第二十五話 罰ゲームで三日三晩?
お口で脱がせろと言われたとしても、それをすぐに実行することは出来ない。
なぜなら、ゆかとゆいがきている服はファスナーではなくボタンでしっかりと留められているからだ。ファスナーであればまだギリギリ許されるのかもしれないけれど、さすがにボタンを口で外すのは無理があると思う。引きちぎっても許されるのであれば可能かもしれないが、口だけを使ってボタンを外すなんて芸当を身につけていないまー君には無理な話である。
そんなまー君の気持ちを考えもしないゆかとゆいは幾度となくまー君のことを煽っているのだ。
「お兄ちゃんに出来ることはそのお口を使ってこのボタンを外すことだけだよ」
「このシャツのボタンは簡単に外せると思うけど、胸ポケットについているボタンはちょっとだけ難しいかもね」
「胸ポケットのボタンを外す必要はないと思うけど?」
「それはどうだろうね。この胸ポケットのボタンが重要なカギを握っているかもしれないんだよ」
「もしかして、お兄ちゃんはまたビビっちゃって動けなくなっちゃってるのかな?」
「そうかもしれないな。じゃあ、今回は諦めて帰ろうかな」
「そっか、お兄ちゃんは帰っちゃうんだね」
「ここまで頑張ってくれたから、引き留めるのも悪いよね」
あまりにもあっさりと帰ることを認めてくれた二人の反応に少々面食らってしまったまー君であったが、すぐに何か裏があるという事に気付いていた。このままタダで帰してもらえるとは思わないし、とんでもない罰が待っているのだろうという事は容易に想像がついた。
ただ、まー君が思っている罰よりもかなり過酷な罰が待っているという事に絶望してしまう事になるだろう。
「お兄ちゃんとはまたどこかで会えると思うからそれまで私たちのことを忘れないでね」
「まだちょっとしか一緒にいられてないんだけど、お兄ちゃんと過ごした時間は楽しかったよ」
「こちらこそ、いろいろとありがとう。次は普通に遊んでくれていいからね」
「そうだね。お兄ちゃんが少しでもゲーム強くなってることに期待しておこうかな」
「私もお姉ちゃんみたいにゲーム上手くなってお兄ちゃんをボコボコにしてあげるんだからね」
「ほどほどでお願いするよ」
「じゃあ、お兄ちゃんが途中で帰るってことを零楼館乳首郎に連絡しておくね」
「何で零楼館乳首郎に連絡するの?」
嫌な予感に限って的中するのは今回に始まったことではない。
ただ、今回の罰は今までまー君が体験した中でも群を抜いて過酷なものになってしまうのだ。
「何でって、罰ゲームをするのにも準備が必要になるでしょ?」
「五十人の男色家を集めるのって意外と大変なんだよ。お兄ちゃんはその苦労は知らないよね?」
「全然知らないけど。それよりも、なんで男色家を五十人も集める必要があるの?」
「何でって、罰ゲームに必要だからでしょ」
「私たちに興味がないお兄ちゃんにはちょうどいい罰ゲームになるかもね」
「いやいや、君たち二人に興味がないって一言も言ってないんだけど。それに、五十人の男色家を集めてどうするのさ」
「そんなのは知らないわよ。私は淑女なんでそっち方面の経験がないわけだし、男同士で何をするのかなんて知識しかないわよ」
「そうよそうよ。私たちみたいな淑女はそちら側の世界に踏み入れることは出来ないのよ。ただ、黙って見守ることしかできないんだからね」
そんな事を私たちに言われても困るという態度のゆかとゆいではあるが、それ以上に困っているのがまー君である。
五十人の男色家が一斉に襲ってきたところで負ける気などしないのだが、一斉に襲われたという情報が流出拡散してしまう事には何物にも代えがたい不名誉だと考えられる。実際にどうなったかという事を気にする人よりも、そんな恐ろしい事態が発生していたという事実だけで満足してしまうような人の方が多いような気がしているのだ。
人という生き物は、何も起きなかったという真実よりもセンセーショナルな事態が発生したという事を楽しむものなのだ。まー君が五十人の男色家に襲われた、というところまでの情報だけが必要であり、結果的に五十人全員を撃退したのにまー君は無傷だったという結果は必要ないのだ。
五十人の男色家がまー君を襲った結果、何かが起きたかもしれないと思わせることが出来ればそれで十分。零楼館乳首郎はそんな事を考えているのだろうとまー君は深読みしてしまった。
「二人に聞きたいんだけど、俺が五十人の男色家に襲われたとしてどうにかなると思う?」
「全然。お兄ちゃんはそこら辺の一般人千人に襲われたところで何ともないと思うよ」
「私もお姉ちゃんと一緒でお兄ちゃんは何もなかったと思うかな。でも」
「でも?」
「お兄ちゃんのことを詳しく知らない人は、そう思わないのかもしれないなって思っちゃうかも」
「私もゆいちゃんと同じようなこと考えてたな。世の中には、お兄ちゃんのことを普通の人より少し強いくらいの認識の人もいるだろうしね」
「そうだよね。そんな人たちに襲われたとしたら、お兄ちゃんは抵抗もできずに三日三晩責められ続けることになるんだろうね」
「三日三晩はヤバすぎだろ。もしかしてだけど、そんな噂を流して俺のプライドを傷つけるってことなのか。考えたくはないけど、そんな噂を払しょくするために女を抱きまくるとでも考えているとでもいうのか。零楼館乳首郎、なんと恐ろしい男よ」
「さすがにそんなことまで考えてないでしょ」
「ただの嫌がらせをしようとしているだけでしょ」




