八十話 知らない理由
「ほら良夜、あんたお客さんにお茶の一つでも出しなさいよ」
「あーそういうこと言うんだね母さんじゃあいいや買ってきたアイス僕二本食べよー」
「きゃー良夜イケメーン!」
「なんだそれ」
母さんの掌返しに呆れつつ、冷凍庫にあるアイスを渡す。
「で?」
「ふん?」
「いや、なんで三人と知り合いなんだよ」
母さんがここに来た理由も気になるけど、そっちの方が気になる。
「小鳥遊さんは辛うじてわかるよ?いや覚えてないからわかんないけどさ。でも、相模川さんと白撫さんとはどういう関係なんだよあと僕のアイス勝手に食べるな」
母さんはアイスを食べるのを一旦やめて、答えた。
「その辺は二人で話しましょ」
「あ、うん」
有無を言わさぬ言葉の圧に、僕はたまらず首を縦に振る。
「あの…………私も身に覚えが無いのですが」
「あらそう?じゃあ三……未亜ちゃんも含めて四人でお話ね」
後で説明してくれるなら今聞く必要はない。
「で、何しに来たの?」
「ん……なんとなく?」
「あっそうすか」
それからは本当に何もなく、ただだらだら喋っているだけだった。
「じゃ、俺そろそろ帰るわ」
「あ。じゃあ送ってくよ」
「いいよべつに、面倒だろ?」
「じゃあ玄関まで」
そう言って、翔太について外に出る。
「じゃあ、また明日」
「おう…………良夜」
「ん?」
「しっかりな」
「? なにが?」
「しっかりな!」
「まかせとけぇ!……なにが!?」
「じゃあなー!」
「あ、うん……ええ?」
何が何だかわからないまま、部屋に戻ろうとすると、今度は母さんが外に出てきた。
「どうしたの?翔太もう行っちゃったけど」
「そうじゃなくてね」
「じゃあなにさ」
「先に二人で話したいんだけど、というか一言だけ伝えとくわ」
なにやらポケットから紙を二枚取り出し、母さんは僕に手渡した。それは写真だった。写っているのは…………
「母さんと……誰だこれ?こっちも、誰?あ、でもこの男の子は似てる」
「それ、知らないでしょ」
「そりゃあね」
いきなり知らない人の写真を見せられても、知らないとしか言えない。この景色のどちらにも見覚えはないし、やっぱり写ってる人にも––––あれ!?
「これ、優純さん……?」
二枚目の写真の右端に、ニコリと微笑む優純さんが写っていた。
「あれ?じゃあこれ、僕と白撫さんと相模川さん……?」
「そういうこと」
いや、どういうことだよ。
「…………全く覚えてないんだけど」
写真に写っている子供たちは小学生低学年くらいの身長だ。覚えてないこともあるかもしれないけど、全く覚えてないなんて……
「でしょうね」
母さんは、まっすぐこちらを見た。
「あんた、記憶喪失してるから」




