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八月八日⑪
午前九時三〇分。本橋ら四人は官用車一台に乗り合い、Mビル新築現場に到着した。仮設の塀の一部に設けられた出入口の前にいた警備員が駆け寄ってきた。
「監督署です」と時任が言うと、警備員は「ご苦労さまです」と言って、出入口を開くために駆けて行った。
蛇腹式の出入口が開けられると、そこには狭い敷地内に警察の原付バイクが一台、バンが二台停まっていた。時任はハンドルを握る新人の鈴木に「ぶつけるなよ」と言った。その言葉に緊張を煽られた鈴木は、おそるおそるバンと原付バイクとの間に車を進めた。
無事車が停まると、時任が「オレが事情聞くから、本橋はカメラ、田仲さんは図面お願いします。鈴木は災害調査初めてなんで、田仲さんの補助で計測とか手伝って」と手際よく指示した。
その指示に従って、各自トランクからカメラなどを取り出していると、「安全衛生責任者」と書かれた腕章を巻いた元請会社の作業着を着た年配の男が近寄ってきた。
「監督署の方々ですか」
時任が
「そうです」
と答えると、その男はややわざとらしく深々とお辞儀した。
「元請の大希望建設の本社の安全環境部の近藤と申します。この度はご迷惑をお掛けしてすみません」




