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九十六話 撮影①

「お疲れ様でしたー!」


 ガラス張りの部屋を出ると、スタッフさんたちが拍手してくれた。どうやら、うまくいったらしい。


「一ノ瀬君だっけ?レギュラーどう?」

「めちゃめちゃよかったよ!」


 たくさん褒めてもらえた。


「お疲れ様でした。では、この後少し休憩をしてから次のお仕事があるのでよろしくお願いしますね」


 池田さんはキビキビとした動きで、歩いて行った。


「じゃ、いこっか!」

「あ、うん」


 やっぱり小鳥遊さんに手を引かれて、休憩所へ。


「「お疲れ様でした!」」

「お疲れ様でした!」


 二人で挨拶をしてから、出る。

 休憩所へ入ると、そのまま自販機へ。


「りょーくん何か飲む?」

「いや、いいよ。ありがとう」

「そっか」


 小鳥遊さんは迷わずに水を選んだ。お茶は喉の潤いを無くす性質があるみたいなのを聞いたし、水が一番いいんだろう。


「ふぅ」


 僕らは並んでソファに腰掛ける。


「んく、んく……ふぅっ」


 両手でペットボトルを持つ小鳥遊さんが、なんだか可愛らしかった。




「じゃ、また後でね!」

「うん」


 次のお仕事はモデル、本業だ。スタジオに着くと、小鳥遊さんは着替えるために更衣室に向かった。


「一ノ瀬君、こちらへ」

「あ、はい」


 池田さんに手招きされ、別の部屋へ。そこには、さっきとは別のぽやぽやしたおじさんがいた。


「こんにちはぁ」

「こんにちは」

「ま、とりあえず座って」

「失礼します」


 僕が座ると、すっとファイルを手渡された。


「これは?」

「開いてみ?」


 言われた通りに開くと、沢山の小鳥遊さんの写真が貼られていた。


「…………これは?」

「あ、わからん?あんね、今までに撮った奈夢ちゃんの写真なんだけど」

「はあ」

「向こう、見てみ?」


 おじさんが指さした先には、もう一つの部屋が。そこのドアは開いていて、中からは沢山の服がその姿を覗かせていた。


「わかる?」

「全く」

「あちゃー」


 いや、なにが『あちゃー』なのかわかりませんが。


「まあ結論から言うと」


 最初からそうして?


「後で君に奈夢ちゃんのコーディネートをしてもらうよ」

「なぜそうなったんですかね」

「わかんね」


 わかんないんですね……


「そちらは私が」

「よろしくね、池田ちゃん」

「ちゃんづけすんなジジイ」

「ははは、ごめんよー」


 こわ…………


「えー、まあ、後で説明するので」

「すみません、説明になってないんですが」

「うるせえつべこべいわずやれや」

「すみません」

「とりあえず、今の奈夢のを見て、その後で選んでください。そっちの方がイメージしやすいと思うので」

「わかりました」


 わかりたくないけどね?

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