第六話 神と悪魔
天空世界からの使者がかいりを連れて行った。きっと、かいりなら元気に戻ってくるはずだ。そう信じて送り出したのだ。
「かいりちゃんのあの魔法を自由自在に使えるようになった時、まー君は無事では済まないという事だね」
「でも、かいりちゃんがいなくなった今、まー君の動きを止めるのは誰の役目になるのかな?」
ゆきのも小悪魔もまー君と対等に戦える程度の戦力はあるのだけれど、夜の戦闘となると話は変わってくる。
世界最強で誰も勝てないとはいえ、まー君も思春期の男子である。それなりに女体について興味はあるはずなのだが、伝説のサキュバスであるイザーちゃんとうまなちゃんに対して謎に操を立てているという事で他の女の誘いに乗ってこないのだ。むしろ、夜に関しては女を避けている節さえみられる。
それを攻略するのは一筋縄ではいかないと思われるのだが、実際に相対した人の話を聞くと、意外と誘いには乗ってくるそうだ。でも、最後の一線だけは絶対に超えないらしい。
「噂で聞いたんだけど、まー君って意外と女の子の誘いには乗ってくるらしいよ」
「そのうわさは聞いたことあるかも。でも、最後の一線だけは越えないらしいね」
「そう聞くと、インポなのかなって疑っちゃう人もいたようだけど、実際には立派な形状になってたらしいね。ズボンの上からでもわかるくらいにハッキリとした形が浮いてたんだって」
「やたらと生々しい話だね。ボクたちにはそんな噂が届いてなかったけど、天空世界にはどうなのかな?」
「あたしのところにはチラッとそのような話も伝わってきてたよ。それを聞いたからこそ、天空世界でエースと呼ばれるあたしの出番ってわけだからね」
「エースって、そっちの意味だったの?」
「そう言うわけじゃないけど、まー君を実際にこの目で見たら色々と思うところはあるよね。普通に戦って勝とうと思うよりも、夜の舞台の方が勝てる可能性があるんじゃないかって思っちゃったよ」
「それはボクも感じてたかも。パパと力を合わせればいいところまで行くかもしれないって感じたけど、ボクの場合も夜の舞台の方が良い勝負になるんじゃないかって思ってたかな」
天空の民のエースであるゆきのも悪魔界屈指の実力者である小悪魔も本来であれば気軽に地上に降り立つことはありえない程の存在なのだ。
ただそこに存在しているだけでこの世界中の戦力全てが注視することになり、彼女たちの一挙手一投足がこの世界の軍事バランスに多大な影響を与えかねない。
もしかしたら、小悪魔がこの世界にやってきたことで神の軍勢が大挙して攻め込んでくることも考えられるし、最終戦争が勃発しても不思議ではない程の恐怖と悪意に満ちた存在が小悪魔なのである。
しかし、この世界にはまー君が存在している。
彼以上の抑止力はどこを探しても存在せず、小悪魔の父親や神々でさえもまー君を敵に回すようなことを回避することで精一杯だったりする。そのことを小悪魔もゆきのも気付いてはいないが、本来であれば今みたいに気軽にこの世界に遊びに来ることが出来ないという事は理解している。
ただ、そんなことに気付いている者は誰もいない。まー君はもちろんのこと、小悪魔もゆきのも、小悪魔の父親や神々でさえもそんなことになっているとは気付いていないのだ。
なぜなら、この世界にまー君がやってきた時点で神と悪魔が争う意味が無くなってしまった。
神も悪魔も普通に戦っては勝てないし、全戦力を集中したところで勝てるという保証もない。神と悪魔が共闘すれば勝てる可能性が生まれるかもしれないが、そんな小さな可能性に賭けるほどお互いを信用することは出来ない。悪魔と人類であれば共闘する未来もあるかもしれないが、神が人類と共闘する事で対等な関係になってしまう事を認めるとは思えない。
そんな神の代弁者とも呼べる天空の民のエースであるゆきのがこうして小悪魔と仲良くしているのは、あくまでも神の代弁者であり神そのものでもなく神の軍勢でもないという特別な存在だからである。
四百年に一度だけ選ばれしものが地上に降り立つことが出来るという規則が天空世界には存在しているのだが、それを無視しても仕方ないようなことが地上世界で起こっている。小悪魔の存在もそうだが、それ以上に厄介なのがまー君がこの世界に大きな影響を与えようとしているという事なのだ。
ゆきのはもちろんのこと、そのほかの天空の民たちもそのことには気付いていないし、ほとんどの者は小悪魔と同等の力を持つゆきのが地上に降りたことで悪魔たちを牽制していると思っているのだ。
世界を簡単に滅ぼしてしまうような能力を持った存在が二つ同時に地上に降り立ち、その二人が手を取り合って協力する。
それでも勝てないと思うような相手に対してどうするか。
出した答えはたった一つ、日中の戦闘よりも夜の戦い。
人間ともサキュバスとも違う、特別な存在であるゆきのと小悪魔がまー君の童貞を奪う。出来ることなら、自分たちに敵対しないような結末を迎えるようにしたい。
ゆきのも小悪魔もそんな事を考えてはいないのだが、この世界に存在する神々も小悪魔のパパもそれを心の底から切に願っているのだ。
まー君の気を損ねてしまい、自分たちが滅亡することだけは避けたいと本気で願っている。




