第四十三話 お尻を開いてもらいたいけれど
お尻を見せてもらえばすべてが解決すると信じていた。
お尻さえ見せてもらえたのならば、すべて上手くいくと思っていた。
だが、そのために必要な一言を伝えることが出来ない。
それ以外の事であれば伝えることが出来るのに、お尻を見せてほしいという一言だけが言えないでいた。
ひょっとしたら、その一言を言ったことで何もかもが終わってしまうという事を恐れているのかもしれないが、そんな事はないとまー君自身は思っていた。
「ねえ、この体制も結構辛いんだけど、そろそろ終わりにしてもいいかな?」
「そう言わないで、もう少しだけ我慢してもらってもいいかな?」
「少しだけだったら平気だけど、このまま何もしないで待ってるだけってのは嫌なんだけど。お姉ちゃんも退屈そうにしているし、お兄ちゃんはこのままでいいと思ってるのかな?」
「そう言うわけじゃないんだけど、ホクロがあるか確認させてもらえたら嬉しいな」
「別に確認してもらうのは構わないんだけど、何も言ってくれないんだったらこのままなんだよ。お兄ちゃんが何か言ってくれたなら、ゆいはそれに従うつもりではあるんだけどね。お兄ちゃんは何を望んでいるのかな?」
(パンツを脱いでお尻を見せてほしい)
その一言がどうしても言えない。伝えることが出来たのならば、ゆいちゃんは喜んでパンツを脱いでお尻を見せてくれるのだろう。
それはわかってはいるのだけれど、なぜかまー君はその一言だけが言えず黙ってしまっていた。
「もう、ゆいちゃんは意地悪しすぎだよ。それと、お兄ちゃんは勇気が無さすぎる。世界で一番強い再挑戦者のくせに弱すぎるよ。そんな精神力でこの世界の法律を変えることが出来るとでも思っているのかな。そんな弱きなお兄ちゃんについてくる人なんていないと思うよ。ほら、何をしてほしいかゆいちゃんに伝えてよ」
急に早口でまくし立てたゆかの迫力に気圧されたまー君は先ほどよりもより言えなくなってしまっていたのだが、そんな事をお構いなしにと言った感じでゆかはさらに圧力をかけてまー君を責め立てる。
その迫力は今までまー君が戦ってきたどの生物よりも迫力があり、どの生命体よりも熱量のある言葉となって突き刺さっていた。
結果として、まー君の気持ちは揺れに揺れてしまい、躊躇することなく伝えたい言葉をハッキリとまっすぐに向けることが出来た。
「パンツを脱いでお尻を見せてほしい。お尻にホクロがあるのか確認させてもらいたい」
「はい、どうぞ。パンツは自分で脱いであげるけど、ホクロがあるかどうかはお兄ちゃんが確認してね」
四つん這いから上体を起こしたゆいは膝立ちの状態でまー君にお尻を向けていた。
自分の背後にいるまー君を確認するかのようにゆいが一瞬だけ視線を合わせると、まー君の顔を見たゆいは照れ臭そうにして顔を正面に戻す。そのままゆっくり両手を自分の腰にあってて下へ下へと少しずつ動かしていった。
ゆいの小指がパンツの中へと入り、そのまま手を下に動かすことによって少しずつお尻が見えてきていた。ゆいの小指がパンツとお尻の間に入って薬指と中指と人差し指はパンツを押さえており、残されている親指はパンツと腰の間に入るか入らないか迷うような動きをしつつもパンツが脱げすぎないようにブレーキをかけているようにも見えていた。
少しずつ見えてきたゆいのお尻にはパンツの跡がはっきりと残って入るのだが、今のところ見えている範囲にホクロはなかった。
そんなにすぐにホクロを発見することが出来るとは思っていなかったけれど、どのあたりにあるのか少しだけ予想をしてみようと一人妄想にふけっているのだが、まー君の視線はしっかりとゆいのお尻をとらえていた。獲物を見つけた獣のような、狩りをしているハンターのような、とても鋭い視線はまっすぐにゆいのプリンとしたお尻を真正面に見据えているのである。
「真剣なのはわかるけど、そこまでまっすぐに見てるのは恥ずかしいものがあるね」
「そうは言うけど、ゆかちゃんのお尻もじっくり見ることになるかもしれないよ」
「うーん、それは大丈夫かな。お兄ちゃんにそこまで真剣に見られるのは恥ずかしいもん」
「そうは言っても、ホクロを見つけないと俺の負けになっちゃうからね」
「勝ち負けで言うとそうなるかもね。でも、私のお尻を見るって事にはならないんじゃないかな」
「そんなことはないさ」
そう言いながらも、ゆかの言葉がまー君の中で何度も繰り返された。大丈夫かなという言葉の中に、自分のお尻は見せることがないという意味が含まれているようにしか思えない。
まさか、ゆいのお尻にはホクロがないとでも言うのだろうか?
もしそうだったとしたら、まー君は何も出来ずに敗北してしまうという事になってしまう。
問題に対して全てイエスと答えてしまったまー君だが、一つ目の確認で敗北してしまうなんてことが許されるのだろうか?
いや、許されるはずがない。
だが、パンツをゆっくりとおろしているゆいのお尻がほぼ全て見えているのにもかかわらず、そこにはホクロらしきものは見えていなかった。
もしかしたら、お尻のお肉で挟まれているあの中心部にホクロがあるのかもしれないと思ったまー君であったけれど、さすがにそこを見たいとは言い出せなかった。
このままではゆかのお尻を確認することもなく負けてしまうという事になるのだが、最後に確認したいという事を伝える勇気は最後まで出てきそうになかった。
負けてしまうという未来はほぼ確定している状況ではあるが、逆転のためにお尻のお肉を開いて見せてもらうにはどうすればいいのか。
まー君は潔く敗北を認めようと思い始めていた。




