八十七話 お買い物
と、いうことでやってきました。
「低島屋、とうちゃーく!」
説明しましょう!低島屋とは、服はもちろん指や腕時計にネックレス、ネクタイやハンカチまで!ちょっと高めのアクセサリーや何の脈絡も無いものなども購入できる、プレゼントを見て回るに最適なお店なのです!
ちなみに、メンバーは私、未亜、小鳥遊さん、吾野君、春原君の五人。
「じゃ、いこいこ!」
小鳥遊さんが一番に歩き出します。
「何にしよう……」
「アドバーイス?」
未亜がくるりと振り向きながら二人を指差しました。
「おう、全くわからん」
「同じく」
「…………何しにきたの?」
「ごめんて」
2人はしょんぼりして肩をすぼめます。
「しっかりしてよー!私も悠人も後でお仕事あるんだから急いで!」
そう、今日は土曜日。明日は日曜日で一ノ瀬君の誕生日。小鳥遊さんと春原君のお仕事は日曜日以外全て入っているようで、今日もあまり時間がないんだそうです。
「では、急ぎましょう!」
「うんっ!」
それから店内を回ること四十分程。
「…………うん、これにしよ!」
そう言って小鳥遊さんが手に取ったのは、黒いペンケース。細かなところまで丁寧にデザインされており、内側には『lover's sign』と記されていました…………え?らばぁずさいん?
「あ、あの、小鳥遊さん」
「じゃ、行ってくるね!やー、悠人のアドバイスのおかげだよ!」
チラッと春原君の方を見ると、目が合いました。
むうううう!彼は味方じゃなかったんですね!というかもはやみんな敵ですか!吾野君も一ノ瀬君を狙ってるんですかぁ!
私が内心ぷんぷん怒っていると、会計を済ませた小鳥遊さんが戻ってきました。
「悠人!マネージャーから連絡来てた!急いで!ばいばいみんな!また明日ね!」
「また」
そう言って、2人は早足で帰って行きました。
「…………さて、本気出しちゃうぞ!」
ぐっと未亜が両手でガッツポーズを取ります。
「とりあえず向こうから!」
力強く手を引っ張られ、また店内を回って行きます。
「服!」
「これ?でも……ほかを見ましょう」
「ハンカチネクタイ!」
「悪い意味があった気がします!」
「ならだめ!時計!」
「つけているところを見ていません!」
「なあ、花瓶とかどうだ?」
「置く場所がなかった気がするのですが!」
「それな!」
「下着!」
「却下!」
「自分をリボンで縛ってプレゼント!」
「保留!」
「いやありなのかよ!」
「傘!」
「なぜか高そうなのが何本かささってましたが!」
「香水!」
「なんかエロいな!」
「はうぅ……」
「変なこと言わないでよ!じゃあ、アクセ!ネックレスとか!」
「あんまり好きそうじゃありませんでした!」
「なら!」
「はい!」
「お手上げ!」
「無理!ギブ!」
「えっ」
はぁ、はぁと息を吐きながらベンチに座ります。
「いや、だってさ…………今んとこ服か自分自身かだけだよ?」
「た、確かに……」
何周も回って、候補はふた……一つですね。危ない危ない。
「男!同性!なんかない?」
「つってもなぁ……あるとしたら…………」
「「あるとしたら?」」
「ほんとに疲れてそうだったんだよな」
そういえば、最近ため息が多かったかと思えばずっと何か考えていたり、ほんの少しだけ顔色が優れていなかったかもしれません。
「俺にもわかんねえなぁ……」
こうして、何も買えないまま時間は過ぎていくのでした。




