第九話 祈祷師 足利のヨッチャン
はじめまして、大森林総史です。
本能寺の変の黒幕って誰なんだろう?
そんな疑問から、歴史パロディを書いてみました。
宜しければ、お読みいただけると嬉しいです。
マグマの向こうに立つ、不気味な装束の男。
真っ赤な目。
白い髪。
口元には不敵な笑み。
どう見ても妖怪である。
しかし、その男は満面の笑みで手を振った。
「おおーっ! のだではないか!」
「ひぃっ!」
のだは飛び上がった。
「公方様ぁぁぁ!!」
思わず土下座する。
みっちゃんも慌てて土下座。
モトハルは震えながら
タカカゲは白目をむきながら、
「臨兵闘者皆陣列在前行……」
を、唱え続けていた。
テルだけがいつも通りだった。
コヨミもさすがに少し怖い。
(なんでこの人だけホラー作品なの……?)
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ヨッチャンはニコニコしながら言った。
「まあ、座れ座れ」
そう言うと、黒い卵を取り出した。
殻まで真っ黒である。
「地獄名産温泉たまごじゃ」
一同は固まった。
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のだ
「毒殺……?」
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みっちゃん
「やはり私も許していただけていないのか……」
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モトハル
「一、二、三……七個あるーっ!」
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タカカゲ
「臨兵闘者皆陣列在前行……」
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ヨッチャン
「なんでそうなるんじゃ⋯」
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テルは静かに卵を受け取った。
「では、お言葉に甘えて」
殻をむく。
中から現れたのは、白い粉をまとったような卵。
ますます怪しい。
五人の視線が集中する。
テルは一口食べた。
「……うっ!」
固唾を飲む一同。
「美味い!!」
全員ずっこけた。
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「じゃろう!」
ヨッチャンは、得意げだった。
テルは二個目を食べ始める。
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「ところで、のだ」
ヨッチャンは穏やかに言った。
「本能寺で討たれたと聞いたが、無事で何よりじゃ」
「もったいなきお言葉!」
のだは、再び土下座した。
「みっちゃん」
「は、はい!」
「謀反はいかんぞ」
「申し訳ございません!」
みっちゃんも土下座した。
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モトハル
「生きた心地がせん……」
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タカカゲ
「臨兵闘者皆陣列在前行……」
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コヨミ
「まだ言ってる……」
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そして本題に入った。
「公方様!」
のだが顔を上げる。
「本能寺の黒幕をご存知ではありませんか!」
ヨッチャンは首をかしげた。
「わしが黒幕?」
「疑われるとは思います!」
「じゃろうな」
ヨッチャンは苦笑した。
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「だがな、のだ」
「はっ!」
「わしはお主を暗殺したいなど、一度も思ったことはない」
「公方様……」
「そもそも、わしにそんな力があれば苦労しておらん」
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のだは、言葉に詰まった。
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ヨッチャンは空を見上げた。
「足利将軍家はな」
「……」
「僧だったわしを担ぎ出した時点で、ほぼ終わっておった」
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静かに語る。
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「副将軍の件など、色々あった」
「申し訳ございません……」
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「よい」
ヨッチャンは笑った。
「今なら分かる」
「?」
「誰かを思い通りに動かそうとしたのが、間違いだった」
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コヨミは少し驚いた。
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「将軍といえど人は人」
「……」
「立場が人を強くするのではない」
「……」
「人が人を支えるから強くなれるのじゃ」
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のだは、目を潤ませた。
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「公方様……」
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「一番よく分かっておるのは、お主ではないのか?」
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のだの目から、涙がこぼれた。
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「上洛で、精一杯でございました……」
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「じゃろう?」
ヨッチャンは笑った。
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「誰も引き受けてくれなんだ」
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「……」
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「京まで、連れてきてくれたのはお主だけじゃ」
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そして。
深く頭を下げた。
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「感謝しておる」
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のだは号泣した。
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「うわぁぁぁん!! 公方様ぁぁぁ!!」
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思わず抱きつく。
みっちゃんも泣きながら飛びつく。
モトハルも泣き始める。
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タカカゲ
「臨兵闘者皆陣列在前行……」
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コヨミ
「この人達は……」
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テルは、四個目の卵を食べていた。
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しばらくして。
コヨミが咳払いした。
「それで、黒幕は?」
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ヨッチャンは考え込む。
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「見当もつかぬな」
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「ええぇぇぇ!?」
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「じゃが」
ヨッチャンは、ニヤリと笑った。
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「戦国一の知恵者に聞いてみるか」
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のだ達は、顔を見合わせた。
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「まさか……」
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「モトナリ公(毛利元就)じゃ」
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モトハル
「父上!?」
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タカカゲ
「父上は亡くなっておりますが……」
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ヨッチャンは立ち上がった。
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「わしは祈祷の修行をしておった」
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不気味な風が吹く。
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「キエェェェェェイ!!」
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全員飛び上がった。
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モトハル
「出るのか!?」
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みっちゃん
「本当に出るのか!?」
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のだ
「やっぱり帰ろう!」
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タカカゲ
「臨兵闘者皆陣列在前行!!」
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コヨミ
「正気に戻って!!」
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テルはお茶を飲んだ。
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「楽しみですね」
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コヨミは頭を抱えた。
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次回――
戦国一の知恵者、毛利モトナリ降臨。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
次話は8/29 20:00に投稿予定です。
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