第四話 最大の容疑者! 明智のみっちゃん
はじめまして、大森林総史です。
本能寺の変の黒幕って誰なんだろう?
そんな疑問から、歴史パロディを書いてみました。
宜しければ、お読みいただけると嬉しいです。
「というわけで」
コヨミは腕を組んだ。
「最初の容疑者です」
「うむ」
のだが頷く。
「最大の容疑者じゃな」
「ほんとに会うんですか?」
「会う」
「殺されません?」
「たぶん大丈夫」
「その『たぶん』が怖いんですけど⋯」
タイムマシンは天正十年へと向かった。
そして――
山中。
どこからか怒鳴り声が聞こえる。
「味方が集まらーん!!」
バァン!
鉄砲の音が響いた。
「きゃっ!?」
コヨミが飛び上がる。
「なんですか今の!?」
「みっちゃんじゃな」
「みっちゃんなんですか!?」
木陰から様子を窺う。
そこには一人の男がいた。
鉄砲を振り回しながら叫んでいる。
「なんでじゃあああ!!」
バァン!
「誰か来い!」
バァン!
「わし一応勝ったじゃろ!?」
バァン!
「なんで誰も来んのじゃあああ!!」
コヨミは絶句した。
「知将のイメージが崩れていく……」
「わしも初めて見た」
「あなたも初めてなんですか?」
その時だった。
「誰じゃ!?」
みっちゃんがこちらを見た。
鉄砲を向ける。
「怪しい奴らめ!」
「落ち着いてください!」
コヨミは慌てて両手を上げた。
「未来から来ました!」
「もっと怪しいわ!!」
「確かに⋯」
のだが頷いた。
「あなたは黙っててください!」
数分後。
なんとか誤解は解けた。
みっちゃんは大きくため息を吐く。
「まったく……」
「大変そうですね」
コヨミが言う。
「大変じゃ!」
みっちゃんは即答した。
「評定では蹴られる!」
「うむ」
「母上は死ぬ!」
「うむ」
「ヨッチャン様(足利義昭)は追放される!」
「うむ」
「腹が立たん方がおかしいじゃろ!?」
「それはまあ……」
コヨミも少し同情した。
「だから本能寺を?」
みっちゃんは黙る。
そして。
「……そうじゃ」
そう答えた。
「恨みはあった」
静かな声だった。
「じゃがな」
「?」
「本当にあそこまでやるつもりは無かった」
みっちゃんは懐から紙を取り出した。
「これじゃ」
コヨミが受け取る。
そこには。
『今なら、ほんのーじにいる、のだを討てる』
『おぬしもうらみがあろう?』
と書かれていた。
「矢文……?」
「うむ」
「誰からです?」
「分からん」
みっちゃんは首を振った。
「気付けば届いておった」
「それで動いたんですか?」
「……動いてしまった」
後悔が滲む声だった。
「わしは黒幕ではない」
「え?」
「本当に知らんのじゃ」
その瞬間。
「みっちゃん」
今まで黙っていた、のだが立ち上がった。
「ん?」
「すまん!!」
ドゲェッ!
勢いよく土下座した。
みっちゃんが固まる。
コヨミも固まる。
「……は?」
「本当にすまん!!」
「誰じゃお前!?」
「のだじゃ!!」
みっちゃんの目が飛び出した。
「のだぁぁぁぁぁ!?」
「評定で蹴ってすまん!」
「そこ謝るんかい!」
「母様の件もすまん!」
「そこもかい!」
「公方様の件もすまん!」
「だからそこなんかい!」
コヨミは腹を抱えていた。
「歴史の教科書に載ってない……!」
「本当にすまん!!」
のだはさらに頭を下げた。
「許してくれ、みっちゃん!」
「いや……」
みっちゃんは頭を掻いた。
「わしも悪かった」
「みっちゃん!」
「のだ!」
二人はがっしり握手した。
コヨミは思った。
(和解した……)
(戦国時代ってこんな感じだっけ……)
そして。
「という事は」
コヨミは言った。
「みっちゃんも黒幕を知らない」
「うむ」
みっちゃんは頷いた。
「わしは利用されたのかもしれん」
コヨミとのだは顔を見合わせた。
容疑者が一人消えた。
だが。
謎は深まった。
「次は誰じゃ?」
のだが聞く。
コヨミは教科書を開いた。
そして。
「徳川家康です」
「ヤスか」
(ヤス? のだはヤスって呼んでるの⋯?)
「こほん⋯ちょうど伊賀越えの最中ですね」
みっちゃんが苦笑する。
「今頃必死に逃げとるじゃろうな」
こうして一行は、
次なる容疑者――
ヤスの元へ向かうのだった。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
次話は8/19 20:00に投稿予定です。
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