九十七話 撮影②
どうしようかと考えつつ部屋を移動し、スタッフさんたちが白ホリ(モデルさんの後ろにあるあの白いヤツ)の近くで話しているのを眺めていると、しばらくして着替えとメイクを終えた小鳥遊さんがやってきた。
「お待たせしましたー!」
「…………えっっっっっっ」
ど時代!
思わず、口にしそうになった。
「りょーくん!どお?どお?」
どー、どー。
袖と胸元が透けているクリーム色のトップスにベージュのトレンチスカート。今の小鳥遊さんの服装だ。いつものような活発さと女性としての色気が合わさっている。このコーディネートで街へ繰り出せば、すれ違う人がみんな振り向くだろう、それくらい似合っている。
彼女はその場でくるりと翻って見せた。
「あ、うん……いいと、思う」
「ほんと!?ありがと!えへへ」
満足したのか、小鳥遊さんは嬉しそうに笑うとカメラの前へ立った。
「じゃあ撮りまーす!」
「はぁーい!」
カメラのシャッターが切られるたびに、小鳥遊さんはポーズを変える。
「あーいいね!いい笑顔!そういえば、なんか最近より女の子っぽくなったけど、いいことでもあった?」
「はい!もうたっくさん!」
そんなやりとりをしながらも画になる彼女にとってモデルっていうのは天職なのかもしれない。
「たとえばー?」
「うーん……たくさんあるからなぁ……」
人差し指を顎に当てながら考える仕草も、カメラマンさんは逃さなかった。
「あっ、ちょっ!ダメですよ!それ、けして!けしてっ!」
「いやー今の良かったね!表紙に飾っちゃおう!」
「消してください!あっ、また撮りました!?」
「うん、いい顔だ!」
「…………セクハラ」
「消します」
「はい」
…………女性ってのは、怖いんだなぁ。りょうを。
「そうだ一ノ瀬君、もう少しむこうへずれていただけますか」
「? はい」
隣に立つ池田さんに言われて右へ数歩移動すると、ちょうど正面に小鳥遊さんがきた。
「ほら、手振って」
「え?」
「早くしろノロマ」
「すみません」
だから怖いんだって。
元から抗うつもりもないけど、言われた通りに小鳥遊さんに手を振る。
「‼︎」
それまでずっとカメラを見ていた小鳥遊さんがこっちを見て、笑みを浮かべながら絵を振り返してくれた。その笑顔は、とても眩しくて。
「おっ、いいねー!今までで一番いいよー!ちょい一ノ瀬君、もっと近寄って!君が必要だっ!」
「え?は、はい」
「おいでおいでー!」
カメラマンのぽやぽやおじさんと小鳥遊さんに手招きされ、歩いて行く。
「一ノ瀬君!君はもう毎回来るといい!ああ、近づくたびにいい笑顔になっていく!ほら、もっともっと!」
いや、もうすぐカメラの前に行っちゃうんですが?
「ほらほら奈夢ちゃん、もっと好きって気持ちを出しちゃって!」
「りょーくん、すきー!」
なんで僕はここで告白されてんだろう?
でも、そう言われるのは嫌じゃない––––嬉しかった。




