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八月二二日⑤

 午後九時。三人がカタルシスに集まった。

「さて、今日何が起きたのか教えてもらえないか」最後にやってきた桐生が、待ちきれないように尋ねた。「ちなみにオレは、今朝本橋からもらった例の女性の運転免許証の番号を検索した。その結果、本人のものに間違いないことが分かった。それを本橋に連絡した。それでオレとしては、話は終わっていたのに、午後になって『本人じゃないってことが分かった』って電話をもらったんだ」

本橋が口を開いた。

「実は山形の同期が昨日、陣内範子の前住所を当たってくれたんだ。そいつから午後、その住所に本人が住んでいることを確認したという連絡があったんだ。しかも免許証の写真とは別人のな」

「つまり免許証が偽造されていたってことか。番号までそっくりコピーされて」

桐生は、信じがたいといった表情をした。

「そう考えるしかないな」

「だとすると、相当周到な連中が動いているってことになるな。何らかの方法で本人の免許証番号を把握しなければならないからな。正直、そこまでの相手とは想定していなかった」

桐生は忌々しいといった仕草でタバコに火をつけた。本橋は続けた。

「死亡した陣内一雄、黒本組そして陣内範子と称する女性の接点は白岩しかいない。首謀者かどうかは分からないが、奴がキープレイヤーであることは間違いないだろう」

「確かにその考えは妥当だな」

「しかし、新たな問題が一つ。白岩が昨夜から行方をくらませた」

本橋はグラスを傾けた。

「何だって? 確か今日が保険金の支払日だろ? 偶然にしてはタイミングが良すぎる。支払日を知っていたのか?」

「先週末に自称陣内範子から問い合わせがあったから、私が支払予定日を教えたわ」

東原が眉間に皺を寄せ、苦々しい表情で答えた。

「それじゃあ、仮に今回の事件が詐欺事件だったとしても、白岩の行方が分からない、陣内範子もどきの居所も分からない、保険金は支払い済みってことか。明日にでも預金口座から引き出されたら、ほぼ手がかりなしってことかよ。手の打ちようがないな」

桐生は悔しそうにタバコを灰皿に押し付けた。

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