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第五話 天下人も山越えは命がけ

はじめまして、大森林総史です。

本能寺の変の黒幕って誰なんだろう?

そんな疑問から、歴史パロディを書いてみました。

宜しければ、お読みいただけると嬉しいです。

 山の中。


 男の悲鳴が響いていた。


「ギャアアアアア!!」


 ダダダダダダダッ!!


「死にたくないよー!!」


 刀を振り回しながら全力疾走する男。


 ヤス(徳川家康)だった。


挿絵(By みてみん)


「殿ぉぉぉぉ!!」


挿絵(By みてみん)


 後ろからタダカツ(本多忠勝)が叫ぶ。


「お待ちくだされぇぇぇ!!」


「無理じゃあああ!!」


 さらに後ろ。


 ハンゾー(服部半蔵、忍者)が木から木へ飛び移る。


挿絵(By みてみん)


「速い……!」


「殿が速すぎる……!」


 その隣ではヤスマサ(榊原康政)が苦笑していた。


挿絵(By みてみん)


「三方ヶ原の戦いもあの調子で逃げおおせましたからな」


「経験者か!」


 コヨミがツッコむ。


 そして。


 マサノブ(本多正信)が突然立ち止まった。


挿絵(By みてみん)


「むむっ……」


「どうしました?」


 コヨミが聞く。


「予知が……」


「予知?」


「見えます……」


 一同が固唾を呑む。


「鹿の兜の男(真田ユキムラ)に追いかけられ……」


挿絵(By みてみん)


「うむ」


「また発狂して逃げる殿の姿が……」


「未来じゃな」


「未来ですね」


 誰も否定しなかった。


 その頃。


「ギャアアアアア!!」


 ヤスはまだ逃げていた。


「ヤスは良い家臣を持っておるのう」


 のだが、しみじみ言う。


「ほんとに」


 みっちゃんも頷く。


「なぁ、みっちゃん」


「はい?」


「すまんかったのう」


「何がです?」


「色々じゃ」


 のだは頭を掻いた。


 すると。


「また謀反しようかな」


 みっちゃんが呟いた。


「すまん!!」


 ドゲェッ!!


 のだが、即座に土下座した。


「殿」


「許してくれ!」


「殿」


「本当にすまん!」


「殿」


「許してぇぇ!」


「冗談です」


 のだが顔を上げる。


「え?」


 みっちゃんは苦笑した。


「顔を上げてくだされ」


「みっちゃん……」


「殿」


「わしを殿と呼んでくれるのか!?」


「当然でございます」


 みっちゃんは頭を下げた。


「謀反を起こしておいて何ですが」


「うむ」


「改めて忠誠を誓いまする」


「みっちゃーん!」


「のだー!」


 二人は抱き合った。


 コヨミは遠い目をした。


「また始まった……」


 その時。


「ギャアアアアア!!」


 ヤスがこちらへ飛び込んできた。


 のだが、笑顔で手を振る。


「よ! ヤス!」


 ヤスが固まる。


「む……」


「うむ」


「のだ様の幽霊が見える」


「違――」


 のだ、が言いかける。


 しかし。


「名案!」


 突然閃いた。


「そうじゃ!」


「何がです?」


「幽霊じゃ!」


 コヨミは頭を抱えた。


 のだは、構わず続ける。


「ヤスよ」


「は、はい」


「生前はすまなかったのう」


 ヤスは首を傾げた。


「何の事でございます?」


「その……」


 のだは目を逸らした。


「奥方と子供を斬れと言ったり……」


「ああ」


「戦のたびに連れ回したり……」


「はい」


「同盟者なのに家臣扱いしたり……」


「ああ」


 ヤスはあっさり頷いた。


「妻と子供なら、平民として生かしております」


「そーなの!?」


 のだが驚く。


「そうしろと、影で言ったではありませんか」


「あ」


 のだが固まる。


「娘がな」


「はい」


「ヤスなんぞ、攻め滅ぼせと聞かなくてな」


「なるほど」


「そうせざるを得なかった」


「存じております」


 ヤスは微笑んだ。


「他の事も同じでございます」


「む?」


「のだ様の後ろ盾あってこそ」


「うむ」


「三カ国の大名になれました」


 静かな声だった。


「全て感謝しております」


 のだの目に涙が浮かぶ。


「ヤスぅ……」


「のだ様……」


 ポロリ。


 涙が落ちた。


 ヤスが青ざめる。


「幽霊が泣いたぁぁぁぁ!!」


「違う違う!」


「成仏してくださいぃぃぃ!!」


 そして再び逃げ出した。


「ギャアアアアア!!」


「殿ぉぉぉぉ!!」


「お待ちくだされぇぇぇ!!」


 家臣団も追いかけていく。


 山に悲鳴が響き渡った。


 静かになった頃。


 コヨミは腕を組んだ。


「ますます分からなくなったわ⋯」


「何がじゃ?」


 のだが聞く。


「黒幕ですよ」


 すると。


 のだの顔が真面目になった。


「コヨミ」


「はい?」


「わし亡き後」


「はい」


「最も力を付けそうなのはヒデ(豊臣秀吉)じゃ」


 コヨミは驚いた。


「なぜ分かるんです?」


 のだは空を見上げた。


「父親じゃからの」


「え?」


「わしの息子共は」


 少し寂しそうに笑う。


「天下を治める器ではない」


 コヨミは黙って聞いていた。


「代わる者がおるとすれば」


「ヒデ……」


「うむ」


 のだは頷く。


「あやつは、人を取り込むのが上手い」


「なるほど」


「家臣も文武揃っておる」


「うん」


「そして何より」


 のだの目が鋭くなる。


「動きが早い」


 コヨミは教科書を開いた。


 そこには。


 次なる容疑者の名。


「ヒデ……」


 そして。


 ヤスとの別れ際の言葉を思い出す。


『本能寺の直前……妙な噂を聞きました』


『ヒデの動きが……少々早すぎる』


 コヨミは顔を上げた。


「次はヒデですね」


「うむ」


「参るか」


 こうして一行は、


 最有力容疑者、ヒデの元へ向かうのだった。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

次話は8/21 20:00に投稿予定です。

続きも読んでもらえると嬉しいです。


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