第七話 お話合いは大切
サキュバス娼館支配人代理と男色家のリーダーの話し合いは僅か一分ほどで終了した。
零楼館乳首郎の貞操を守った会話にしては以上に速いと思ったのだけれど、そんな事を言っている余裕が零楼館乳首郎にはなかった。
とにかく、自分の身が守れたということに安堵できたので内容なんてどうでもいいと思っていたのだ。
いくら強いと言っても普通の人間である零楼館乳首郎には限界があるわけだし、罪人ではない者を殺めるという事に罪悪感が生まれてしまうため力を発揮することも出来なかった。
ただし、男色家の彼らは色々な経験を積んでいるだけあって戦闘面に関しても実力は折り紙付きで、戦場に出れば一騎当千の働きをしているという事もあるので零楼館乳首郎が必ず勝てるという保証はないのだ。
「うんうん、お話がまとまってよかったねぇ。零楼館乳首郎ちゃんもこれで安心してうつ伏せになれるってもんだねぇ」
「話をまとめてくれたのはありが痛いんだけど、うつ伏せになれるって言うのはどういう意味なのかな?」
「その辺は自分で考えてみるのが良いんじゃないかなぁ。少なくとも、彼らはお天道様が見ている時間帯は何もしないって約束してくれたからねぇ。活動時間的はサキュバス娼館と丸被りしちゃって入るんだけど、客層が全く違うからその点に関しては問題なんて何一つないからねぇ。まー君も零楼館乳首郎ちゃんも私たちのところに遊びに来てくれないから仕方ないさぁ」
「あえて聞いてなかったんだけど、わかなちゃんはサキュバス娼館の支配人代理として男色家のリーダーと話をまとめてくれたんだよね?」
「そうだよぉ。私は零楼館乳首郎ちゃんのためにあの人たちと話をまとめたってことなのさぁ。普段会う事のない人たちだったから緊張しちゃったけど、離してみると意外と話の通じる人なんだなって感じたくらいだよぉ。きっと、零楼館乳首郎ちゃんとも仲良くなれると思うんだけど、今晩からどうかなぁ?」
「そう言う冗談は良くないと思うな。でも、どんな風にまとめたのか教えてもらえるかな?」
「別にいいけど、あんまり期待しちゃダメだよぉ」
楽天的な人間に見られがちな零楼館乳首郎ではあるが、本来の性格は物凄く慎重で臆病なのだ。それを隠すためにも豪放磊落な性格を演じて入るのだが、一部の人にはすでに見抜かれているので下僕扱いをされることもある。世界一強くなろうと思ったのも、本来の性格を改善するという目的があったのだが、いざという時には素の部分がでてしまうので重要な場面を人に任せることも多い。それを見た他人は後継者を育てるために選択させていると思っているようなのだが、本当は決めることが出来ない臆病な男なだけだったりする。
「まず、男色家の人達の衣食住は零楼館で賄うという当初の契約を確認するところから始まりましたぁ。一日の食費は一人三千円という契約だったと思うんだけど、育ち盛りな彼らはその倍は欲しいという事だったので、いろいろと検討した結果、キリが良い数字である一万円に決まったよぉ。それだけあれば足りるかもしれないけど、お誕生日とかイベントの時は別途支給されるっていう条項も付け加えておいたから安心してねぇ」
「ちょっと待ってもらっていいかな。金額的には何の問題もないんだけど、決めたのって食費の事だけだったの?」
「そんなわけないじゃないさぁ。ちゃんと零楼館乳首郎ちゃんのお尻を守る契約もしてあるから安心してほしいなぁ」
「ずいぶんと直接的な話だけど、それが一番重要だからお願いします。ちゃんと納得出来る話なってるってことだよね?」
「当然だよぉ。私は今まで何度もサキュバス娼館支配人代理として外部と交渉事も行ってきているんだからねぇ。交渉人としての評価もサキュバス娼館の中では一番高いんだって自慢してるくらいなんだよぉ。それじゃ、零楼館乳首郎ちゃんの貞操を守るって話をしたいんだけど、心の準備は大丈夫かなぁ?」
真面目な表情でしっかりと目を見てくるわかなに少しだけ気後れしてしまった零楼館乳首郎ではあったが、三度ほど深呼吸をし背筋も伸ばしてから改めてわかなの正面に移動した。
心の準備はまだ完全に出来ているとは言い難いのだけれど、先延ばしにしても答えが変わるわけではないという事を零楼館乳首郎は知っているので素直に答えを聞くことにした。
あの短時間でいったいどんな内容を話し合ったのか、一流の交渉人の腕を確かめさせてもらい信用させてもらおうと零楼館乳首郎は考えていた。
「今回の会談で一番の重要項目だと思ったんで衣食住よりも長めに時間をとってもらいましたぁ。向こうサイドの意見は色々あったと思うんだけど、こちらとしても絶対に譲れないポイントがあると思うんで、そこだけは死守できるようにしっかりと抵抗するところは抵抗させてもらう事にしたんだよぉ」
「さすがに俺も色々と守るものがあるからな。それさえ守ってもらえるんだとしたら、他の事は多少目をつぶることも出来るよ。その内容次第では、今まで以上にサキュバス娼館を支援したいと思ってるからね。その見えている自信、期待しちゃってもいいんだよね?」
「さっきは期待しないでほしいって言ってしまったけれど、本当は自信もあったりするんだよねぇ。零楼館乳首郎ちゃんを驚かせるための冗談だったのさぁ。だから、本当は期待してくれてもいいと思っているんだよぉ」
その言葉を聞いて緊張の糸が切れたのか、零楼館乳首郎は天井を向いて大口を開けて豪快に笑っていた。
それにつられるようにわかなも笑っていたのだが、サキュバス娼館支配人代理という事もあって、口元を抑えて上品に笑っていた。




