ラジオ③
「こちらは、私とりょーくんがイチャイチャしながらお話しするだけのコーナーです!」
ふざけるなぁ!
「というわけで、りょーくんの隣に移動しまーす!」
そう言った小鳥遊さんは僕の足をぐっと開き、そこに座った。
「あの、小鳥遊さん?隣って知ってます?」
「しってるよー?」
「なら隣に座ってもらってもいいですかね?」
「だめでーす!」
なんで?
「いや、その、密着されると暑いので困るんですが」
「…………お願い」
「うぐっ」
そんな、キラキラした目で見つめられると断れないんだよ!
「…………今回だけですよ」
「ありがと!」
ほーら、かわいい声で言うから、リスナーの皆さんが『foooo!』『よくやった』ってテンションあがっちゃってるよ。いいことなんだろうけどさ。
「ということでやっていきましょー!」
「で、なに話すんですか?」
「そだね、コメントから拾ってみよっか!」
高速で流れていくコメントから、いいのがないか探していく。
「お!これだね!『デートするならどんなことがしたいですか?』だって!」
それは引いちゃだめなやつだね!
「私、服選んでもらいたいなー!で、その服のままデートしたい!」
「ナ、ナルホド」
なんと返せと?
「あ、私りょーくんが選んでくれたのなら、どんな服でも着るよ?そ、その、ちょっとエッチなやつでも……」
「小鳥遊さん、炎上するのでやめましょう。主に僕が燃えるので!」
「んー、逆だと思うよ?」
「ははは、リスナーさんが『燃やす』んじゃなくて『萌える』って?だれがうまいこと言えと」
「りょーくん、合ってるけどそれ多分伝わってないと思うよ」
「いやこいつらならわかるね」
「いやいやそんなわけ…………あるじゃん」
『それわかるのはカップル』というコメントに対し、『じゃあ俺らカップルじゃん』というようなモノが多く寄せられている。やるねお前ら。
「なんで私よりみんなのことわかってるの……?」
「自分でもわかんないよね」
「で」
「ん?」
「私いい匂いする?」
「どこからきたのその疑問は」
「ねえ、するー?ほら、ちゃんと匂い嗅いで!」と、小鳥遊さんがぐいぐい身体を擦り付けてくる。
「ちょ、ほんとに、あの、色々まずいと思うから!各方面から怒られるから!」
「そんなこといいの!」
「よくねえよ!」
「…………もしかして、臭い?」
「いや、そんなことは」
これうんって言ったらどうなるんだろ。ちょっと気になる。
「なら嗅いでー!」
「ダメだって……」
流石にリスナー怒るだろと思って画面を見ると、これでも『もっといけなーちゃん!』とか『ヘタレ、手出せよ!あわよくば俺たちにも聞かせろ!』と言われた。おい最後のやつ覚えてろ?
「じゃあ、話を戻そっか」
身体は離さず、いやそれどころか手を僕の手に重ねて続けた。
「で、服を選んだあとは一緒に映画見たりアクセサリー選び合ったりして、お昼はおうちで一緒に作るの」
それからそれから、と小鳥遊さんの妄想はどんどん紡がれていく。
「お昼寝も一緒にして、夜ご飯は綺麗な夜景を眺めながら食べるの。それで、そのままホテルで」
「小鳥遊さん、そこからは自分の部屋で一人でどうぞ」
「一人ではいつもしてるから」
「誤解が招かれる恐れしかないからね?妄想を一人でしてるだけだよね?それもどうかと思うけど」
「や、やだ、そんなこと言わせないでよ……」
「ねえ止まってお願いだから!」
「え?今日りょーくんのおうち泊まっていいの?やったぁ!」
「同音異義!」
「逆転裁判!」
「それは『異議あり!』」
「ちゅんちゅん!」
「それはさえずり!」
「私のさえずりが聴きたいならたくさん聞かせてあげるよ?」
「誰かこの口を止めろ!」
「ならりょーくんが塞いで!」
「うるせえ!」
いつもと違うよこの小鳥遊さん!さては別人だろ!




