六十話 からかい?
「どれに乗ろうか」
人混みを抜けて、今はベンチでマップを眺めている。まだ開園したばかりなのでここというところに人が多く集まっているわけじゃない……と願いたい。
「ん……やっぱりジェットコースター?」
「でも、これを見る限りずいぶん遠くじゃないかな」
小鳥遊さんは、「ほんとだ……」とちょっと残念そうにしながら、僕にぴったりとくっついて地図を見ている。
「…………あの、小鳥遊さん」
「なぁに?」
「その、少し離れてもらえると、助かるんですけど」
もうね、あれやこれやを肌で感じてしまうんですよ。5月も中旬に差し掛かり、気温も上がってきたこともあってお互い半袖の服を着ているから、肌と肌が触れ合うし、柔らかいアレをより鮮明に感じるんですよ。これは、色々困る。
「…………なんでー?」
しかし、小鳥遊さんは悪戯っぽく笑うばかりで離れてはくれない。
「だって……その」
「んー?」
これは…………誘われてるということはないね。公衆の面前だし。となると、僕は遊ばれてるんだね、そうなんだね!ならば、受けて立つ!
僕はかなり近い距離にある小鳥遊さんの耳に顔を近づけた。
「ふえ?」
「…………も、揉むよ?」
ふ、ふん!どうだってちょっと待って今我に帰ったんだけどこれまずくないかないきなりヤバイ発言してない?っていうか小鳥遊さんが実は気付いてないなら相当の変態だし逮捕だぞ?やばいやばい時よ遡れ!
だが、僕のそんな心からの願いは叶うはずもなく。
でも、それは良くも悪くも杞憂に終わった。
「…………ぅ………………その、人がいないところで…………なら」
小鳥遊さんは小さくなり、耳を赤くしながらも、僕にだけ聞こえる声でそう言った。
「…………え」
が、すぐにパッと離れ、立ち上がる。
「な、なーんてね!ほら、行こ!」
調子が戻った小鳥遊さんは「これも行きたいしあっちも行きたいな!」と、四方八方を見渡しながら言う。
「じゃ、じゃあ、まずはあっちから行こうか」
僕が指したのは『shooting ghost』というアトラクション。多分名前の通りだと思う。
「いいね、行こう行こう!」
意見が合致したところでそのアトラクションへ向かおうとして……
「あ、ちょっと待って。なんか、ファストパスっていうのがあるんだよね?」
「あー、うん」
「じゃあさ、後のアトラクション用にそれ取ってきたらいいんじゃないかな?」
提案すると、小鳥遊さんは微妙といった表情を浮かべた。
「うーん……それでもいいんだけど……私的には、アクティブに行くよりも二人でゆっくり楽しみたいかなぁ〜……なんて。ダメかな?」
手を自身の背中に回し、少し前屈みで可愛く訪ねてくる彼女。もちろん答えは一つしかない。
「全然いいよ。むしろ、僕もそっちのがいいかな」
「よかった!でも、あんまりにも待ち時間が長いようだったらまたかんがえよっ!」
微笑みながら行った彼女は「じゃあいこー!」と言って僕の手を取り、アトラクションへ向かって歩き出した。
【報告】
additional story1を諸事情により削除しました。一応、文章自体は残っています。
五十一話 プロローグ②の登場人物、小鳥遊 奈夢の容姿設定に変更がありました。ご確認ください。




