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史上最高のサキュバスと契約を結んだのは良いけれど、何か思っていたのと違うのでチェンジしたいんですが……え、もう遅い?  作者: 釧路太郎
人魔共闘の章

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第二十三話 かいり、上に乗る

 近付いては吹っ飛ばされ、吹っ飛ばされてはまた近付いていく。それを何度も繰り返していたまー君が急に立ち止まると、かいりはどうしていいかわからず焦ってしまい、今まで確実に当たっていた攻撃が初めて空を切った。

 かいりの左手が空振りをしたところに潜り込んだまー君は足払いをしてかいりを転ばせようとした。

 だが、かいりは何とか踏みとどまって前のめりになりつつも倒れないように必死に耐えていた。

 そこをさらに攻めるまー君は払っていた足をすぐに戻してカニばさみ状態でかいりの足を刈り、そのままお互いが倒れこんだ。

 まー君が意図したものなのかはわからないが、お互いに倒れたことでかいりがマウントポジションをとる形になった。さすがにこの状況で強打することはないだろうと誰もが予想していたのだが、そんな周りの考えをあざ笑うかのようにかいりは強烈なパウンドを放っていった。

 あまりにも強い衝撃がまー君を襲い、その反動で二人の体が若干浮いてしまっていた。それでもかいりは強烈なパウンドを打ち続けていた。あまりにも凄惨な光景になるかと思われたのだが、先ほど同様にまー君は一切ダメージを負っていないようで殴られているのに一切腫れはなく、当然出血も見られなかった。


「あんなに激しい攻撃なのに、まー君には一切ダメージが無いように見えるんですが。これって私たちに勝てる見込みはあるんでしょうか?」

「綺麗に完璧に勝つというのは難しいのかもしれませんね。ですが、かいりちゃんの攻撃でまー君があんなに簡単に吹っ飛んでいたことや、今のマウントポジションでのパウンドでも衝撃がちゃんと伝わっているという事を見ると、やり方によっては勝てる見込みもあると思いますよ。私たち普通の人間には無理かもしれませんが、人知を超えた存在であればちゃんとダメージを与えることだって出来ると思います」

「人並み外れたと人は簡単に使いますが、今のまー君を見ているとその言葉がぴったりですね。もしかしたら、それどころか神の領域に足を踏み入れていると言ってもおかしくないかもしれないですよ。だけど、それは所詮人間レベルの話ですから。うちのエースはかいりちゃんみたいに小柄で可愛らしくて強いんです。確実に命をとるために急所をちゃんと狙える技術もあります。うちのエースなら、まー君に勝てるんじゃないかって思いが強くなってますよ。かいりちゃんの戦い方をエースも見てるはずだし、攻略する糸口は見つけてるんじゃないですかね」


 地上世界と同時刻にリアルタイムでまー君とかいりの戦いを見ていた天空の民たちは解説に加わっている同胞のリップサービスに頭を抱え込んでいた。

 確かに、天空の民のエースは小柄で可愛らしく戦闘技術も申し分ない。普通であれば人間なんぞに負けるはずがないと思っている。思ってはいるが、まー君の異常とも呼べる打たれ強さの前に完全に戦闘意欲を失っていた。


「あんな化け物相手にあたしが勝てるとか余計なこと言わないでほしいよ。あんたたちはどうしたらまー君に勝てると思う?」

「無理でしょ。他の世界から魔王たちを集めて共闘するのが一番だと思いますよ。エースであるゆきのちゃんなら魔王もうまく使うことが出来ると思うし、何とかなるんじゃないかな」

「そんな気軽に考えないでよ。あいつのせいであたし一人で戦わないといけないみたいな空気になってるのに、魔王をたくさん連れてきましたなんて言い出しにくいでしょ」

「でも、チームを組んで戦うってのはルール上問題ないはずですよ。烏合の衆だとこの前みたいに一人よりも弱くなったりするかもしれないですけど、今から強い魔王を集めて練度を高めれば問題ないって。ゆきのちゃんなら出来るって」

「無理無理、そんなの無理っしょ。あたしがチームプレイに向いてないってあんたが一番わかってるはずなのに、勝てる見込みがないって思ってるからって好き勝手言い過ぎだって。もう、こうなったら戦闘じゃなくて夜の誘惑部門でエントリーしちゃおうかな。それもありだよね?」


「……アリだとは思いますけど、それで本当に良いんですか?」

「だって、仕方ないじゃない。あんな化け物に勝てるわけないし。かいりちゃんの攻撃って飛んでいる飛行機が直撃したくらいの威力があるのにさ、全く無傷なんだよ。見たところ体の頑丈さは異常だとして、更に魔法耐性もあるみたいであたしの攻撃なんて通用するわけないって戦う前からわかってるでしょ。いっそのこと、まー君以外の生命を全部絶命させた方が早いような気もするわ。……冗談だって。冗談よ」


「冗談か本気かわかりませんが、あんまり刺激しない方が良いかもしれないですね」

「そうよ。刺激しない方が良いわ。でも、ベッドの上で刺激するのはありかもしれないわね」

「それはお好きにどうぞ」


 大画面に映されているまー君がパウンドを叩き込まれる姿。かいりは寝ている相手に多少の罪悪感があるのか鼻や目を極力狙わないようにしていた。

 それでも、十分な威力があるので普通なら失神してもおかしくないまー君だが、無意識なのか意識的なのかわからないが時々カメラをじっと見つめていた。反撃はしないと言っていたものの、何かを狙っているのではないかと思わせるような表情であった。


「あ、これ以上続けない方が良いかも。かいりちゃんにとって屈辱的な展開になるかも」


 天空の民のエースであるゆきのは未来が見えているような口ぶりではあったが、これは単に思わせぶりなことを言うのが格好いいんじゃないかと思っただけなのだ。

 周りの大人たちもそれは理解していたので、特に何かを言うという事はなかった。

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