八十九話 問題①
「と、いうことで始まりました小鳥遊 奈夢の『ラジオなゆめ』!今回はゲストにとある男の子を呼んでいます!どうぞ!」
「皆さんお初にお目にかかります、ゲストのりょーやです!よろしくお願いします!」
ガラスの向こうにはニヤニヤしている大人たち、目の前には小鳥遊さん、鼻の先には天井から下がってきているマイク。
『と、いうこと』というのはどういうことだろう?なんで僕が小鳥遊さんのラジオにお呼ばれしているんだろう?なんでお初にお目にかからなきゃいけないんだろう?
というか、どうしてこうなった?
それは、数日前に遡る。遡りたくなんてないけどね。
「あー…………自由だ…………」
さて、夏休みが始まった七月下旬。なんの変哲も無く、数日が過ぎた。もうすぐ八月に入ろうかというところ。
クーラーの心地よさにひたりながら僕が自由を謳歌していると、ピコンとスマホが声を出した。
「お、小鳥遊さんからだ」
この前誕生日を祝ってもらい、何か返したいと思ったものどうやって返したらいいのかわからず、つい最近自分からも誕生日に何か贈れるようにと思いついて、僕はみんなの誕生日を聞いていた。
一応小鳥遊さんの誕生日は何かのプロフィールに載っていたので知っているものの、確認という形で聞いている。が、近頃忙しかったのか、連絡は来ていなかった。
『そんなことよりりょーくん、今すぐ会いに行っていい!?』
…………ん?
『いいけど、誕生日は合ってる?』
そう送ったところでインターホンが鳴った。いや早いな!
「はーい」
「りょーくんっ!」
「ぐはっ」
ドアを開けると、でんこうせっか。威力40?ばかいえ80はあるね!
「…………いてて」
「はぁ〜りょーくんだ〜…………」
うにゅうにゅと僕の胸に顔を押し付ける小鳥遊さんに「ちょっと離れて……」と言うも、一向に動けるようにはならない。
「あ、あの〜?」
「…………すぅ」
おいまてどこで寝てるんだ君は。
「……どうしよう」
とりあえずベッドへ運び、寝かせる。
「疲れてたんだろうな……」
撮影や収録で働きづめだったんだろう。その疲れが僕のところに来た途端にどっと出るっていうのはいかがなものかと思うけど。
「…………アイスでも買ってきとくか」
時間は昼少し前、暑いがまだまだこれから気温は上がる。先に行っといた方が良さげだ。
僕はしっかりと部屋の鍵を閉め、部屋を出る。
「何がいいかな」
そう考えながら、コンビニへ向かった。
「ただいま……あ、起きてたんだ」
家を出た時間は30分。その間に起きるとは、なかなかやるな。
「うん…………」
「まだ眠いでしょ、寝てていいよ」
「おきる…………」
ぽやぽやした様子で目を擦る小鳥遊さんに「アイス食べる?」と聞く。
「たべる…………」
一応保冷剤を持っていったのでアイスは溶けていない。
僕が袋ごと小鳥遊さんに渡すと、彼女は一つとって他を僕に返し、おそらくいただきますと言ったんだろう、「………んぁ」と漏らしてアイスを食べ始めた。
僕も自分の分を取って残りを冷凍庫に入れ、小鳥遊さんの頭が動くまでゆっくりしていた…………クーラーってすごい。




