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第六話 猿はほんとにサルだった

はじめまして、大森林総史です。

本能寺の変の黒幕って誰なんだろう?

そんな疑問から、歴史パロディを書いてみました。

宜しければ、お読みいただけると嬉しいです。

「ヒデか……」


ヤスとの別れを終えた帰り道。


のだは遠くを見つめながら呟いた。


「どうしたのですか?」


コヨミが尋ねる。


「いやな。ヒデのことを思い出しておった」


のだは少し笑った。


「奴は百姓の出でな。身分も何もなかった。しかし頭の回転が速く、機転が利き、どんな難題でも乗り越える男じゃった」


「じゃあ黒幕の可能性は?」


「無いじゃろ」


即答だった。


「え?」


「奴がわしを討つとは思えん」


その言葉には、妙な確信があった。


「まあ、会ってみれば分かるじゃろ」


そう言ってのだは、歩き出した。


---


その頃。


中国大返しの真っ最中。


山道をとんでもない速度で軍勢が進んでいた。


「速っ!?」


コヨミは思わず声を上げた。


兵士達が全力疾走している。


とにかく速い。


速すぎる。


「これならマラソンで金メダル取れるかも……」


「当然じゃ。弔合戦じゃからな」


のだは腕を組んだ。


「ところでヒデはどこです?」


「人がおるということは……奴はもっと前じゃろう」


「人?」


コヨミは首を傾げた。


---


隊列の先頭へ向かう。


すると。


犬。


猫。


タヌキ。


キツネ。


イノシシ。


さらに熊。


様々な獣人達が走っていた。


「は?」


コヨミは立ち止まった。


意味が分からない。


そして最前列。


二匹のサルが先頭で叫んでいた。


「行きますよー!!」


ヒデ 

挿絵(By みてみん)


「殿の弔合戦ですぞー!!」


コイチロー 

挿絵(By みてみん)


「一歩でも速くー!!」


「おおー!!」


獣人軍団が雄叫びを上げる。


コヨミの口が開いたまま閉じない。


「ま、まさか……あれが……」


「うむ」


のだは頷いた。


「ヒデと弟のコイチローじゃ」


「えぇぇぇぇぇぇ!?」


コヨミ絶叫。


「ま、まさか本当にサルだったなんて……」


「失礼じゃぞ!」


のだが即座に反論した。


「奴は獣人じゃ!サルではない!」


「そこ大事ですか!?」


「サルは愛称じゃ!」


「十分サルじゃないですか!」


---


のだは大きく息を吸った。


「サルー!!」


「いや呼ぶんかい!?」


コヨミがツッコむ。


---


その瞬間。


先頭を走っていたヒデが急停止した。


「!?」


耳がピクリと動く。


「今のは……」


ヒデが振り返る。


「殿の声!!」


次の瞬間。


ものすごい勢いで飛んできた。


本当に飛んできた。


「殿ぉぉぉぉぉ!!」


「うおっ!?」


のだに抱きつくヒデ。


そのまま大号泣。


「生きておられたのですねぇぇぇ!!」


「うわぁぁぁん!!」


コイチローも泣きながら飛び込んでくる。


「兄上ぇぇぇ!!」


「何故お前も泣く!?」


「感動したので!!」


「そうか!」


---


コヨミは呆然としていた。


「可愛いやつじゃのう」


のだはヒデの頭を撫でる。


ヒデはさらに泣いた。


---


しばらくして。


コヨミは本題を切り出した。


「ヒデさん」


「はい?」


「本能寺の黒幕って誰だと思います?」


ヒデは目を丸くした。


「私ですか?」


「そうです」


「滅相もございませぬ!」


ヒデは即座に土下座した。


「殿は獣人である私を召し抱え、城持ち大名にまで取り立ててくださったお方です」


涙が溢れる。


「ご恩は大層あれど、恨みなど一つもございませぬ」


「じゃよなー」


のだはうんうん頷いた。


「お主が一番機転が利き、どんな場面にも対応できたからのう」


ヒデ感涙。


コイチロー感涙。


後ろの獣人達も感涙。


熊まで泣いていた。


---


のだは静かに言った。


「ヒデ」


「はっ」


「わしはこのまま表舞台から姿を消す」


ヒデの表情が固まる。


「わしの子供達は……器が足りん」


「殿……」


「三法師を跡取りにして実権を握れ」


「なっ!?」


ヒデは青ざめた。


「滅相もない!」


「いいのだ」


のだは静かに笑った。


「わしは恨まれておる」


「……」


「お主ならば、また違う世を作れるであろう」


沈黙。


「ちなみに、のだがいいのだはダジャレではないぞ」


「そこ言わなくてもいいのに……」


コヨミが呟いた。


---


みっちゃんも前へ出た。


「ヒデ」


「はっ」


「私の兵を託します」


そう言って愛用の火縄銃を差し出す。


「私が消えれば混乱しているでしょう」


「みっちゃん……」


「降伏させてくだされ」


ヒデの目から再び涙が溢れた。


「殿……」


「みっちゃん……」


三人は抱き合った。


---


コヨミは額を押さえる。


「またかよ……」


そして叫んだ。


「のだ!!」


「なんじゃ?」


「黒幕は!?」


半ギレである。


---


のだは首を傾げた。


「なんじゃ?」


「感動の再会じゃぞ?」


「そうじゃそうじゃ!」


みっちゃんも頷く。


「いい話でしたなぁ」


ヒデまで同意した。


「違う!!」


コヨミ絶叫。


「犯人探し!!」


---


ヒデは少し考えた。


「本能寺の黒幕ですか……」


腕を組む。


「うーむ……」


しばらくして口を開いた。


「見当もつきませぬ」


「ですよねー!」


コヨミが崩れ落ちる。


「ただ」


ヒデは続けた。


「毛利方には、知恵者のタカカゲがおります」


「タカカゲ?」


「小早川タカカゲ(小早川隆景)です」


ヒデは真剣な顔になった。


「お身内より敵を疑う方が自然かもしれませぬ」


「ほう?」


「みっちゃんがそうなったように、のだ様を討てば謀反人になります」


「確かに」


「人心を失い、その後、のだ家臣団をまとめられなければ再び戦乱の世です」


ヒデは首を振った。


「我ら味方には利がありませぬ」


「なるほど……」


コヨミは頷いた。


---


そして。


全員が満足そうな顔をした。


「うむ!」


のだ。


「うむ!」


みっちゃん。


「うむ!」


ヒデ。


「うむ!」


コイチロー。


---


コヨミは頭を抱えた。


「なんでみんな誇らしげなんですかぁぁぁ!!」


犯人探しは、またしても振り出しに戻った。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

次話は8/23 20:00に投稿予定です。

続きも読んでもらえると嬉しいです。


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