第四十五話 敗北を知る
強くてニューゲームを初めて選択してから今まで数千回数万回と繰り返していた。ある程度苦戦することや気分的に負けを認めても良いのではないかと思ったことは何度かあったのに完全な敗北は今回が初めてだった。
色々な敗北条件を出されて負けてしまう事は過去にあったことも事実ではあるが、ここまでぐうの音も出ない完全な敗北というのは生まれて初めての経験だったと、まー君は後に語る。
「そんなにじっくり見なくてもわかるんじゃないの?」
「それはそうなんだけど、私に見えないものがお兄ちゃんに見えたら困るなって思って確認はしてるよね。まあ、お尻の穴の近くにもホクロが無いように見えるんだけど、お兄ちゃんも確かめてみるよね?」
当然のように確かめろと言われているまー君は急に紳士らしさを振りかざしてしまった。幼女のお尻を見るのはまだギリギリ許されるかもしれないと思っていたけれど、さすがにお尻のお肉を開いて穴まで見てしまうというのは許されざる行為なのではないかと思えてしまったからだ。
今更どう取り繕ったところでまー君の評価が変わることはないが、ゆかの言葉を素直に信じて負けを認めるという事で多少は評価の下落を抑えられるのではないかという打算もあったのだ。
その結果として、まー君の評価が地に落ちるだけで済んだという。
「いや、さすがにそこは確認しないでゆかちゃんの言葉を信じるよ。俺がそこまで見るのはさ、ちょっと世間的にもどうかなって思うところがあるからね」
「別にそこまで気にすることでもないと思うよ。ゆいちゃんは少し恥ずかしいって思ってるみたいだけど、別に見られて減るようなものでもないし変なものがついてるってわけでもないからね。お尻を見せる前にちゃんと残ってないか確認してたから」
「ちょっとお姉ちゃん。余計なことは言わなくていいって言ってるでしょ。そう言うこと言うと、お姉ちゃんの恥ずかしい秘密もバラしちゃうよ」
「別に私には恥ずかしい秘密なんて無いんだけど。何の話をするつもりなのかな?」
「お酒を飲むと凄く甘えん坊になる事とか、催眠術に簡単に引っかかって大変なことになったりするとか、年下の子供にお菓子を貰って喜んでたとか」
「それは恥ずかしいことでもなんでもないでしょ。お酒を飲んで甘えん坊になるってのはそれだけ気を許しているって証拠になるし、そこまで酔えるのはゆいちゃんが守ってくれるって信頼感があるからの話だよ。それと、催眠術に簡単にかかっちゃうってのも私がそれだけ素直にゆいちゃんの事を信用しているからってことの裏返しじゃないかな。その証拠に、その辺にいた高名な催眠術師の催眠術には全くかからなかったからね。魔法も技術も何も効かなかったってことで、ゆいちゃんの催眠術が世界最高評価になった瞬間だったよね」
「お菓子は? お菓子はどうなの?」
「それは、別にいいでしょ。お菓子はみんな好きなんだし、恥ずかしいって事でもないじゃない」
何かを感じさせるやり取りではあるのだけれど、ちゃんと服を着てパンツが見えているゆかとちゃんと服を着てお尻丸出しのゆいだとどっちが責めているのか見た目だけではわかりづらい。
お尻丸出しなのに強気なゆいとパンツ丸出しでソレを受け流すているゆか。色々と新しい情報を得ることは出来ているのに、その一つ一つがそこまで重要でもなく、まー君にとって何一つとして影響がなさそうだという事は理解出来た。
「そんなわけで、お兄ちゃんの負けが確定したわけだけど、他の二つも確かめておくかな?」
「そうだね。一応確かめておこうか。その方が今後のためにもなると思うし」
あらためて言わせてもらうことになるが、まー君は二人の乳首が見たいというわけではない。右と左の乳首の大きさを比べるという問題が出されてしまったのだから仕方ないのだ。
おそらく、零楼館乳首郎がこの場にいると仮定すると、彼もまー君と同じように確認したいと言い出すはずだ。零楼館乳首郎が自分の乳首だけではなく他人の乳首にも興味を持っているのかは知らないけれど、きっと乳首に関わる事なら何でも試したいと言ってくれると信じている。
「別にいいんだけど。これは私から見せることにするよ。ちょっとわかりにくいかもしれないけれど、見てわかる通りこの体はまだ成長期にもなってないんだよね。あと何年経てば成長期になるか見当もつかないってことで、しばらくはこの体のままだと思うんだ。ってことで、私もゆいちゃんも思春期前で成長してないってことになるの。つまり、右も左も小さいままでどっちが大きいとかないんだ」
「ごめんね。お兄ちゃんは私とお姉ちゃんの事を色々と妄想していたかもしれないけど、そういう事だから勘弁してね。体はまだ子供なの」
「う、うん。そりゃそうだよね。まあ、二敗したってことで勘弁してよ」
「後、もう一つの答えなんだけど」
さすがにこれだけは自信があった。
お尻にホクロがあるのか、乳首の左右差があるのか、そんな問題はハッキリ言って運の要素が強すぎる。
でも、自分に頭を撫でられて嫌がるような女の子がいるとは思っていない。これは、完全に自惚れととられてしまうのだが、まー君はそう確信していた。
「ごめんね。私たちって、髪型にこだわりがあるんだ」
「だから、頭を撫でられても嬉しいって気持ちよりも、殺意が芽生えちゃうんだよね」
頭を撫でてあげようと伸ばしていた手を引っ込めたまー君は仕方ないといった表情で、全てにおいて不正解だったという事実を受け入れることにした。
ここまで二択をすべて外すとなると、逆にすがすがしい気持ちになるものだとまー君は考えていた。
自分の部屋がどうなっているかなんて、考えないことにしていた。




