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七十八話 連絡

「はぁ……」

「どしたー?元気ないなお前」


 翌日の月曜日、僕は自分の席に突っ伏してなんどもため息をついていた。


「いや…………別に」

「そうかい。でもな、ため息をつくと幸運って逃げるんだぜ?」

「知らない知らない」


 まあ、僕の気分が沈んでいるのは、単純明快、昨日遊園地のトイレで翔太に言われたことと観覧車での一件が頭の中をぐるぐると巡っているからだ。


 逃げるとかなんとか、どういうことなんだろう。こちとら逃亡犯でもなんでもないっての!


「「はぁ……」」


 意図せず、誰かのため息と重なった。


「…………おはよう」

「お、おはようございます」


 白撫さんのため息だった。彼女にも悩み事があるんだろう、その表情は明るいものではなかった。


「おはー!」

「おはよー!」


 少しして、元気な声色で相模川さんと小鳥遊さんが教室に入ってくる。


「おはようございます」

「おはよう」


 僕はサッと相模川さんから目を逸らして小鳥遊さんに挨拶する。これは、なかなか直りそうもないな……


「どしたのりょーくん、なんかヤなことあった?相談乗るよ?」

「うん…………大丈夫だよ」


 何がなんだかわかんないってのに相談も何も無いんだよね……

 再びずーんと沈んでいると、白撫さんも小鳥遊さんと話していた。ふと、耳を傾ける。


「なんかあったの?」

「い、いえ、特には」


 やっぱり向こうも向こうで同じような話になってるようだ。そこへ、春原君が現れた。


「おはよ」

「おはようございます」

「…………なんかあった?」

「い、いえ別に、特に何も」

「ならいいけど。もしアレだったら、相談乗るから」


 ここの会話も同じなのかよ!

 独りで突っ込みつつ、鞄の中で震えたスマホを取り出す。


「ん?母さんからだ」

「なになにー?」

「珍しくないか?お前のお母さんからって」


 内容は、こう。


『最近どう?もう少ししたらそっちにいってみようと思ってるんだけど、いつなら都合いい?』


「………………」

「わー!会いたい会いたい!」

「俺も久しぶりに会いたいわ」


 なんでしょうか君らはそんなにノリノリなの?親だよ?親が来るんだよ?ていうかまだ許可すらしてないよ?


「なに、どうしたの?」


 面白そうな雰囲気を嗅ぎつけたのか、相模川さんと白撫さんも会話に入ってきた。


「いや、母さんがこっちに来るとかいっ」

「おお!会ってみたいなっ!」

「わ、私もご挨拶に伺わせていただきたいです」

「おい聞け。僕の話を最後まで聞け。おねがい聞いて?」


 そんな僕の意思表示も虚しく、みんな勝手に予定調整を始めた。


「いつなら空いてるかなー?」

「あの」

「未亜は毎日暇でしょう?」

「まーねー!」

「えっと」

「私毎週日曜はオフにしてあるからいつでも行けるよー!」

「こっちに来るんだろ?止まってくんだろうし、俺は部活終わりとかに会いに行くかな。あ、でもどうせならみんな一緒のがいいか。じゃ、日曜だな」

「ちょっ」

「もう来週とかでいいんじゃないかな?」

「ありですね!」


 やっぱり彼らとは言語が違うみたいだ。

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