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八月八日⑫
「元請の大希望建設の本社の安全環境部の近藤と申します。この度はご迷惑をお掛けしてすみません」
「発生時刻、朝の六時三〇分って聞いてますが、随分早い時間ですね」
時任がネットで囲われた建設中の躯体の方を何気なく眺めながら尋ねると、
「ええ。ここの現場は近隣の了解をもらって夜間も施工しているんですわ」
と、近藤も時任の視線の先を追いながら答えた。
「警察は何時から来てます?」
「三十分位前からです」
「現場に案内してください」
「判りました」
Mビルは鉄筋コンクリート造一〇階建てだった。一般的に鉄筋コンクリート造の建物の建築工事は、コンクリートの芯となる鉄筋を床や柱の形状に併せて組む、その周りに液状のコンクリートを流しこむための型を木板で造る(型枠という)、コンクリートを流し込む、コンクリートが固まったら型枠を解体する、という手順を階ごとに繰り返して進められる。本橋らは近藤の先導で、まだコンクリートむき出しの階段を上った。最上階付近に行くと、型枠支保工と呼ばれる、コンクリートが固まるまでの間、型枠を支えるために立てられる鋼管が無数に並んでおり、通路は狭くなっていた。鋼管の間をかい潜るように階段を上ると、目下の最上階である八階に辿り着いた。




