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第十九話 運命

はじめまして、大森林総史です。

本能寺の変の黒幕って誰なんだろう?

そんな疑問から、歴史パロディを書いてみました。

宜しければ、お読みいただけると嬉しいです。

のだは腕を組み、しばらく考え込んだ。


「公方様を受け入れた理由⋯それは⋯」


一同が息を呑む。


戦国最大の謎が今、明かされようとしていた。


のだは静かに口を開く。


「忘れた」


一同


「ズコーッ!!」


コヨミ


「何言ってんのよ!?」


のだ


「わし五十じゃぞ!」


「二十年も前の事など覚えておらんわ!」


「ガッハッハ!」


コヨミ


「のぉぉぉだぁぁぁっ!!」


顔を真っ赤にして拳を振り上げる。


のだ


「待て待て!」


「怒るな!」


「そうじゃな⋯」


頭を掻きながら考える。


「困っている偉い方が頼ってきたから」


「では、いかんか?」


「わしらしくないか?」


コヨミ


「知らないわよ!」


のだ


「うーむ⋯」


少し真面目な顔になる。


「当時を思い返せば」


「京へ行く理由が欲しかったのかもしれぬ」


コヨミ


「京?」


のだ


「未来で言う東京じゃ」


「首都を押さえたいと思うのは当然じゃろう?」


コヨミ


「そ、そうね⋯」


みっちゃんが頷く。


「確かに」


「公方様の上洛は、格好の大義名分になりますな」


のだ


「じゃが」


苦笑する。


「今のわしなら断ったかもしれぬ」


コヨミ


「どうして?」


のだ


「京は荒れておった」


「上洛を快く思わぬ大名も多かった」


「わしは美濃と尾張を治めて間もない」


「今思えば恐ろしい博打じゃ」


みっちゃん


「よく決断なされましたな」


のだ


「無謀とも言うのう」


コヨミ


「でも、のだの力なら大丈夫だったんじゃないの?」


のだ


「そんな事はない」


首を横に振る。


「何度も死にかけておる」


「金ヶ崎」


「長島一向一揆」


「武田の侵攻」


「どれも紙一重じゃ」


みっちゃん


「今思えばよく生き残れましたな」


のだ


「本当じゃ」


「思い出すだけで背筋が寒いわ!」


豪快に笑う。


コヨミ


「そんなに危なかったの?」


のだ


「金ヶ崎では袋の鼠」


「お市が知らせてくれねば終わっておった」


「長島では鉄砲で撃たれた」


「武田の侵攻では」


表情が少し曇る。


「ヤスですら敗れた」


「シンちゃん(武田信玄)が亡くならねば」


「歴史は変わっておったやもしれぬ」


コヨミ


「そうなんだ⋯」


のだ


「桶狭間でも言ったじゃろう」


「運じゃと」


コヨミ


「のだは運が良かったのね」


のだは少し空を見上げた。


「そうかのう」


「裏切りに遭い続ける人生が」


「本当に運が良いと言えるかの」


コヨミは言葉を失う。


のだ


「じゃが」


「天命のままに生きてきた気もする」


「運命なのかもしれぬな」


コヨミ


「運命⋯」


のだ


「そして」


「本能寺で討たれるのも」


「また運命なのじゃろうか」


静寂が流れる。


コヨミ


「じゃあ黒幕は⋯?」


のだ


「やはりおらぬのかもしれぬ」


「わしが躍進したのも運命」


「本能寺で討たれるのも運命」


「全ては流れのままに」


コヨミ


「そうなのね⋯」


少し考える。


そして。


「あんた生きてるじゃない!」


のだ


「うむ」


コヨミ


「首に刃を当てたのに!」


「斬れなかったじゃない!」


のだ


「だって怖いもん」


コヨミ


「⋯⋯」


のだ


「死ぬの怖い」


コヨミ


「妙に人間っぽいわね⋯」


のだ


「死ぬのが怖くない人間などおるか」


「一向門徒達は極楽浄土を信じて突撃してきたがの」


ふとケンニョを見る。


「ケンニョ殿」


「本当に極楽浄土へ行けるのですか?」


ケンニョ


「ぶふっ!!」


盛大にお茶を吹き出した。


みっちゃん


「そういえばコヨミ殿」


「私は歴史上どうなっております?」


コヨミ


「あー⋯」


目を逸らす。


みっちゃん


「嫌な予感がしますな」


コヨミ


「落ち武者狩りに⋯」


みっちゃん


「え」


コヨミ


「遭うって」


のだ


「それは嫌じゃ!!」


みっちゃん


「嫌過ぎますー!!」


二人は顔面蒼白になる。


コヨミ


「あ、あんた達ねぇ⋯」


すると。


のだとみっちゃんは同時に土下座した。


「コヨミ殿!!」


「ありがとうございます!!」


コヨミ


「へ?」


のだ


「わしの命を救ってくれた!」


みっちゃん


「感謝してもしきれませぬ!」


コヨミ


「や、やめてよ!」


二人はなおも頭を下げ続ける。


その様子を。


ケンニョは静かに微笑みながら見守っていた。


長き乱世を生きた者達。


未来を知る少女。


そして。


本能寺の黒幕を追う旅は。


静かに終わりへ近づいていた。


つづく。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

次話は9/18 20:00に投稿予定です。

続きも読んでもらえると嬉しいです。


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