第四十話 解けない結び目
簡単に解けると思っていたパンツの紐なのに、いくら引っ張ってみても解けることもなく結び目も固まったまま動く気配はなかった。
リボン結びで結び目も一つしかないので解けないはずはないのに、どう頑張っても解くことが出来ずに焦りだけが募っていった。
「あれれ、お兄ちゃんはお姉ちゃんのパンツを脱がしたくないのかな? 簡単に解けるはずのリボン結びなのに、どうして時間をかけちゃってるのかな?」
一旦、口を離して結び目を確認して見ているのだが、どう見てもおかしなところは見当たらない。自分がやった時と似たような結び目になっているし、解けないように二回結んだ時とは明らかに違う結び目になっている。
紐を引っ張れば簡単に解けるはずの結び方なのに、どうしてこうも固く結ばれているのだろう。
もう一本の紐を引っ張ってみても解けることはなく、どうすればいいのかわからなくなっていた。
「あの、私のお尻を見たくないってことでいいのかな?」
「そう言うわけじゃないんだけど、どうしても結び目が解けないんだよ。このひもを引っ張るだけでいいんだよね?」
「それで大丈夫だと思う。特別な結び方とかしてないし、時々だけどズボンを脱いだ時に結び目が解けちゃってる時もあるんだよね。だから、固く結んでてもすぐに解けちゃうときがあるくらいだよ。お兄ちゃんは力がないってこともないだろうし、どうしてなんだろう?」
「結び目を見てもおかしなところはないと思うし、なんで解けないんだろう?」
「きっと、お兄ちゃんにやましい考えがあるからじゃないかな。お姉ちゃんのパンツを脱がせるにふさわしい器量がないとかかな?」
パンツを脱がせるのにふさわしい器量とはなんぞや。まー君は大いに混乱したのだが、ゆいがあまりにも真面目にそう言うのでそうなのかもしれないと思い始めてしまった。
もちろん、それはゆいの冗談であって、どうしても解けない理由は別にある。
それについてはゆかは何も知らないのでまー君がゆかのことを怪しんで観察したところで理由を見つけることなどできない。何も知らないのだからゆかを見たところで何も解決などしないのだ。
となると、ゆいのことを観察すれば正解にたどり着くという事になるのだが、今のまー君は一転に集中してしまっていて物事を多角的に見るという事が出来なくなっていた。ゆかからちょっとだけ視線を外してゆいを見るとおかしなことに気付くはずなのだが、それに気付くことが出来ないくらいに盲目になってしまっていた。
「お兄ちゃんがお姉ちゃんのパンツを脱がせたくないんだったら私のを先に脱がしてもいいんだけど、お兄ちゃんはきっとそれを選ばないんだよね。だって、自分の信念を曲げたくないって思ってるんだろうし、お兄ちゃんは今までもこれからも自分の考えにまっすぐに向き合って妥協なんてしないで生きていくんだろうね。それはそれで格好いい生き方だとは思うんだけど、たまには違った生き方をしてもいいんじゃないかな?」
「いや、別に俺はそんな大それた考えは持ってないよ。そこまでこだわってるってこともないし、先にゆいちゃんから脱がせたって全然問題ないとは思っているさ。でも、順番を変えたところでゆかちゃんのパンツの紐が解けるとは思えないし、そんな手間をかける意味も分からないんだよね。……はっ!!」
何かに気付いたまー君は思わずゆいの顔を見つめてしまった。
その視線をまっすぐに受け目を逸らすこともないゆいはにっこりと微笑むと、その微笑みを見たまー君は天井に向かって大きくため息をついた
「なんだよ、そういう事かよ。そういう事だってなんで気付かなかったんだろう。そりゃそうだよな。ずっと不自然だとは思ってたんだよ。もう、答えは言わなくてもいいから。いや、答えを言われたら今以上にへこんじゃうわ」
「まあまあ、そう言わずに聞いてよ。お姉ちゃんも答えを知りたそうにしているし、お兄ちゃんだけスッキリするのは良くないと思うよ。ね、お姉ちゃんも気になるよね?」
「気にはなるけど、ゆいちゃんは何か知っているの?」
「もちろん、私は知っているよ」
何となく答えにたどり着いたまー君とは対照的に、何もわかっていないゆかは物凄く不安そうにしていた。
あまりにも不安になっていたためか、ゆかはまー君の手をぎゅっと握ったままゆいから視線を外すことはなかった。そんなゆかを安心させるために、まー君はゆかに握られていない左手で頭を小気味よいリズムでポンポンと軽く叩くと少しだけ安心したゆかはまー君の肩に頭を乗せていた。視線は相変わらずゆいから外すことはないのだが、先ほどよりは落ち着いているように見える。
「ズルいな。お姉ちゃんばっかり特別扱いされて、本当にズルいよ。でも、そうなるように仕向けたのは私なんだから仕方ないよね。だって、お姉ちゃんは可愛い女の子なんだから、お兄ちゃんに特別扱いされたって仕方ないもんね」
「そんなことないよ。ゆいちゃんだって可愛いよ」
「ありがとうね。でも、可愛いだけじゃ認めてもらえないってこともあるんだって。無意識のうちかもしれないけど、お兄ちゃんはそれを何となく感じてたんじゃないかな?」




