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八月二七日④
信用金庫を出ると二人は車に乗り込んだ。桐生はイグニッションを回すと、車を発進させた。
「今日中に説得して、本人をここに連れてこれるかな」
「出来る限りのことをしよう」
本橋はスマートフォンを取り出し、南陽労働基準監督署に電話をかけた。
「杉並署の本橋です。御子柴課長お願いします」
電話口の向こうで「御子柴課長、電話です」という声が聞こえた。
「御子柴です」
「本橋だ。実は今、鶴岡市に来ている」
「なんだって?」
当然ながら御子柴は驚いた様子だった。
「毎度で悪いが、頼みごとがあるんだ」
「おお、分かった。何をすればいい?」
「今日、偽の陣内範子が労災保険金を引き出したんだ。その出金先を突き止めたくて刑事と来ているんだが、本人を連れて行かないと教えてもらえないんだ。しかし、これから陣内範子さんの家まで行く時間がない。何とか本人を途中まで連れ出してきてくれないか?」
「随分、無理難題だな」御子柴は苦笑した。「しかし、分かった。やってみるよ」
「どこで待っていればいい?」
「そうだな。月山湖で落ち合おう。そこから一時間位のところだ」
「分かった。恩に切る」
本橋は電話を切った。




