最終話 未来へ
はじめまして、大森林総史です。
本能寺の変の黒幕って誰なんだろう?
そんな疑問から、歴史パロディを書いてみました。
宜しければ、お読みいただけると嬉しいです。
本願寺の出口。
別れの時が近づいていた。
ケンニョ
「のだ殿はこれからどうなされるのです?」
のだは空を見上げる。
「わしは一度死んだ身」
「幸いにもコヨミのおかげで命を取り留めた」
「これより先は、表舞台から退こうと思う」
みっちゃんも頷く。
「私もご一緒いたします」
ケンニョ
「そうですか」
「お二人のご健康を祈っておりますぞ」
のだ
「ケンニョ殿も達者でな」
コヨミが尋ねる。
「ねぇ、のだ」
「これからどうするの?」
のだは少し笑った。
「公方様の下で修行じゃ」
「そして」
「オブカツとゆっくり話したいのう」
みっちゃん
「私もお供いたします!」
コヨミ
「本当に歴史の表舞台から消えちゃうの?」
のだ
「歴史改変する訳にはいかぬ」
「それに」
「わしが本能寺で討たれるのが運命なら」
「従うべきじゃろう」
「是非に及ばずじゃ」
コヨミ
「そうね⋯」
少し考える。
「って!」
「あなた、死ねなかったじゃない!」
のだ
「だって怖いもん」
コヨミ
「⋯」
のだ
「二回目じゃ」
コヨミ
「自慢げに言うな!」
のだは豪快に笑う。
「一度は覚悟を決めた」
「じゃが怖かった」
「是非に及ばずじゃ」
コヨミ
「その言葉そういう意味じゃないでしょ!?」
のだ
「そうかの?」
みっちゃん
「違うと思います」
のだ
「そうか」
しばらく笑い声が続く。
やがて。
のだは、少し真面目な顔になる。
「この旅で分かった」
「わしは怖かった」
「怖かったからこそ苛烈になった」
「それは間違いじゃった」
「だから修行し直すのじゃ」
みっちゃん
「私もお供いたします!!」
コヨミ
「はいはい」
「じゃあ送ってあげる」
「ヨッチャンがいる恐山まで⋯」
のだ
「は、腹が痛い⋯」
みっちゃん
「ず、頭痛もしますな⋯」
コヨミ
「テルちゃんの薬飲みなさい!」
「是非に及ばずで乗る!」
のだ
「便利な言葉じゃのう」
――――――
恐山。
ヨッチャンの待つ地。
のだ
「さて」
「名残惜しいが別れの時じゃ」
コヨミ
「うん⋯」
声が震える。
のだ
「どうしたのじゃ?」
次の瞬間。
コヨミは、のだの胸へ飛び込んだ。
「帰りたくないよぉぉぉっ!!」
大粒の涙がこぼれる。
のだは優しく頭を撫でた。
「また来れば良い」
「そのタイムマシンがあるのじゃろう?」
みっちゃん
「私もお待ちしておりますぞ」
コヨミ
「でも⋯」
「でもぉ⋯」
のだとみっちゃんは何も言わなかった。
ただ。
気が済むまで泣かせてやった。
やがて。
コヨミは顔を上げる。
「ありがと⋯」
「また来るからね⋯」
のだ
「うむ」
「娘が出来たみたいで嬉しかったぞ」
みっちゃん
「私もですぞ」
コヨミ
「バカ⋯」
「また泣いちゃうじゃない⋯」
その時。
みっちゃんが思い出したように言う。
「あ」
「そういえば」
「私の屋敷へ届いた矢文」
「結局誰だったのでしょうな?」
取り出された紙を眺める。
のだ
「子供の字じゃな」
みっちゃん
「確かに」
のだ
「子供が遊んでいて」
「たまたま、飛び込んだだけではないか?」
みっちゃん
「言われてみれば」
コヨミ
「それ」
「持って帰って良い?」
「おじいちゃんに見せてみる」
みっちゃん
「構いませぬ」
のだ
「じいさんにも宜しくな」
コヨミ
「うん」
涙を浮かべながら。
コヨミはタイムマシンへ乗り込んだ。
――――――
現代。
コヨミ
「ただいまー!」
じいちゃん
「おお!」
「帰ったか! 早かったのう!!」
コヨミ
「え?」
「何日も戦国時代にいたのよ!?」
じいちゃん
「そうなのか?」
タイムマシンを見る。
「帰還設定は、出発一分後じゃな。」
コヨミ
「うそぉぉぉっ!?」
じいちゃん
「それで?」
「黒幕は分かったのか?」
コヨミ
「ううん」
「結局いなかったみたい」
じいちゃん
「そうか」
コヨミ
「でもね」
「これ預かってきた」
矢文を差し出す。
じいちゃんは見た瞬間。
顔色を変えた。
コヨミ
「みっちゃんの屋敷に届いたんだって」
「結局誰が撃ったか分からなかったの」
じいちゃん
「こ、子供の字じゃな⋯」
「きっと子供の遊びじゃろうて⋯」
コヨミ
「のだもそう言ってた」
じいちゃん
「そ、そうじゃろう」
慌てて話題を変える。
「コ、コヨミ!」
「風呂が沸いておるぞ!」
コヨミ
「えっ!?」
「お風呂!?」
「やったぁー!」
一目散に風呂場へ走っていった。
――――――
湯船。
コヨミ
「うぅ〜ん⋯」
「お風呂は現代の方がいいわぁ⋯」
幸せそうな声が響く。
その頃。
居間では。
じいちゃんが矢文を見つめていた。
「わ⋯」
「わしの矢文じゃ⋯」
震える手。
子供の頃。
タイムワープ装置へ向かって放った。
おもちゃの矢。
それが巡り巡って。
歴史を動かしていた。
じいちゃん
「知らんぷりじゃ⋯」
「知らんぷり知らんぷり⋯」
その姿を見た者は誰もいない。
こうして。
本能寺の変の黒幕を巡る、不思議な旅は幕を閉じた。
黒幕は最後まで現れなかった。
いや。
最初から存在しなかったのかもしれない。
ただ一つ確かな事は。
人と人との縁が。
時を越えて繋がっていたという事だけだった。
― 完 ―
完結まで読んでいただき、ありがとうございました。
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