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八月八日⑬
「あそこです」
と、近藤に言われなくても、警察官が群がっているので、どこが現場かすぐに分かった。警察官は十人はいるだろうか。どの現場に行っても警察は大挙としてやってくる。その一方で監督署は多くて四人、少ないと二人で現場に入る。
足元は、まだコンクリート打設前なので、格子状に組まれた鉄筋しかない。通常は、鉄筋が交差しているところに足を乗せて移動するが、そこには足場板が並べられていた。
「警察さんからの要望で、通路にするために足場板を敷きました。慣れていないと踏み外して危ないので」振り返って説明する近藤に、時任は了解したという風に頷いた。
警察官が溜まっているところまで行くと、時任が「労働基準監督署です」と大声で言った。現場代理人と思しき人物から話を聞いていた背広姿の刑事が振り向き、近づいてきた。
「杉並署刑事一課の桐生です」
その刑事は、本橋と同い年位だった。オールバックにした額には汗が吹き出していたが、暑さを感じさせない涼しい表情で時任に挨拶した。
「杉並監督署の時任です。よろしく」
「今まで聞いた状況を説明します。ちょっと労基の人と打ち合わせするんで、向こうに行っててもらえますか」
桐生は近くで聞き耳を立てようとしていた近藤が遠ざけてから、手帳を開いた。




