五十九話 ミッションインデートッシブル
「…………任務開始!」
他二グループが分かれて行動し始めたのを見て、俺達は白撫さん・春原グループの尾行を始めた。あいにく良夜・小鳥遊さんグループは速すぎて見失った。てへぺろ!
「なんかきもいね翔太」
「ごめんて」
今日俺たちは背景と同化しやすいように黒っぽかったり緑系統の服装を着てきた。ギリースーツとまではいかないが、まあ、どうにかなるだろう。
「そっちだ!」
「了解!」
二人は最初に乗るアトラクションを吟味しているようだ。翔太と白撫さんをくっつけたいこっちとしては、あまり密着しないアトラクションをせいぜい楽しんでもらいたいんだが……お、入るか?
「あ!見て!」
「ん?」
未亜が指さしたのは尾行対象とは全く違う方向。そこには、お揃いのカチューシャをつけた良夜と小鳥遊さんの姿が。
「……手分けしよう」
「おーけー、電話しながらいこう。私は向こう見るから」
「わかった。任務成功最低ラインは夜の観覧車に良夜と白撫さんをぶちこむことだ。そうだな……午後七時半にあの観覧車の前で。俺たちは、それぞれの相手を連れさらって引き剥がそう。あと、できればもう少し前から二人で楽しませてやりたい」
「了解」
「よし……行くぞっ!」
俺たちは同時に走り出す。でも、周りからは至って普通に見えるように。
そして、分かれてすぐに電話がかかってきた。
「もしもし。聞こえますか、オーバー」
「バッチリだ。というか、よくこんなテーマパークで繋がるな。オーバー」
「運がいいのかもね。オーバー」
「…………よし、対象の後ろ5メートルについた。もうすぐアトラクションに入ると思われるので、気づかれないように俺も乗り込む。オーバー」
いきなり大作戦だ。もちろんアトラクション内で問題を起こしてはいけないのでこれといってできることはないが、もし何かありそうなら電話して未然に防ごう。あ、ファストパスか。俺もとらないと。
「…………こっちはぴったりくっついて写真撮り始めたね。どうする?オーバー」
なんとまあ動きが早いこって。
「様子を見よう。オーバー」
「…………なにやら取材を受け始めた…………一旦内容を盗み聞きします。オーバー」
小鳥遊さんがカメラの前で宣言しなければいいんだが……
「…………どうだ?」
「…………問題発生。完全にアウト。対象、小鳥遊 奈夢がカメラの前でバッチリ言ってます。手を繋いで『そういうことです』って言ってます……あっ、良夜が若干イケメンだってこともバレました。オーバー」
なるほど、世間的に晒して、告白するときに断れなくするっていう作戦か。小鳥遊さん……策士!
「どうしようもないな……次に備えよう。こちらは今からアトラクションを楽しんでくる。オーバー」
「…………楽しんでくる?」
「おう…………うおっ!ひゅー!」
「…………なにやってんの?」
「ごめんて」
俺だって楽しみたいんだよ!




