第十二話 自分のやるべき事
今回は待たせた割にもの凄く短いです。すんません
「あっ! 兄ちゃん!?」
「どうしてお兄ちゃんが此処に?」
驚くように言う俺の妹達。
だが、志織里に香織里よ。兄のとしての立場から言わせてもらうぞ?
「お前ら……何やってんだ?」
香織里が志織里を何故かおんぶして、そして何故か言い争いをしている構図だ。
こいつらマリスが近くに居るって事気づいていないのか?
「何って……兄ちゃんを如何に誘惑するかって話してんだよ?」
「お前ら本当に何やってんの!?」
この緊急時に俺の義妹達は本当にアホな事やってんな! 何で俺はこんな奴らのために汗水かいてここまで走ってきたんだ。何だか意味が分からなくなってきた。
……けどまあ、
「無事で良かった」
そう言って、俺は二人の頭をクシャクシャと撫でた。
「ちょ、兄ちゃん。髪乱れる」
「私達結構髪の毛整えるのに苦労しているのよ」
「悪い悪い」
口ではそう言いつつも二人とも満更では無いって顔をしている。
「……って、こんな事している場合じゃない。早く行くぞ……と、その前に志織里どうしたんだ?」
「実はさっき転んじゃって足を挫いたんだ」
そうか……まずいな。何か嫌な気配――恐らくマリスだろう。徐々に、だが確実に近づいている。
「変わろう。志織里、こっちおいで」
「分かった」
「頼むぜ兄ちゃん」
そう言って、俺は香織里から志織里をおんぶした。
……ん?
「なあ、志織里」
「何、お兄ちゃん」
「お前……少し重くなったか?」
次の瞬間、俺は頭を志織里に思いっきりひっぱたたかれて、香織里、思いっきり足を踏みつけられた。
「いっ……!?」
「兄ちゃん……レディーにそんな事言うなんて最低だぜ?」
「レ、レディーだと? はっ、お前がレディーなら、他の女性はもっと麗しき女性……痛い痛い! ちょ、お前等やめろ! し、志織里! お前もやめろ!」
さらに香織里は足をぐいぐいっと踏みつけ、志織里が俺の頬を思いっきりつねり始めた。
少しして、二人はようやく解放してくれたが、痛みが全然引いてくれない。
「全く……お兄ちゃんはそういう所で無神経だよね」
「……面目ありません」
とにかく、今は謝っておこう。別に心から謝る気は無いけど。
「取り敢えず、早く行こう。いつマリスが来るか分からない」
「うん」
「分かった」
そして、俺は志織里を背負って香織里を連れて歩き始めた。
「……」
歩いていると、志織里が無言で俺の首に回していた腕をぎゅっ、と閉めてきた。
「どうした志織里? 足が痛むのか?」
「ううん……お兄ちゃんにおんぶして貰うなんて随分久しぶりだなと思って……」
……ああ、そう言えば、あの時に一回だけやったな。
「確かに……そうだな」
「……ねえ、お兄ちゃん」
「何だ?」
「お兄ちゃんは何を隠しているの?」
「……何のことだ?」
まさか、こいつ気がついているのか?
「……あのね、お兄ちゃ――」
「おーい! 兄ちゃん! 姉ちゃん! 此処まだ空いている!」
はっ、と我に返ると、香織里が少し離れた所でぶんぶんと手を振っていた。
「分かった。直ぐ行く!……志織里もう少しの辛抱だ」
「……まあいいよ」
何か含みを孕んだ言い方に俺は若干ドキリ、としたが、あまり考えず香織里の方に歩いて行った。
「此処まだ空いているよ」
そう言う香織里が指さすのはシェルターの一つでまだ閉まっていなかった。
「良し、此処に……」
ゾクリ。
入ろう。そう言うと思った矢先、俺の背筋、何か嫌な物が這いずり寄った。
「兄ちゃん? どうしたんだよ。早く入ろうぜ」
「お兄ちゃん……?」
二人が何かを言っているが、言葉は俺の耳に入ってこなかった。
俺は恐る恐る後ろを振り向くと、数メートル先のビルの物陰に黒い何かが蠢いていた。
「……二人とも、先入っていろ」
「えっ?」
「お兄ちゃんは……?」
「お兄ちゃんはちょっと大事な用を思い出した。だから別のシェルターに避難する」
俺の言葉に二人は驚いた顔をした。
「駄目だよ兄ちゃん!」
「駄目だよお兄ちゃん!」
……同時に言い切った…さすがは双子だな。
「頼むよ二人とも……」
「駄目だって! 大体用事って何だよ! そんなん後でやれよ!」
「そうよ! 良いから早く一緒にシェルターに入ろう!」
確かに、俺がするべき事じゃ無い。先程も言ったように橘達が何とかしてくれるだろう。
だが、それでも、俺にとっては、
「……悪い必要な事なんだ!」
「ちょ!?」
「兄ちゃん!?」
やらないといけないんだ。
俺は一瞬の隙を突いて、二人をシェルターに押し込んだ。途端にシェルターはあっさりと無情とも思えるほど簡単に閉まった。
この出来事に俺は何故か、あの人として若干破綻しているあの人が頭の中をよぎった。
「……まさかな……」
俺は近くにある監視カメラを見上げて呟いた。
「おい……彼、こっちを見ているぞ」
「はっはっはっ、意外と勘が鋭いのかもね」
神代機関の司令室、弥彦と謙吾が相変わらずな会話をしていた。
「全く、彼の行動を全て監視しろとは、職権乱用だな完璧な」
弥彦の言葉通り、司令官である謙吾は命令で、町中にある監視カメラを使い学校から出た真司の行動を全てマークしろと言ったのだ。
「しっかし、彼もすごいね~まさか妹とは言え、義理の家族の為に態々安全地域から抜け出すなんて……」
謙吾は心底おもしろそうにこちらを見つめている真司を見て呟いた。
「さてさて、聖剣は何を見せてくれるかな……彼女を越えるかどうか……」
「さて……」
頭をかきながら前を見ると、其処には無数のマリス達がうじゃうじゃと群れていた。
そして次の瞬間、空があの時のようにオーロラ色になった。
「……絶対に見られているな」
何か癪だが、良いだろう。あんたの手のひらで少しだけ踊ってやるよ
「……発動」
そう呟くと同時に、俺の体の中から力が溢れ始め、やがて俺の体を金色に包まれた。




