第四話 みんなの応援が力になります
多くの民衆だけではなく、対戦相手であるはずのまー君ですら魅了してしまうゆまには何か秘密があると思うのだけれど、その謎を解くことが出来る者はいなかった。天性の才能なのか、絶対的な特殊能力なのか不明であるのだが、電波に乗せたゆまの姿を見ただけでもそう感じさせてしまうというところに何とも言い難い恐怖を覚えてしまいそうなものではあるけれど、誰一人としてその恐怖について考える者も存在しなかった。
男女問わず、すべての知的生命体はゆまに魅了されていると言ってもおかしくない状況になっていた。
それ自体が良いことなのか悪いことなのか誰も気にしていないし、観客の全てがまー君の敵だった時ですら公平にインタビューしていた愛華ですらもゆまの味方をしている。
全人類がほぼ全てゆまの味方になっていると言っても過言ではない状況において、まだギリギリ公平性を保っている集団がいたのだけれど、彼らは今のところ表舞台に出てくるという可能性が薄い。まー君の味方になるのかは不明であるが、盲目的にゆまを信奉する事だけはないと言っても嘘にはならないのだ。
まー君自身ですらも自分のアンチになりかけている状況は明らかにおかしいと思えるのに、うまなちゃんもイザーちゃんもその事をおかしいとも異常だとも思っていない。むしろ、ゆまのためにまー君を弱らせる方法を模索しているという有様であった。
ただ、うまなちゃんとイザーちゃんの力ではまー君を弱らせることなどできなかったし、それが出来たとしてもまー君はすぐに復活して体調万全になっているだろう。再挑戦者の特殊体質の一つとして、自然治癒力が異常に強いというものがあるのだが、まー君に関して言えばその力も常人の比ではない。ミサイルの直撃を受けたとしてもすぐに治癒していたことからもわかる通り、現代兵器ではまー君を傷付けることも難しいと言われている。何か特殊な道具か呪われている装備でも押し付けなければ難しいだろう。
愛華のインタビュー映像を見ながら、まー君の首を斬り落とそうとうまなちゃんとイザーちゃんが様々な刃物を持ってきているのだけれど、残念なことにまー君の皮膚にも傷をつけることが出来なかった。釘を打ち付けてみても釘が折れ曲がってしまうだけだし、たまたま持っていた特殊合金のドリルもまー君に触れている場所から摩耗して無くなってしまっていた。
ここまでくると本当に人間なのか疑問に思えてくるだろうが、全てにおいて耐久力が異常すぎるというだけでごく普通の人間であるという事には間違いない。
まー君は神をも超える力を持ってはいるものの、神でも悪魔でもなく普通の人間である。人間をやめたと言われることもあるのだけれど、実際に人間をやめたという事実などないし、防具も必要ないと思えるくらいに高い耐久力を誇るだけで構造的には人間そのものなのである。
そんなまー君に対してどうすれば勝てるのかと多くの者が頭を悩ませてきたのだけれど、その答えにたどり着いたものは誰一人として存在しない。今までもこれからもまー君に勝てる者などあらわれないだろうと思われていたのだけれど、特殊で限定的な勝利条件を設定してしまえばまー君も負けることがあるという事が、ゆかとゆいとの戦いで証明されたことはゆまにとって都合のいい事実になるかもしれない。
まー君に勝ったゆかとゆいとゆまは名前も似ているし、可愛らしいという共通点もある。ただ、大人なお姉さんと幼女という見た目の違いはあるものの、可愛い女の子であるという共通点の方が大事になってくるのかもしれない。
「もう会場には入りきれないくらいたくさんのお客さんがゆまちゃんのために集まってくれていますが、そのお客さんの期待に応える自信がゆまちゃんにはありますか?」
「うーん、正直に言っちゃうと勝てる可能性は低いと思います。でも、みんながいっぱい集まってくれてたくさん応援してくれたら、まー君にも勝てるんじゃないかなって思ってるよ。まー君もゆまと戦うのはやりにくいって思うかもしれないし、そうなってくれたらゆまにもチャンスがあるかもしれないね」
「おお、勝てる自信が少しでもあるって言うのは凄いですね。それも、ただのリップサービスじゃなくて本気でそう思っているように感じるのですが、その点はいかがでしょうか?」
「ここに来たからには勝てるって思ってはいるんだけど、やっぱり戦いの時間が近付くと緊張と同時に怖さもゆまのところにやってきちゃうかもしれない。一人だったらゆまはその恐怖に勝てなかったと思うんだけど、今はみんなが応援に駆けつけてくれたおかげで何とか戦えそうだよ。たくさんたくさん応援してくれたら、ゆまはいつもよりも強い力を発揮することが出来ると思うんで、みんなたくさん応援よろしくね。もちろん、会場に来れなかった皆もゆまの事をいっぱいいっぱい応援してね」
世界各地からゆまのもとへ応援のエネルギーが次々と送られていた。そのエネルギーがどれほどゆまにとって活力となるのか、どれほどの支えになるのかわからないが、送られてきたエネルギーの中にまー君のエネルギーも入っていたという事だけは何故かみんな知っていた。
エネルギーを送り続けた結果、まー君の体調は過去に例を見ないレベルで絶不調になっていた。




