七十三話 正解とは
「はあ、はあ……」
「だ、大丈夫ですか一ノ瀬くん?」
「…………なんとか」
なんとか乗り切り、外に出て空気をめいっぱい吸い、思考をリフレッシュする。ああ、自然って素晴らしい……
「さてと……もう一回行っとく?」
「なんでだよ」
振り向いてニパッと笑う翔太に、僕は力を抜いて突っ込む。
「ケチだな……そんなことじゃモテないぞ?」
「余計なお世話だね!」
ケッ、なんだいなんだい!自分がちょーっとモテるからってそんなこと言いやがって。持たざる者の身になってみろよ!
「大丈夫だよ、私がいるから!」
そんな僕らの会話を聞いて、小鳥遊さんが僕の腕にピトッとくっついた。
「…………わっ、わたしも……ぃ……ので……」
逆側から、白撫さんもキュッと袖をつまんできた。顔は真っ赤で、さっきまでくっついていたとは思えない。
「…………う、うん……」
…………これ、もしかするともしかするんじゃない?白撫さん、僕のこと…………あるのかなぁ?
そう考えつつ、どう対応すればいいのかわからずとりあえず苦笑いしておく。
「…………次は、どうするんだ?」
「お、おう、えーとだな……」
春原君が、何故だか強い口調で翔太に聞く。
「今三時半だろ……なら、今から観覧車にでも並べば夕方あたりの光景が観れるんじゃないか?もうこの時間だとファストパス取れるかわかんないけど……つーか、観覧車にファストパスってあんの?」
「知らんがな」
近くにキャストさんがいたのでその人に聞いたところ、一応あるにはあるらしいけど、この時間だとやっぱり取れるかどうか怪しいらしい。
「ま、とりあえず行ってみようぜ!」
という翔太の言葉で、僕らは観覧車のファストパス発券所へ。
「……お、六時半からならあるけど、どうするよ?」
「僕はそれでいいけど」
「私も構いませんよ」
僕と白撫さんに続いて残りの三人も賛成したため、その場で六人分のファストパスを発券。お昼も過ぎたのに全員文確保できるって、そんなに人気ないんだろうか?
「んー、あと二時間半ちょいか……」
割と中途半端な時間だ。
「あそこで暇つぶしとくか」
翔太の視線の先にはカフェが。
「おっいいねいこいこ!」
「なに食べよーかな!」
キャラが似ているから好きなものも似ているのか、相模川さんと小鳥遊さんが我先にとお店に入っていった。さすがは女子高生、抜かりがない!
「こっちこっちー!」
二人は僕らが入店した時点で席についてメニューを広げていた。どれだけ速いんだよと思いつつ、同じテーブルに座る。ぴったり六人がけだ。
「おい良夜、お前どっちに座るかで今後の人生変わるぞ」
「なんでここがターニングポイントになってるんだよ」
相模川さんと小鳥遊さんが向かい合って座っているため、必然的にどちらにも二人ずつ座ることになる。
「よーく考えろよ?」
「いやだからなんでだよ」
僕は四人の中で一番前なので、奥側、つまりは小鳥遊さんの隣に座った。
「っはぁ〜……まだまだだね良夜」
相模川さんがため息を吐きながら悪態をついた。
「ほんとですね」
そう言った白撫さんが僕の隣に座った。
「えぇ……?」
なんで?僕何かした?これ間違いなの?普通じゃないの?奥から座るもんじゃないの?
「私にとっては大正解だよ!」
「単体で見れば及第点だ」
何故だかわからないけど、小鳥遊さんと春原君にもそう言われた。ほらね!モデルがそう言ってんだから僕の選択は正解だったんだ!へへん!
「ま、人それぞれってことだ」
翔太が諦めたいような顔つきで僕の正面に座った。つまりどういうことなんだろう。
「あの、一ノ瀬君」
「ん?」
白撫さんがメニューで口元を隠しながらもじもじしている。
「今、中途半端にお腹が空いているので、その……はんぶんこ、しませんか?」
「い、いいよ」
「あっ、ありがとうございます!ど、どれにしますか!」
白撫さんがメニュー表をテーブルに置き、あわただしくぱたぱたとページをめくっていく。
「いだっ!?」
えっなになに?今足踏まれたよ?というか潰されたよ、完全に故意だよこれ!
「りょーくん」
「なっななななんでしょうか」
グリグリと足の甲を踏まれながら、小鳥遊さんが笑顔で話しかけてくる。犯人はあなたですね?
「私ともはんぶんこしよ?お腹減ってるけどそこまでって感じだから」
「あっでも僕白撫さ」
「しよ?」
「わかったわかったから一旦落ち着こうか!」
そろそろ足が限界だ!
「ありがとっ!」
僕が足の痛みから解放されるとともに、小鳥遊さんがピトッと僕にくっついてきた。
「(わたし、ヤキモチ妬いちゃうよ……忘れないでね?)」
そう、耳元で囁かれた。やばいなんか新しい扉が開きそう!




