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八十八話 ありがとう

「着いた!」


 えー、現在地はラウンドサン、ちなみに客は僕、白撫さん、相模川さん、翔太、小鳥遊さん、春原君の六人のみ。なんでも、僕の誕生日が今日だということを知った優純さんが貸し切りにしてくれたらしい。お金持ちの力ってすげー!


「じゃ、今日は楽しもうぜー!」

「それはいいけど……今日は良夜の誕生日なんだからね?」

「………わかってるって!」

「「ほんとかなぁ?」」


 相模川さんと小鳥遊さんに疑いの目を向けられる翔太。


「…………へへ」


 へへじゃないよね!まあ、楽しんでもらって構わないんだけど。


「で、何したい?今日は良夜のやりたいことについてくからな!」

「あ、そう?じゃあとりあえず……」


 テニス!


「どおらっしゃあいっ!」

「待って相模川さんバケモノ!?」


 ボウリング!


「へいっ!」

「はい四連続ガター!あはは、小鳥遊さん下手すぎ!」


 バッティング!


「気持ちよく飛ばしてるとこ見せて春原君!」

「ふっ」

「ないばっちー!」


 バブルサッカー!


「んぶっべ」

「どおっ!?」


 バスケ!


「よっ」

「そいっ!」

「ないっしゅー!」


 それから、それから!


「っはぁ〜…………疲れた……」


 ほぼ全て遊び尽くした僕らは今、フードコートでぐったりしていた。


「楽しんだ……」

「まて良夜、溶けてる溶けてる」

「ふうぁぁぁ…………」

「未亜、しっかりしてください」


 ぺちぺち叩かれる相模川さんを見ながら、姿勢を正す。


「ほらりょーくん、私の膝においで!」

「しつれーい」


 両手を広げた小鳥遊さんの太ももに相模川さんが突っ込んできた。


「……いらっしゃーい…………うり」

「…………おおおぉ」

「うりうりうり」

「ふぉああああ!」

「ここがええのんかー?」

「んっ……あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛……ぎもぢいい……」

「おじさんみたあっごめんなさいなんでもないです」


 視線だけで射殺されそうになったんですが?


「さて、と……最後にカラオケいっとくか!」

「お、いいね、いこいこ!」


 翔太の言葉で、ラウサン内のカラオケボックスへ。


「おし、第一曲目は?」

「「わたしたちがいくぜー!」」


 ノリッノリの小鳥遊さんと相模川さん。この2人、すごい気があってるよな。


「「いつでもあいらびゅー♪」」


 っておちゃ○機能じゃん!選曲古いな!……それだけ人気ってことか。ちなみに、結果は62点だった。


「べっつに?2人だし?これは普通だよね!」

「ね!」

「だってよ、いくぞ良夜!」

「まて音痴に歌わせるな」

「なんだよいいじゃねえかよー!じゃ、歌おうぜ悠人!」

「わかった」


 え!?春原君ってカラオケとかで歌う人だったんだ!なんか意外だなぁ!確かにCD出してるし歌がうまいのは知ってるけど、もうちょっと堅い感じだと思ってた!


「「いつでもあいらびゅー♪」」


 お前らもおち○め機能かよっ!才能とイケボの無駄遣い……あれ?まって、キュンがむねむねする……?そして結果は97点!上手い……!


「次まどかー!」

「は、はいっ!」


 白撫さんの歌声なんて聞いたことなかったけど、きっと綺麗なんだろうな……すごく透き通ってそうだ。


「い、いきますね……!」


 その歌声は、僕の予想通り、綺麗だった。でも、そうじゃなくて。


『happy birth day to you』

「…………ッ」

『happy birth day dear』


 彼女は、ふわりと笑って。


「……良夜君」


 心臓が、飛び跳ねた。


『happy birth day to you』


 本当に、泣きそうになった。




「やー、遊んだなー!」


 学校前に着くと、翔太が背伸びをした。もう日は暮れ、あたりは暗い。


「ほんとにみんな、ありがとう」

「まだお礼を言うのは早いぜ?」


 翔太がそう言うやいなや、どこからともなく現れた黒服の男性がダンボールを持って翔太の隣に立った。


「ありがとうございます」


 みんなが、その中から何かを取り出す。


「りょーくん、お誕生日おめでとうっ!」

「良夜、今年も用意しといたぜ!」

「まあ、一応」

「良夜、おめでとーう!」


 小鳥遊さんは長方形の箱が、翔太からは例年通り本がたくさん、春原君からもラッピングされた形的に何か棒––––ペンか何かだろう––––のようなものを、相模川さんからは薄めの板––––感触的に多分本だ––––が手渡された。


「みんな…………ありがとう」


 あぁ、本当になきそう。


「じゃ、もう暗いし帰るわ、じゃなっ!」

「あーほんとだ……このあと2人で過ごしたかったのに……ばいばい、りょーくん!」

「じゃあな」

「手で持ってるの大変だよね、袋あげる!じゃ、また明日ねー!」


 4人を見送っていると、とん、と背中に触れられた。白撫さんだろう。


「あの、一ノ瀬君…………」

「……どうしたの?」

「そ、その」


 白撫さんは今にも泣きそうな表情をしながら、いきなり頭を下げた。


「すみません、何も用意できませんでした!その、何がいいかと考えているうちに時間がなくなってしまって……!本当に、すみません!」


 ………………泣いて欲しく無いや。


「白撫さん」


 両手で頬を包み、僕の方を向かせる。


「ありがとう」

「…………え?」

「ありがとう。そんなに真剣に僕のことを考えてくれてたんでしょ?そりゃ何か貰えるのも確かに嬉しい。でも、僕はそんな風に悩んでくれるだけですごく嬉しいんだよ。だから、ありがとう」

「で、でも…………」

「……そこまで言うなら、なにか欲しいものができたら白撫さんにお願いしてもいいかな?」

「わ、私に……?」

「そう、白撫さんだけに」

「…………おっ、お任せください!なんでも用意しますので!いつでもどこでも言ってください!」


 白撫さんに、再び笑顔が戻った。


「うん」


 ちなみにこの後部屋に戻ってから、死にたい程恥ずかしくなってもはや骸(むくろ)になっていたのは僕だけの秘密だ。

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