第十一話 妹達の会話
「はあはあ……」
俺は慌てて俺に話掛ける秋山を吹っ飛ばして、香織里達がいる地域に走っていた。
あれから何度か確認していたが、二人とも、場所が右往左往しているだけで、大して移動していない。
「くそ……あいつ等自主性があんまりなさ過ぎだろ……!」
思わず、毒づいてしまったが、ふと俺は思ってしまう。
何故、自分はこんな事をしているのだろうか?
前にも言ったが、俺はあの二人を妹としてあまり思いたく無い。
スペック面ではかなり――極端さが出るが――の高さを誇るが、性格面に対して、思いっきり難を抱える双子だ。胸張って友達に紹介できるかと言うと、ちょっと迷う。
そもそも、自分の身を危険に晒させて、妹達を探しに行く必要性があるのか? そもそも、血の繋がりが無いのだからって、それを言っちゃあおしまいだが。
「けどまあ……」
一端俺は、走るのをやめ、足を休ませると、天を仰いだ。
確かに、俺が行って何かができるとは思えない。
英雄武装なんて大層なものを持っているらしいが、それでも俺はどこにでもいる普通の高校生だ。
まあ、運動神経は結構良い線行っていると思うけど、マリスにはそんなものは通じない。
それに、先程行った橘と日向先輩が何とかしてくれるだろう。専門家なんだし。
けど、それでも、何もせず後悔するよりは、何かをして後悔した方がずっとずっと、マシだ。
あいつ等だって、妹とは認めたくは無い。だが、だからって何もしないとはそれは関係無い!
俺は再び、走り出した。守るものの為に。
「はあ……はあ」
「香織里……大丈夫?」
香織里のおんぶされている志織里が心配そうに自分の双子の妹に問いかけた。
「へっ、これくらい問題無いよ! 姉ちゃんは安心してあたしにおんぶされていな!」
そう言うが、香織里の額には、汗が大量に噴き出ており、息もかなり荒い。
少し時間は遡る。
二人は学校側の関係で、授業は午前で終わり、授業が終わってHRが終わったら直ぐに学校を後にした。
普通の女子中学生ならば、友達と一緒にご飯を食べたりしながら空いた午後の時間を楽しむんだろうが、生憎の所、香織里と志織里にはあまり友達がいない。
また、自分達が敬愛する兄の真司がお昼に弁当を作り置いてあるので、それを早く食べるために二人は家への帰路に着いた。
しばらく歩いたとき、辺りに警報が鳴り響いた。
以前も何度か聞いた事があったから、二人とも直ぐにこの警報が何か分かった。
即ちマリスの出現だ。
慌てて志織里が携帯を使って近くにあるシェルターを探してみたところ、ちょうど、同じ距離に左右にシェルターがあり、二人ともどちらに行こうか迷ってしまった。
そして、数分して二人が、行く場所を決めて走り出したとき、志織里が足をもつれてしまい挫いてしまった。
香織里が足を見ると、骨こそ折れてはいなかったが、しばらく歩くことは無理だと判断し、香織里が志織里を背負ったのだ。
そして冒頭に戻る。
「くそ! 何でこんな時にマリスが出るんだよ! 折角兄ちゃんの弁当楽しみにしながら帰ってきたところなのに!」
香織里は、未だ一回見たことが無いマリスに対して毒づく。
最も、志織里もその意見には百パーセント同感なのだが……。
そこで、ふと志織里は以前も誰かにこうしておぶられていたのを思い出した。唯、その時は香織里では無く、義兄の真司だったが……。
あれはまだ志織里達が小学生で真司が中学生の時だった。
当時、大けがをして奇跡の生還を果たした真司は酷く荒れており、毎晩遅く帰ってきており、帰るたびに殴られた痕などが絶えなかった。
当然、志織里も香織里も心配したが、真司は二人とも完全に距離を置いてしまい、仕舞いには一日顔も合わせないなんて事もあった。
親に相談しても、「放っておけ」と言われ、何にも出来ない状態がしばらく続いていた。
そんなある日、二人は高校生の不良達に拉致された。
不良達は以前真司に喧嘩をふっかけて逆に返り討ちにあったのだ(不良達がそれをバカ正直に話した時、二人とも内心真司をかっこいいと思ったが)。
そして、不良達は報復として志織里と香織里を拉致したのだ。
最も、どこからか聞いた情報を元に真司が殴り込みを掛けて、不良達を全治二週間の怪我に追い込んだが。
そして、その時を境に真司は徐々にだが志織里と香織里が知る昔の兄に戻り始めた。
それ以来義兄は本当に優しく、格好良く、強く、頼りがいがある義兄になっていった。
「おーい。姉ちゃん?」
「はっ!?」
志織里がトリップした状況から戻ると、香織里が不機嫌そうに呟く。
「なあ、姉ちゃん。さっきからあたしの肩に姉ちゃんの涎が垂れているんだ。正直もの凄く気持ち悪い」
香織里の本気で気持ち悪がっている様子に志織里もぼんやりしているわけでは無いと判断した。
「ごっ、ごめんなさい。ちょっと考え事をしていて」
「考え事? 兄ちゃんの格好いい所なんて思い出していたんだろう」
普通にばれた。志織里はそう思った。
双子だからだろうか、お互いに考えていることは直ぐに分かる。それ故、志織里の考えを香織里は分かったのだろう。
「でもまあ、兄ちゃん高校になってからもっと格好良くなったよな~」
「そうよね~。はあ、お兄ちゃん何で私達になびかないんだろう?」
「う~ん。何か添い寝だけじゃあんまし足りないのかな? もっとこう、インパクトがあるヤツを!」
「インパクトって?」
「例えば――寝間着の浴衣をはだけさせるとか?」
「浴衣を……? でも、私も昔少しだけやったけど、あんまり効果なかったわよ?」
「はあ~。姉ちゃん、莫迦だな~」
「……何ですって?」
志織里は若干殺気を出し始めた。志織里はこう見えても全国模試トップクラスに入るほどの頭脳の持ち主だ。義兄の真司に莫迦って言われるならまだしも、運動莫迦である香織里に言われるのは到底我慢ならない。
「はあ……姉ちゃん。姉ちゃんがやったのは、ほんの少しだろ? それこそ、裾が乱れているだけとかそんな感じだろ?」
「うっ……確かに」
「だろ? だからー、それこそ、もっと大胆に行くんだよ!」
「だっ大胆……?」
「その通り! 簡単に言ってしまえば、もっと浴衣をはだけるんだよ。……それこそ半裸になるぐらいに」
「なっ!」
ニヤリと黒い笑みを浮かべながら言う香織里。そんな香織里の上で志織里は思わず赤面した。
結構真司に迫っている志織里だがその実、かなり初心な方だ。修学旅行の時なども、志織里はどうしてもこの手の話についていけなかった程だ。逆にその方面の話になると、実際、香織里の方が耐性はあ
る。
「けけけけけっけけけど! そそそそそそそれは、その……!」
「……姉ちゃんってホントこの話に対しては初心だよね」
思いっきりどもっている姉に対して香織里は妙に生暖かい視線を送った。
「ちょっと、香織里何よ! 別にわわわわわわわ私は……!」
「うん……」
「何よその”分かってますよ”って的な目は……!」
何だか微笑ましい状況になってきた時、
「……何やってんだお前等」




