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八十一話 交換

「…………はい?」

「まあ、色々あったのよね……前に」


 色々で済むのか。いや、それ以前に僕が記憶喪失?全く知らないんだけど?


「旅行先で事故に遭って、それでね」

「へぇ……」


 とはいえ、だからなんだという話でしかない。だって覚えてなくても今充実してるし……多分。


「んで?」

「いや、それだけ。これをあんたが知った上で話したら楽かなと思ったのよ。もうちょっと色々聞かれるかとは思ったけどね」


 そう言いながら、母さんは再び部屋に入っていく。


「で!」


 僕らが座った後、ぱちんと手を叩いた母さんが切り出した。


「どうなってどういう状況なの!どっちが正妻?どこまでいっちゃったの!?」

「お母様、今はまだ途中なのでお控えいただけますでしょうか?」


 テンションの上がってきた母さんに水を差すように、お仕事モードの相模川さんが言った。


「え〜?あ、そういう感じ?やあね私ったら」


 やぁねじゃないんだよなあ…………


「ねねママ!」

「なにかしらなーちゃん」

「りょーくん私のこと覚えてなかったんだけどなんで?」

「あ、良夜記憶喪失したのよ、小学校の時に」

「え」


 それを聞いた小鳥遊さんと白撫さんが同時に僕の方を向いた。


「僕もさっき知った」

「そ、そうだったんだ……」

「えっと……」


 二人がおろおろし始めたので、別に大丈夫だよと言って落ち着かせる。


「で、その反応的に相模川さんは知ってたの?」

「ええ、ご主人経由で色々と。ちなみに誕生日や血液型、柴田クリニックで産まれたことも知っていますのであしからず」

「ごめんなにがあしからずなのかも分からないし自分が産まれたところが柴田クリニックだってことも知らなかったよなんで相模川さんが知ってるんだろうね」

「そういうことです」


 なるほどわからん!


「じゃあ、なーちゃんも未亜ちゃんも苦労してるのね……」

「全然、りょーくんといるの楽しいよ!」

「全く、苦労しすぎて死んじゃうよ」


 小鳥遊さんと普段モードに戻った相模川さんが正反対の言葉を放った。


「み、未亜?」

「……こしょこしょ」

「––––ッ!もうっ!もうっ!」


 相模川さんの言葉に疑問を持った白撫さんが声をかけると彼女は耳打ちされ、なにを言われたのか顔を真っ赤にしてぺちぺちと相模川さんを叩いていた。


「まあ、そういう点ではフラットなのかしらね……」

「困った……」

「でも、まどかも覚えてないよね?」

「あ、そういえば」


 四人が難しい顔をする。


「そういうこともあるんじゃないの?もう何年も経ってるんだし」


 僕がそう言うと、何故か四人がため息をついた。


「あのね、りょーくん」

「良夜、あんたね……」

「そうじゃ、そうじゃないんだよ……」

「乙女の勉強も必要ですね……」


 なんで僕が呆れられてるんだよ……


「で、母さん」

「話題変えて逃げようとしてるわねあんた」

「うるさい。母さんはいつ帰るの?」

「あー、泊まって行こうと思ったけど、こういう状況だしねぇ……?今日中に帰るわ」

「そっか」


 こういう状況がなにを指すのかは知らんけど。


「あ、そうだ!ママ、ナイン交換しとこ!アドバイス欲しいな!」

「おっけおっけー!」

「ほら、まどかっ!」

「へぇっ?え、あっ、わ、私もお願いできますでしょうか!?」

「全然いいわよ!」


 母さんとナインを交換した二人は、満足そうに画面を見つめていた。熟女好きなのか……?……やめよう。


「さてと……話すこと話したし、そろそろお暇しましょうかね」


 母さんは立ち上がり、僕はそれについていく。


「あ、じゃあ私も帰ろっかな」

「では、私も失礼します」

「私もー」


 小鳥遊さんもついてきて、他二人も外へ。


「では」

「うん、おやすみ」


 隣の部屋に白撫さんが入っていくのを見送り……っておいなんかさらっと相模川さんも入って行ったよ?……ま、いいか。


「じゃ、送ってくよ」


 母さんと小鳥遊さんを駅まで送り、僕も再び部屋へ。すると、ドアの前に相模川さんが立っていた。


「あれ?どうしたの?」

「いえ、少々お話を」

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