余談
「お前って実はすごかったんだな!」
「一ノ瀬くん、今度私に勉強教えて!」
「やっぱりやればできるじゃないですか!先生感激です!」
さて、僕は今クラスメイトと先生に囲まれている。なんでこうなったんだろうか。話は、数日前に遡る。
僕は今日、病院を退院した。リハビリも簡単に済み、特に後遺症とかもなし。とはいえまだまだ元の通りとは行かないので、優純さんが手配してくれたタクシーで寮に向かっていた。いや、タクシー……じゃないや。
真っ黒の、アレ。
そして、車内には、僕と運転手さんの二人のみ。
「…………あんた、ウチのお嬢とはどんな関係で?」
数十分間静かだった運転手さんが、急に口を開いた。
「どんな…………関係なんでしょうね…………」
まだ出会って二ヶ月だけど、お父さんには白撫さんを幸せにする許可をもらっていて……???ほんとにどういう関係?
「まあ、どんな関係だろうといいが……泣かせたら、容赦しんぞ?」
ヒェッ。
そんな絶体絶命の窮地に立たされながら、僕は寮に帰宅した。
今日は大事を取って休み、問題なければ明日から普通に登校してくれ、とのこと。
そして、何事もなく明日が来た。そう、ここまではよかった。
翌日、僕は何も知らずに、普通に登校した。
そういえば、と僕は学校では翔太くらいしか話す人がいなかったのを思い出し、自分の席に着く。
そして、黒板を見ると…………
『定期テスト一日目』
ッスゥー…………
「はぁ?」
もう、絶望である。あー終わった、終わった終わったはっはっは。いやー、やばいねははははははは‼︎と、もはや狂気の沙汰だ。
いや待てそんなことをしてる場合じゃない!実際問題どうしたらいいんだ?今から勉強する?間に合わんわ。カンニング?それこそありえない。残された道は……
「どうにか頑張ろう」
それからまもなくして、翔太が学校にやってきた。
「おはよう」
「おっすー」
翔太と白撫さん、相模川さんには今日登校すると伝えておいたので、特に驚くこともない。
それはそうと、翔太くん?
「いやおっすじゃないんだよね」
「まあ確かに挨拶はおはようだな」
「いやそうでもないんだよね!なにこれ定期テストって!教えてくれてもよかったじゃん!?まずいんだよ僕なんも勉強してないんだよ‼︎」
僕が必死な形相で訴えるが、翔太はどこふく風。
「ま、どうにかなるだろ、お前なら」
視線を僕の方に送らないながら、しっかりとした口調で翔太は言う。
この後白撫さんや相模川さんにも泣きついてみたものの、二人とも「いけます!また一位狙いましょう!」「赤点になったら、その時は仲間だぜ☆」だってよ。いや一位は無理だし赤点もやだよ!
そう、悲痛な叫びを心の中で上げた……上げたんだけど。
翌日。ウチの高校は二日目の午後にテストが返され、順位が張り出される。何度でも言おう。先生方、頑張りすぎでは?
さて、ここで冒頭に戻る。
なんていうか、すごく手応えを感じてたけど……
まさか、全部満点で白撫さんと並んで一位だとは。
「お前って実はすごかったんだな!」
「一ノ瀬くん、今度私に勉強教えて!」
「やっぱりやればできるじゃないですか!先生感激です!」
こうして、僕はクラスメイトと先生に囲まれているのだった。
「あーあーあーあー!誰か助けて!」
これだから勉強はしなかったんだよな!
僕はなんとか抜け出し、バレないように階段の踊り場に身を隠す。すると、アナウンスが流れた。
『一年三組一ノ瀬 良夜くん、白撫 まどかさん、すぐに校長室まで来てください。繰り返します––––」
あー、多分補習関連で話をされるんだろうな。
そう思いながら、僕は校長室へ向かった。ノックして入ると、白撫さんも来てから始めるということで、白撫さんが来るまで待つことになった。
「失礼します」
ドアの向こうから凛とした声が聞こえる。
「うむ、入ってくれ」
「はい、失礼します」
白撫さんが中に入ると、僕ら二人はソファへ座らされた。
「で、なんのお話ですか?」
ちょっと怖がりながら、僕は尋ねる。
「補習についての話だが」
「はい」
「一ノ瀬君、君は今回のテストで一位をとった。素晴らしい成績だ。君はこれから一人でも勉強できるだろう」
え、それって……
「もう、補習は終わりだ。君は自由になった。放課後は部活に勤しんでもいいし、友人と遊んでもいい。もちろん、成績は落とさないでくれたまえ。話は以上だ」
「そう、ですか……」
僕はあからさまに残念な声音で返事をしてしまった。つまり、寮は出て行かなければならない、白撫さんと合法的に一緒にいられないということ。
「時間をとらせてしまってすまないね。もう帰ってもらってもいいぞ」
「はい……」
終始、白撫さんは黙ったままだった。が。
「では、失礼しました」
そう言って、すぐに出て行こうとした。
「あぁ、待ってくれ」
「「はい?」」
今度は呼び止めた校長先生の声に、僕らは困惑を隠せない。
「まあ、君らがいいのいうのであれば、だが…………
誰も、出て行けとは言っていないし、補習禁止だとは言っていないからな。寧ろ、推進させてもらうよ。色々理由はあるが…………君たちの関係は、個人的にも、学校的にも……支援する道しか無いからね。以上だ」
そう一方的に言われて、なにがなんだかわからないまま僕らは校長室からおしだされてしまった。でも、わかることが一つ。
「……白撫さん、まだ、僕に勉強をおしえてほしいな」
「ええ、もちろんです」
ここまで読んでいただきありがとうございます。
はいセーーーーフ!!
いやぁ、危ない危ない。
どうもこんばんは、村人Bです。
今日は忙しいので、少しだけ。
つぎから、三章に入ります。全く話は浮かんでいません。
まあ、週一は守って行こうと思いますので、どうぞよろしくお願いします!ではでは!
村人Bでした!ばいばいヾ(・ω・`)