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七十九話 なんでぇ……?

「くそぉ…………」


 時は巡って日曜日。結局母さんが来る日はあれからすぐの日曜日、つまり今日になった。そう、今日になったのだ。ふざけるなぁ!いや、ふざけれてくれぇ!

 母さんが来ていなければ僕は今頃今日という貴重な休日を…………

 今日という休日を、どう過ごしていたんだろう。そう思うと、また逃げるだのなんだのということが頭の中を巡り始める。


「あーあーあー!」


 暗くなってきた気分を振り切るように、頭を振って思考を切り替える。


「なんだいきなり、怖いぞ?流石の俺でも引くわ」

「翔太のどこが流石なのかわからないし流石だったとしても今のに引かなかったらやばいよ」

「えっなに急に冷静になるの情緒不安定かよ」

「おうそうだよ悪いか」


 自分でもおかしいなと苦笑しつつ、現実に目を向ける。


「ていうかお前もうちょい向こう行けよ」

「無理だよ、僕だって狭いんだから」

「す、すみません」

「あ、大丈夫だよ、白撫さんのせいじゃないから」

「それは私が太ってるって言いたいのかー!?」

「そうかもしれんな」

「おい翔太聞き捨てならんぞ?」


 今、せっまい部屋に四人、それも机の片側に。右から相模川さん、白撫さん、僕、翔太。これから小鳥遊さんも来る予定だ。つまり、もっと狭くなる。で、母さんもくる。ということは、さらに狭くなる。クソ暑い。ちなみに母さんは太ってはいない。多分。


「お、もうすぐ来るって」


 ギャーギャー言い始めた相模川さんと翔太は置いといてスマホを確認すると、あと少しだという旨を伝えるメッセージが来ていた。


「緊張します」


 僕の言葉を聞いて、白撫さんが隣でガッチガチに固まる。ピシッと正座をし、腕を太ももに置いている。服装はなぜか制服だ。本当になんで?


「なー良夜、アイスとかねえの?」


 小競り合いを終えた翔太が若干不機嫌そうに聞いた。


「私も食べたーい」


 こいつら…………


「無いって言っとくわ」

「相模川隊員」

「了解。失礼します!」


 無いって言ったのに何故か冷蔵庫を開ける相模川さん。しっかりと断りを入れるあたり、それなりに礼儀はあるらしい。失礼だって思ってるなら開けるなって話だけどね!


「…………本当にないし!なんで!?私用のアイスが一本二本はあってもいいのに!!」

「なんであると思ってるのか知りたいよ」

「そりゃ私を中心に世界が回ってるから」

「えぇ…………」


 白撫さんが引いていた。流石相模川さんっす。


「まああるんだけどね」


 ちょっとした悪戯だ。実を言うと隠してある。


「どこどこ!」

「中心から外れてるし、遠心力で飛んでったんじゃない?」

「言え」

「あっすいません離して」


 僕の言葉に対し、軽く翔太の首を締めながら僕に聞く相模川さん。どうしたの?今日おかしいね?

 そうやっていると、こんこんと玄関のドアがノックされ、「はーい」と返事をすると、ドアが開いた。


「りょーくんっ!」


 勢いよく入ってきた小鳥遊さんは、僕に抱きつこうとして寸前で止まった。


「…………ど、どうしたの?」

「手、洗わないとね!洗面所借りてもいい?」

「あ、うん」


 いやそこはちゃんとしてるんだね!

 なにを思ったのか、白撫さんはむすっとした顔で座る位置を僕の左から右に変えた。


「特に意味は無いですがこっちの方がいい気がします」

「そ、そう」

「りょーくんっ!」


 さっきの繰り返しのように手を洗った小鳥遊さんが僕目掛けて飛び込んできた。それも、白撫さんがいない方から。まるで目で追えなかった。


「うぐっ」

「ちょっ、離れてください!」

「なんでー?いいよねー?えへへ」


 僕より先に白撫さんが言い、それに小鳥遊さんが答え、僕より先に小鳥遊は自己完結した。


「ご、ごめん、離れてもらえると嬉しい……暑い……」

「ぶー…………けちっ」

「ふんっ!」


 彼女はあからさまに不機嫌になり、白撫さんは勝ち誇ったような表情を浮かべた。よくわかんないね。


「……ちっ」

「え?なに?相模川さん今僕の方見て舌打ちした?したよね?」

「してないよー!投げキッスだよー!」

「やめてください」

「ごめんて嘘だからただの舌打ちだからそんな目で見ないで怖いよまどか」

「やっぱり舌打ちじゃねえか」


 彼女は白撫さんの隣に、翔太は立ってスマホをいじっている。多分、密集して暑くなるのが嫌なんだろう。


「で、アイスは見つかった?」

「うん、でもなんか人数分あるっぽいしやめといた」

「よろしい」


 外は暑いし、母さんが来たらみんなでゆっくり食べたいと思ってたからね。

 そうやって話していると、再び玄関のドアがノックされる。


「はいっていいよー」


 十中八九母さんだろうと思い返事をする。そして、それは当たっていた……んだけど。


「お邪魔しま……あら〜なーちゃんじゃないのー!」

「わー!ママー!」


 僕より先に小鳥遊さんが母さんと感動の再会を遂げていた。


「…………なんで……?」

「それに未亜ちゃんにまどちゃん、ついでにしょーちゃんも〜?どうしたのよみんな集まっちゃってぇ〜!」

「あっ俺ついでなんすね」

「……………………なんでぇ……?」

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