第二話 いっぱい応援してくださいね
ニュースなんて見ていない。朝から嫌なものを見てしまったという記憶を消して、もう一度爽やかな朝をやり直す。
三人ともその認識を共有して、改めて爽やかな朝を迎えることにした。
いつものようにまー君に挑戦をしようと多くの人達が向かっているはずなのだが、今日に限ってはあの不気味なニュースの影響で出歩く人影もまばらであり会場にも空席が目立っていた。
このままでは観客が少ないまま試合開始の時間を迎えてしまう事になるのだろうが、配信の待機人数がいつもの五倍以上になっているので運営サイドとしては気にする必要もないことであった。
ただし、実際にまー君と戦うことになる者にとってはかなり影響が大きいことが予想される。観客は全員もれなくまー君のことを敵視しているという事もあって、出場者はどんな状況になっていたとしても観客からの大きな後押しがもらえるのだ。まー君の戦闘スタイルによる影響も多少はあるのかもしれないが、実際にまー君と戦ったものは自分の実力以上の力をいかんなく発揮し自分の未来における可能性を見出すことが出来ていたのだ。
今回に限っては、そのアドバンテージとも呼べる観客の後押しもそれほど期待できそうにないので、自分の本来の実力を出せるかどうかが大きな課題になってくるのかもしれない。
そんな中、いつもと同じように多くの参加者が冷やかしのためキャンセルすることとなってかいりが登場すると思われたのだが、今回はどうしても天空世界で抜けられない用事が出来てしまってキャンセル待ちに登録していなかったのだ。
その代わりに選ばれた選手はかいりと同じように可憐で少し大人っぽくふわふわした感じを見せている可愛らしい女の子であった。
最近のまー君は夜の時間帯に何かあったのかと思うくらいに男と女に対する試合運びが変わっているのである。
女性を相手にする時は今までと同様に戦闘レッスンをするかのように相手の良いところを引き出そうとする傾向が見られるのだが、男性を相手にする時はそんな事を考える間もなく瞬殺で試合を終わらせているのだ。まるで、成人男性に対して何かトラウマでもあるかのような対応をしているのだけれど、今朝のニュースを見てしまった人の中には何かを察してまー君に少し同情する者もいたらしい。
まー君が登場してくるまでもう少し時間もあるという事だし、今日も司会を務める愛華がキャンセル待ちで登場した可憐な女性に対してインタビューを行うことになった。
数少ない観客と配信を見ている異常な数の視聴者の注目を一身に集めた彼女は、細いながらも鍛えられた肉体と大事な部分を隠しているふわふわな衣装に身を包み、頭の上にはウサギの耳を立てている。可愛いとも綺麗とも言えるその見た目は男女問わずに見ている物を虜にするだけの魅力があった。
「今日もキャンセルがたくさん出てしまったために試合が行えるか心配だったのですが、無事に開催することが出来たのはこちらにいらっしゃるゆまさんのお陰です。皆さん、ゆまさんに盛大な拍手をお願いします」
愛華の紹介を受けたウサギの美少女ゆまは拍手にこたえるように四方に向けて手を振り笑顔を見せていた。その笑顔を見たものは、さらに魅了されてしまっていた。
「今日は初めて参加されると思うんですが、まー君に対してどんな印象をお持ちでしょうか?」
「ここで会うのは初めてなので緊張していますが、せっかく参加するからには勝てるように頑張りたいと思います。みんな、ゆまの事応援してくださいね」
「おお、今日はいつもよりも少ない人数になっているようなんですが、いつもと引けを取らないくらいの大歓声がゆまさんを応援していますね。いくつか気になることがあるのですが、答えられる範囲で答えてもらってもいいでしょうか?」
「はい、ゆまが答えられることだったらなんでも聞いてください。でも、中には答えられない者もあるかもしれないので、その時は答えなくても怒らないでくださいね」
「もちろんです。では、答えられる範囲で結構ですので、ゆまさんの戦闘スタイルはどのような感じでしょうか?」
「ゆまは、まー君と同じ魔法使いの再挑戦者なんですよ。でも、まー君と比べたら全然強くてニューゲームの回数が少ないと思うんで強くないんですけど、魔法はたくさん使ってきたんでそれなりに通用するんじゃないかなって思ってます。みんなの応援があったらもっともっと強くなれると思うので、近くに住んでいる人は会場に来てくれると嬉しいなってゆまは思ってます。試合開始までもう少し時間があると思うので、一人でも多くの人に応援してもらえたら嬉しいです」
「確かにそうですね。今朝のニュースで見たちょっとどころではない異様な光景が目に焼き付いて離れないって方もいるかもしれませんが、あの人たちはみんな零楼館乳首郎が相手をしているので一般市民の方々には何の影響もないという事なのでご安心ください。これは余談なんですが、まー君が負けた時点で零楼館乳首郎の部屋からまー君の部屋にあの集団は移動するそうです」
一瞬の沈黙の後、会場中が今までにないくらい大きな歓声に包まれていた。
まー君があの集団と同じ部屋で過ごすという事は、史上最高評価を得ているサキュバスのうまなちゃんとイザーちゃんが解放されるという事を意味するのだ。
盛り上がらないわけがない。
「へえ、そうなんですね。それだったら、ゆまは凄く頑張らないといけないですね。そのためにも、応援たくさんしてくださいね」
カメラ越しにゆまのウインクを受け取った多くの視聴者は軽く着替えただけの格好でわれ先にと試合会場へと足を運んでいた。
入場券を求める市民が全ての窓口に長蛇の列を作ったという事もあり、試合開始時間は当初の予定よりも二時間遅れるという事になったのだが、ゆまと愛華のトークショウをその間も行うという事になって誰もが不満を抱くともなく受け入れてくれるのであった。




