第二十六話 勝利者インタビュー前半
誰もが興味を持っていた事、まー君はなぜか入りの攻撃を受けた時だけ吹っ飛んでしまっていたのか、という事だ。筋肉お化けの攻撃も、達人と呼ばれるものの攻撃を受けてもびくともしなかったまー君が、かいりの攻撃を受けた時だけ結界にぶち当たるまで吹っ飛んでしまっていたのだ。
その理由は、攻撃をしていた側のかいり自身もよくわかっていないのが現状である。
「かいりちゃんの攻撃を受けた時だけ物凄く吹っ飛んでましたけど、アレってまー君が自分で後ろに飛んでたってわけじゃないですよね?」
「そうだったらいいんですけど、そう言うわけでもないんですよ。俺自身もなんであんなふうに吹っ飛ばされてたのかわからないんです。なので、その理由を確かめようと何度も何度も向かって行ったんですけど、結局その秘密はわからなかったな。誰かわかる人います?」
まー君の問いかけにこたえることが出来る者は誰もいなかった。解説に回っていた零楼館乳首郎も天空の民もまー君が吹っ飛ばされていた理由はわかっていないし、観客の中にもわかっている人はいなかった。
女の子の秘密はあまり詮索しない方が良いのかもしれない。
「では、質問を変えまして。まー君はかいりちゃんの攻撃を受ける一方で、反撃は狙ってなかったという事でしょうか?」
「そうだね。試合を終わらせようと思えばいつでも終わらせることも出来たんだけど、なんでかいりちゃんの攻撃を耐えることが出来ないのかって理由を知りたい気持ちを優先しちゃったんだよね。何度も食らってればその秘密がわかると思ってはいたんだけど、結局のところその秘密どころか糸口さえ見つけられなかったな。何となく、魔法が関係しているようにも思ってたんだけど、魔法を使っている形跡もなかったし、謎は深まるばかりだよね」
「公式記録によると、まー君もかいりちゃんも魔法の使用は確認されてないみたいです。って、あんなに吹っ飛ばされてたのに魔法を使って防御してなかったんですか?」
あらためて記録を確認して魔法の使用が無かったことに驚いた愛華だが、公式記録を見た誰もが同じ感想を抱いていたであろう。あんなに吹っ飛ばされていれば受け身をとるよりも魔法で衝撃を分散するのが普通だし、魔法を使えるものなら誰もが自然とおこなっていることなのだ。
かつて誰かが言った、魔法使いにとって一番大切なのは生き残ること。という名言からもわかる通り、この世界の魔法使いは攻撃よりも守備を重要視していて、出来ることなら無傷の状態で家に帰るように努力しているのだ。
だが、まー君はその考えを否定するかのように防御魔法を一切使っていなかった。もともと使えないという事はないのだが、いつからか相手の攻撃を受ける際に防御魔法を使う必要が無くなってしまったという事に気が付いたのである。
このことはあまり有名ではないので気にしている者は少ないのだが、それに気付いた者はどうやってもまー君にダメージを与えられないのではないかと考えていた。
タダでさえダメージが通らないまー君に対してやっとの思いでダメージを与えられるとしても、防御魔法を使われてしまっては攻撃が無意味になってしまう可能性が高いのだ。何の上乗せもない状況にもかかわらず、この世界で最高の攻撃力を使っても届かない。まー君にダメージを与えることが出来る分岐点を超えたとしても、その先にはさらに魔法で強化することが出来るという絶望が待っているのだ。
もちろん、まー君の防御魔法の加点が低いという可能性もあるのだけれど、現実問題としてミサイル攻撃を超える一撃の破壊力を生み出すことは使用を禁止されている兵器や魔法を使う以外に考えられないのかもしれない。
「ちなみになんですけど、ミサイルの直撃を受けた時はさすがに防御魔法を使ってましたよね?」
「そりゃ使いますよ。あんなのまともに食らったら裸になっちゃうかもしれないんですからね」
「……はだか?」
インタビューをするときは相手の答えをあらかじめ予想しておいて次の質問にスムーズに進むという技法を愛華はとっている。今まで何度もそのやり方で多くの回答を聞いて次の質問へと繋げることが出来たのだが、ミサイルの直撃を受けると裸になるという事が結びつかなくて固まってしまった。
決して、まー君が裸になったところを想像して固まってしまったわけではない。
「だって、あのミサイルって燃料がほぼ満タンの状態だったんですよ。ミサイルが爆発してその燃料に引火したらどうなるかって、あたり一面火の海になっちゃうじゃないですか。俺の体が爆炎に耐えられたととしても、俺の着ている服は耐えられる仕様になってないですからね。いたって普通のその辺で売ってる服ですから。普通に考えたら燃え尽きちゃうってわけですよ。だから、服が燃えないように魔法で守ったというわけです」
「なるほど。よく考えたらそうですよね。まー君が耐えられたとしても、着ている服は耐えられないですもんね。いやいや、なんでミサイルの直撃に耐えられるんですか。意味わかんないですよ。そんなんじゃ、誰も勝てないじゃないですか!!」
「わかんないですよ。かいりちゃんみたいに俺が理解出来ない攻撃をしてくる再挑戦者がいる可能性はありますからね。もちろん、悪魔や天使が戦いを挑んでくる事が考えられるし、そいつらは人知を超えた不思議な力を持っていてもおかしくないですからね」
このまー君の余計な一言がきっかけとなり、悪魔がこの世界に侵攻してくる予定が先送りになったという事には誰も気付いていなかった。




