九十九話 撮影④
「お待たせ」
「はーい!」
椅子に座って足をぷらぷらさせていた小鳥遊さんに服を渡す。
「じゃあ、ちょっと待っててねー!」
「あ、小鳥遊さん、マフラーは巻かないで首からかけるだけって感じで」
「りょーかいっ!」
ビシッと敬礼した小鳥遊さんはまださっきの服のままで、服の透けている部分が視界に入ってきて気になってしまう。
「……この先、見たい?」
「え?い、いや」
「もしそうなら二人の時に教えてねっ」
意地悪く笑って、小鳥遊さんは更衣室へ向かった。
少しして、彼女が戻ってくると。
「「「うおぉぉぉ…………」」」
呻き声に近い歓声がスタジオ内に響いた。
「奈夢ちゃん、クールでかっこいい系も似合うんだね……知らなかったよ」
「えへへ、りょーくんは私のこと知ってますから。ねっ!」
「あ……う、うん……?」
別にそうでもないけど、とはとても言える雰囲気じゃなかった。だって、見てみてよ。周りの人達、みんな僕に視線を注いでるよ。
「じゃ、撮ってみようか」
「はーい!」
その雰囲気に似合わず、小鳥遊さんは元気に白ホリへ。
「一ノ瀬君、どんな格好がいいとかあるかな?」
どんな格好が、か……
さっき服を選んだ時に思い浮かべた小鳥遊さんを思い出し、それを伝える。
「えっと、じゃあ、小鳥遊さん」
「うん、手取り足取り腰取り教えてね!」
「手と足で十分だね……左斜め、そう、カメラに対して右腕が割と写る感じで……」
カメラからは25度ほど左を向いてもらい、
「ちょっと俯いて、ほんの少しだけ猫背で」
少し視線が鋭くなるように、
「左足はつまさきだけ地面につけて、ポケットに手を軽く入れて……うん、そんな感じで」
手足の位置を整える。
「おお、いい感じだ」
カメラマンを唸らせることができた。あれ?僕から向いてんじゃない?
「ちょっと、ほーんのちょっとだけにらんで」
そう言われた小鳥遊さんは、少しだけ目を細める。
「あー、いいねいいね!」
シャッターが何度も切られらようになり、僕はさっきと同じ場所、カメラの後ろへ戻る。すると、自動的に僕の方を見ることになった小鳥遊さんがにへら、と破顔してしまった。
「あーらら、いい笑顔……ポーズ変えてみようか、顔上げてー」
「あぅ、ごめんなさい……えへへ」
しゅんとしたかと思いきや再び笑う小鳥遊さんは、何というかとても映えていた。
「おー!なかなかにいいね!」
笑ってもカッコよさは崩れず、それどころかどこか愛らしさも増してより良いモノが撮れそうだ。まあ、カメラなんて持ったことないからわかんないけどね。
そしてしばらくして撮影は終了した。
「一ノ瀬君、今日はありがとうございました」
「こちらこそありがとうございました」
校門まで送ってもらい、部屋へ向かう。時刻は1時ごろ。お昼ご飯どうしよう?
「こちら、近くのレストランの優待券です。奈夢とどうぞ」
「あ、どうも」
「では」
僕に二枚のチケットを渡してくれた池田さんは、車に乗って去っていった。
「どうせなら乗せていってくれれば良かったのにね……」
小鳥遊さんがポツリと呟く。
「…………確かに」
なんとも言い難い気持ちを携え、二人でお昼を済ませて僕の一日は終了した。




