第八話 恐山
はじめまして、大森林総史です。
本能寺の変の黒幕って誰なんだろう?
そんな疑問から、歴史パロディを書いてみました。
宜しければ、お読みいただけると嬉しいです。
「次はヨッチャンです!」
コヨミは元気よく言った。
しかし――
「ううう……」
のだが、腹を押さえてうずくまった。
「どうしたの!?」
「痛い……」
「仮病でしょ!?」
「違うわい!」
のだは涙目で叫んだ。
「よく考えてみよ! 例えばじゃ! 未来の世界で、わしが学校の先生だとする!」
「うん」
「ヨッチャンは、教育委員会の会長じゃ!」
「うん」
「その教育委員会の会長を、追放したようなもんじゃぞ!?」
「……」
コヨミは少し考えた。
「妙に納得した」
「じゃろう!?」
のだは、腹を押さえながらうなずいた。
その隣では、みっちゃんが黒い覆面を被っていた。
「何その格好」
「元主君に会わす顔がありません」
「そこまで!?」
「ありますか?」
「ないかも」
みっちゃんは静かにうつむいた。
---
すると毛利家の三人もやって来た。
モトハル。
タカカゲ。
テル。
「我らも同行いたしましょう」
テルが微笑んだ。
「え?」
「公方様にご挨拶したく思います」
その瞬間。
モトハルの顔が引きつった。
タカカゲの顔も引きつった。
「どうしたの?」
コヨミが聞く。
「べ、別に」
モトハルは震えていた。
「武者震いじゃ!」
タカカゲが冷静に言う。
「兄上」
「なんじゃ」
「着物が左右逆です」
「なにぃ!?」
慌てて直し始めるモトハル。
「お主こそ顔色が悪いぞ!」
「気のせいです」
タカカゲも真っ青だった。
コヨミは思った。
(全員ビビってる……)
そしてテルを見る。
いつも通りだった。
お茶の水筒。
薬袋。
穏やかな笑顔。
(この人が一番大物かもしれない……)
---
一行はヨッチャンのいる寺へ向かった。
しかし。
「公方様はおられません」
寺の僧が言った。
「ええっ!?」
「どこにいるの!?」
「恐山でございます」
全員が固まった。
「恐山?」
「地獄門にて修行中でございます」
のだ。
みっちゃん。
モトハル。
タカカゲ。
四人同時に血の気が引いた。
「帰ろう」
「帰ろう」
「帰ろう」
「帰ろう」
「ダメ!」
コヨミが叫んだ。
「黒幕探しよ!」
四人は泣きそうな顔をした。
テルだけが微笑んだ。
「参りましょう」
---
恐山。
木々は消えた。
岩だらけの荒れた大地。
灰色の空。
冷たい風。
そして――
ギャアアアアアアアア!!
大量のカラス。
空を埋め尽くしていた。
「ひっ」
のだが悲鳴を上げた。
「怖い!」
みっちゃんが震える。
モトハルは刀を握る。
タカカゲは無言で数珠を握る。
コヨミも顔が青くなった。
「ねぇ……」
「なんじゃ……」
「引き返さない?」
四人が同時に叫んだ。
「ウム!!」
---
その時。
テルが振り返った。
「もう遅いですよ」
「え?」
全員が後ろを見る。
ゴゴゴゴゴ……
大きな音が響いた。
来た道が崩れていた。
岩が山のように積み重なっている。
「ぎゃあああああああ!!」
五人の悲鳴が響いた。
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「落ち着いてください」
テルはお茶を飲んだ。
「先へ進めば、どこかへ下りられるかもしれません」
「本当か?」
「分かりません」
「分からんのかい!」
全員が泣いた。
---
さらに進む。
さらに進む。
すると――
ゴオオオオオ……
赤い光。
熱気。
マグマだった。
「地獄じゃー!!」
のだが叫ぶ。
「帰りたい!」
みっちゃんも叫ぶ。
「わしもじゃ!」
モトハルも叫ぶ。
「私もです!」
タカカゲも叫ぶ。
テルだけが冷静だった。
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そして。
マグマの川の向こう。
ひとりの男が立っていた。
白髪。
異様な法衣。
大きな数珠。
まるで祈祷師のような姿。
男はゆっくり振り返る。
その目が一行を見た。
そして。
「おお」
男は言った。
「のだではないか」
のだの顔が引きつった。
「ヨッチャン……!?」
コヨミは目を見開いた。
室町幕府最後の将軍。
足利のヨッチャン。
ついに発見である。
しかし。
コヨミは思った。
(てか、室町幕府最後の将軍が足利のヨッチャンってだけでもおかしいのに、祈祷師になってるって何……?)
深いため息が出た。
――第九話へ続く。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
次話は8/27 20:00に投稿予定です。
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