱がせることにしたのさ」
そう言ったと同時に少しずつ床に近付いていくまー君。
まー君に正対したまま立っているゆかのお尻を確認するためにゆかの横に移動してから後ろに回り込もうとしているのだけれど、まー君が自分の横に来た時にはもう一度まー君に正対するように立ち位置を変えていた。いつまでたってもゆかの正面以外と向き合えないまー君はフェイントを入れたりスピードを上げたりといろいろと試したのだけれど、どうしてもゆかの側面をとらえることは出来なかった。
「俺が移動する方向を向くのはやめてもらってもいいかな?」
「そう言われても、やっぱりお兄ちゃんが見えなくなるのは恥ずかしいから嫌かも。正面にいてくれる方が多少は恥ずかしさも和らぐというか、なんというか」
「逆じゃないかな。見えてる方が恥ずかしいと思うんだけど、俺の姿が見えない方が恥ずかしくないってこと?」
「うん、お兄ちゃんがどこを見てるのかわかった方が恥ずかしくない、と思う。表情が見えないというのは不安に感じちゃうし、お兄ちゃんも正面にいた方がリボンをくわえやすいと思うんだよね。だからさ、そんなに意地を張らないでいいんだよ?」
正面にいてくれた方がリボンをくわえやすいのは間違いないだろうとまー君は考えた。だが、リボンをくわえるとは一言も言っていないし、そうするつもりもない。紐パンの紐をくわえて解くという方向になっているはずなのに、この二人は人の話をまったく聞くつもりがないんだなと改めて感じていた。
このまま流れに乗ってゆかのパンツについている小さいリボンをくわえて脱がせてしまおうかとも考えたが、その結果がどうなってしまうのか予想も立てづらい。
本当にリボンをくわえることが出来るのか試してみないとわからないところもあるし、あんなに小さく可愛らしいリボンをくわえることが本当に出来るのか試す必要もある。見ている限りではくわえることは出来そうなのだが、そのまま脱がすというところまでできるのかは確証が持てない。
だからと言って、今すぐ試すことは出来ないのだが、紐の時と同様にくわえてみることくらいは出来そうだ。
ゆかの側面をとらえて背後に回り込むという行為自体が無理に思えてきたという事もあって、正面に見えるパンツについている小さなリボンをくわえてみようと近付くと、ゆかはほんの少しだけ腰を後ろに引いていた。
なんだかんだ言って恥ずかしいという気持ちもあるんだなとまー君は思ったのだが、もう少しでまー君の口がゆかのパンツのリボンに届きそうな距離まで近づいた時にゆかの手がまー君に向かって伸びてきた。
頭をがっしりと掴まれて前に進めなくなってしまったまー君は視線を上にあげてゆかの顔を見ようとしたのだけれど、頭を掴む力が強く下に向けられていて上を向くことが出来なかった。
少し力を入れればこの程度の押さえこみはどうとでも出来るのだけれど、ゆかが本気で嫌がっているように感じられたので抵抗せずに屈してみることにした。
「そんなに強く押さえられたらリボンに近付けないんだけど」
「わかってるんだけど、それ以上近付かれたら恥ずかしいかも。お兄ちゃんが私の近くでニオイを嗅ごうとしているのが、ちょっと嫌かも」
「ああ、さすがにその距離で深呼吸しちゃうのはどうかと思うよ。明らかにお姉ちゃんのニオイを嗅ごうとしているよね」
そうではないという事を弁明しようと思ったとき、まー君が感じたのは石鹸のようなさわやかな香りと少しだけエキゾチックで刺激的な香りだった。
どちらも嫌いな感じではなく、むしろ好きな臭いではあったのだけれど、それを説明すると余計にややこしいことになりそうだと思ったまー君は沈黙を貫いた。
ただ、それが裏目に出てしまうとはまー君も気付かなかったのである。




