七十四話 謎の判決と二匹のじゃじゃ馬
「だっ!?」
今度は白撫さんから足を踏まれた。あっ待って強い痛いカカト止めて!?
「あっちょっしらっ」
「…………」
「!?!?」
まさかの二発目!?いきなり太ももつねられた!
「…………ばか」
「なんで……」
止めてはもらえたものの、なんだかあからさまに機嫌を損ねている。
「で、どれにします!」
「すいません……お任せします……」
「!!!お任せください!」
あれ?今度は機嫌が良くなった痛い痛い痛い!?
「こっちはー?」
「お任せで……」
「わかったぁー!」
ひい……二人がなにに怒ってるのかわからないしお任せにしたら機嫌が戻るのも理解できない……女の人コワイ…………
「「及第点」」
相模川さんと春原君が示し合わせたかのように同時に言った。
「なにがだよ……誰か助けて……」
「ま、人それぞれってことだ」
「だからなんなんだよ……」
翔太は翔太でよくわからないこと言うし……さては僕と彼らじゃ使ってる言語が違うんじゃない?もしそうなら教えてくれよ、そっちに合わせられるように努力するからさ……
左右に座るじゃじゃ馬に振り回され、異星の住人三人を相手に会話していると、人生三回分の体力を使い切ったところでようやく注文したものがやってきた。
「み、未亜、流石にそれは無理があるだろ……」
彼女の前に置かれたのは、頂点が目線の高さまでくるほど大きなパフェ。クッキーやチョコレートがトッピングされ、表面にはチョコやバニラのアイスクリームが顔を出している。そして、そこにオレンジやバナナ、その上にチョコソフトに生クリーム。いくらなんでもやりすぎだとしか思えない。さては、考案者はおばかさんだね?
「いやいや、女の子に甘いものは別腹だよ!ね、二人とも?」
「い、いや、それは流石に食べれないかな……あはは……」
「私も、無理だと思います……」
「ほらみろ」
「い、いや、二人は隠してるだけだもん!」
チラッと左右を見ると、二人は相模川さんのことを哀れむような目で見ていた。やっぱり格が違うみたいだ。
続いて到着したのは、二つのアイスクリーム。翔太と春原君が頼んだみたいだ。春原君がチョコミント、翔太がバニラ。相模川さんのに比べると、かわいらしくてしかたがない。
「お、後でそっちくれよ」
「じゃあそっちももらう」
二人は仲良くなったみたいで、交換しようという話をしている。お化け屋敷を経たからかな?
そして、最後に小鳥遊さんと白撫さんの注文したものがやってきた。ちなみに僕は二人のものを食べるということもあり、注文していない。
「あれ……?」
どうしようね?飲み物が来たけど、なんかストローがハートになってるような気がするよ?ははは、胃が痛いや。目の錯覚だね!
「……ん」
さて、右側、つまりは白撫さんの方からすすす、とストローが近寄ってきた。恐らく咥えろということなんだろう、その証拠に彼女は既にもう一方のストローを咥えている。
「し、失礼します……」
「ギルティ」
「へ?」
なんか、春原君から睨まれた。そういえば、春原君って白撫さんのこと好きなんだっけ?周囲の視線がはちゃめちゃに痛いし、今だけ代わってくれないかな?
「んっ!」
「あ、ご、ごめん」
少し怒ったような白撫さんの顔には、早くしろ、そう書いてあるように見えた。
意を決してストローを咥えると––––––––
––––パシャシャシャシャシャシャシャシャシャ!
相模川さんが、僕らにスマホを向けてシャッターを切っていた。
「ちょ、相模川さ……」
「んっ!」
僕が盗撮魔の方に顔を向けようとすると、キュッと両手で押さえられた。
すっと視線をあげると、綺麗な瞳がそこに。
きゅー、と顔が赤くなるのが感じられた。目の前の彼女も、頬から耳の先端まで赤く染めている。
そこで限界を感じたのか、白撫さんは僕の顔から手を離し、ぴっと離れた。
「す、すみません……」
「ここ、こっちこそごめん……」
思考回路が爆発したみたいになにも考えられなくなった。
つんつん。
「りょーくん、こっち」
「んむっ!?」
左腕を突かれてそっちを向くと、いきなりストローを口に突っ込まれた。
「んぶっ」
そして抜かれた。
「小鳥遊さんんっ!?」
今度はもう一方のストローを口に突っ込まれた。
「んふふ」
そして、彼女は僕が一度咥えたストローを口に入れた。
「間接キス」
ストローを咥えたまま、ぼそっと呟かれる。
「ギルティ」
「有罪だな」
「ノーベル平和賞」
順に、相模川さん、翔太、春原君が判決を下した。でも待ってほしい、犯罪者に平和賞を与えるのはどうかと思うんだよね、僕は。
「んべっぶむっ」
なに!?なんなの!?どうして小鳥遊さんはストローを抜いたり挿したりしたがるの!?
「そっち、私も口つけたよ」
「あっ」
「ギルティ」
「死罪」
「人間国宝」
まてまて僕は被害者だ加害者じゃないあと国宝認定ありがとう春原君!ってまって痛いなに!?
「ぎ、ぎるてぃ、です」
むっすー!とこれまでにないほど鬼の形相で白撫さんが僕を睨んだ。多分、僕が翔太の答えを写してた時よりも怖い。
「んごっ」
僕は正面を向かされ、もう一本ストローを口にぶち込まれた。吸うと、二本分の液体が流れ込んでくる。
「そっち、私が咥えた方ですから」
はぁ……誰か助けてくれないかなぁ…………
それを長時間続け、相模川さんがパフェを食べ終えたところでお店を出ることにした。本当に食べ切った上にもう一個頼もうとしたんだから脅威だよね、止めたけど。




