九十二話 ラジオ
「スタンバイお願いしまーす」
「はーい」
いよいよラジオを始めるらしい。が!
「あの……どこまで話してもいいんですかね?」
「あ、なんでもいいよー!」
うん、小鳥遊さん軽いね。
「ほらりょーくんこっちこっち!」
楽しそうに笑う小鳥遊さんに手を引かれながら、ガラス張りの部屋の中へ。
「では一ノ瀬君、さっき教えましたが、マイクなどしっかりお願いしますね」
「は、はい」
うーん緊張する!
『では始めまーす』
目の前にはマイク、右側には画面。そして正面に小鳥遊さん。
いよいよ、カウントダウンが始まる。
『五、四、三…………』
収録中のランプがついた。忘れずにマイクをオンにする。
「と、いうことで始まりました小鳥遊 奈夢の『ラジオなゆめ』!今回はゲストにとある男の子を呼んでいます!どうぞ!」
噛まないように、噛まないように意識する。
「皆さんお初にお目にかかります、ゲストのりょーやです!よろしくお願いします!」
瞬間、画面にコメントが勢いよく流れ出す。今新しいコメントが、次の瞬間にはもう映っていない。そして、気になる同時接続数は。
「10万……!?」
思わず口に出ていた。聞いてない!
「さあさあどんどんやっていきましょう!早速、このコーナーから!『おたよりなゆめ』!このコーナーでは、番組に寄せられたおたよりを読んで、それを中心にお話ししていきます!」
…………これ、僕いらねえ!
「まず、このお便りから!『なーちゃん、りょーや君、こんにちは』。こんにちは!」
「こ、こんにちは!」
小鳥遊さんは箱から一枚葉書を取り出し、その内容を読んでいく。
「『突然ですがなーちゃん、大好きです』」
本当に突然だ!
僕が心の中で突っ込んでいると、耳についているイヤホンから声が聞こえる。曰く、『ガンガン言っていいよ!やばいことじゃなければNGないから!』とのこと。言ったな?責任取らないよ?
「『まず、朝起きると天井になーちゃんの写真、横を見るとなーちゃんの抱き枕、トイレのドアにはなーちゃんの顔写真』」
「だいぶ重症ですね」
「私愛されてるねー!えー、『鏡があるはずのところにはなーちゃんの全身画像、歯ブラシと家の全てのコップは公式グッズです。当然ベッドの下にはなーちゃんの写真集があります』」
「一度診察してもらうことをお勧めしますよ。ほら、リスナーの皆さんも」
僕はチラッと画面に視線を向ける。がしかし!
「ってあれぇ!?」
流れていくコメントは『常識』『及第点』など、肯定するものばかり。
「……僕はおかしいんでしょうか?」
「りょーくんももっと私に惚れていいんだよ!」
いつもよりも可愛い声で、そんなことを言う。
「あ、あはは」
こういう時なんて返したらいいんだろうね?
再び、イヤホンから声が。
『もっと見せつけていけよ!』
僕はおもちゃじゃないんですが!
「じゃ、りょーくんが惚れたところで続けるね?」
「少々対応に困りますがどうぞ」
「『テレビもなーちゃんが出演している番組しか見ないし、本棚は写真集しかありません。本当に大好きです』」
「言う通り、本当に小鳥遊さんのことが好きなんですね」
「『そんな愛しのなーちゃんに質問です。どんなタイプの男性が好みですか?詳しく教えていただきたいです。ラジオネーム"りょーや"』」
おー、なんかそれっぽ
「って僕ぅ!?いやまってそんなの送ってない!」
「えー?でも、ここにりょーやって書いてあるよ?」
「多分違う人だね」
「ううん、一緒なの」
「おかしい、話が合わない」
「ううん、あってるの。それでね?りょーくんが私のこと思って毎晩あんなことやこんなことをしてるのはいいんだけど」
「合ってないしあんなこともこんなこともしてないね」
「ううん、違うの。でね?私の好きなタイプなんだけど」
なんだこれ!いつもこんなんなの!?ガラスの向こうの大人共は笑ってるし、コメントも『かわいい』で溢れてんだよ!怖いよ君ら!
「私、りょーくんみたいな人がタイプなんだ!」
「わー爆弾発言が電光石火だ!」
今度のコメントは『知ってる』『かわいい』『お幸せに』と、認めるような声ばかり。
「……なんか、こういうのは批判されるものばかりだと思ってました」
「でしょー?それがみんなのいいところなんだ。ねー?」
『ねー!』
ねーじゃねえよ大分おかしいよ。
「ちなみに、りょーくんはどんな子が好き?」
いきなり、そんなふうに困る質問が来た。




