第十八話 戦う理由
はじめまして、大森林総史です。
本能寺の変の黒幕って誰なんだろう?
そんな疑問から、歴史パロディを書いてみました。
宜しければ、お読みいただけると嬉しいです。
のだは静かに目を閉じた。
昔を思い出すように。
「⋯そうせねば生き残れなかったからじゃろう」
部屋が静まり返る。
「コヨミ」
「なに?」
「仮にお主が生まれる前から隣の県が敵で、いつ攻め込んでくるか分からぬとしたらどう思う?」
コヨミは少し考えた。
「想像もつかないわ⋯」
「怖い⋯」
のだは頷く。
「わしもそうじゃ」
「物心ついた頃から隣国は敵じゃった」
コヨミは神妙な顔になる。
「それが、のだの現実だったのね⋯」
「そうじゃ」
のだは、遠くを見る。
「当主の子として生まれた」
「それだけで国を守らねばならぬ」
「幼い子供には重すぎる責務じゃ」
「⋯⋯」
「うつけと呼ばれた振る舞いもな」
「子供心に恐ろしくてな」
「そうでもせねば、気が狂いそうじゃった」
コヨミは何も言えなかった。
いつもの、のだからは想像もできない話だった。
「余談じゃが」
のだは続ける。
「ヤス(徳川家康)も苦労人じゃ」
「ヤスも?」
「幼少期、人質として両家を行き来しておった」
コヨミは、目を丸くした。
「そうなの!?」
「うむ」
のだは頷く。
「ヤスの母上は、のだ家と縁のある女性でな」
「それを快く思わぬ今川が離縁を迫った」
「ヤスは幼くして母上と離れることになった」
「かわいそう⋯」
「さらに人質として送られる途中」
のだは、少し笑う。
「わしら、のだが奪った」
「えっ!?」
「初めて会ったのはその時じゃ」
「その後、奪い返されたがの」
みっちゃんが苦笑する。
「なかなか波乱万丈ですな」
「その後」
のだの表情が曇る。
「父が亡くなった」
「家督争いが始まった」
拳が震える。
「オブカツを斬らねばならなかった」
部屋に沈黙が落ちる。
「ようやく家中をまとめた」
「だが」
「すぐに今川が攻めてきた」
コヨミが尋ねる。
「和解はできなかったの?」
のだは首を傾げる。
「不思議と、その発想は無かった」
「じゃが」
少し苦笑する。
「和睦しても、わしは殺されたじゃろうな」
みっちゃんも頷く。
「家臣達は許されても」
「のだ様だけは生かされますまい」
「そうじゃ」
のだは、静かに言う。
「わしも死にたくはない」
「それに」
「オブカツを斬ってまで守った家じゃ」
「わしが手放すわけにはいかぬ」
「ならば戦うしかない」
コヨミは黙っていた。
みっちゃんが言う。
「しかし戦力差は歴然」
「のだ様、三千」
「今川、二万五千」
「は、八倍!?」
コヨミは、思わず立ち上がる。
「どうやって勝ったの!?」
「奇襲じゃ」
のだはあっさり答えた。
「大軍は統制が難しい」
「偽報で本隊を減らした」
「さらに」
「雨」
「夜の闇」
「その中を全軍で突撃した」
「そして、奇跡的にヨシモト殿を討つ事ができた」
コヨミは目を輝かせる。
「凄い⋯」
のだは頭をかく。
「なんじゃ」
「お主に褒められるとむず痒いのう」
コヨミは思わず笑った。
「だが⋯」
のだは空を見上げる。
「結局は運かもしれぬ」
「そうなの?」
「そうじゃ」
「偽報に乗るかは相手次第」
「雨が降るかは天候次第」
「大博打よ」
「じゃが」
声に力が入る。
「それでも守らねばならぬ」
「それが家じゃ」
みっちゃんは感心する。
「君主とは大変なものですな」
「幸い」
のだは微笑む。
「家臣達がついてきてくれた」
「謀反を起こした私が言うのも何ですが」
みっちゃんが頭を下げる。
「家臣とは主君に忠誠を誓うものです」
「本当におかしいのう」
のだは笑う。
「申し訳ありませぬ」
「よい」
二人は笑った。
コヨミは改めて思う。
やはりこの二人は戦国武将なのだと。
ケンニョも静かに頷く。
「見事なものですな」
のだは話を続けた。
「その後」
「ヤスが今川から独立した」
「わしは同盟を申し出た」
「承諾してくれた」
「だから西へ向かえた」
コヨミは首を傾げる。
「でも」
「戦が嫌なら、攻めなければ良かったんじゃない?」
のだは、静かに首を振る。
「生き残れぬ」
「え?」
「ヤスが人質になった理由を覚えておるか?」
「力が無かったから⋯?」
「そうじゃ」
のだは頷く。
「勢力が弱ければ強者に従う」
「人質も出す」
「乱世では当たり前じゃ」
「じゃが」
「良い事ではない」
コヨミは黙る。
「主君が弱ければ」
「家臣は離れる」
「謀反も起きる」
「朝倉ヨシカゲ殿も、最後は家臣に裏切られた」
「ま⋯」
のだは苦笑した。
「わしも戦い続けて謀反されたがの」
みっちゃんが俯く。
「私はなぜ謀反など⋯」
「分からぬ」
のだは首を振った。
「人は狂う事もあろう⋯」
「わしも比叡山を焼いた後」
「なぜこんな事をしたのか」
「そう思わなかった訳ではない」
ケンニョが静かに言う。
「のだ殿は、孤独に見えますな」
のだは少し笑った。
「今だから言える事です」
そして。
話は次の出来事へ移る。
「その後」
「公方様がわしを頼って来られた」
みっちゃんが頷く。
「私も、公方様と共に、受け入れてくれる大名を探しておりました」
「だが」
「受け入れてくれたのは、のだ様だけでした」
コヨミが尋ねる。
「どうして受け入れたの?」
のだは静かに息を吐いた。
「それは⋯」
戦国の世。
数え切れぬ戦と別れ。
そして数え切れぬ選択。
その全ては偶然だったのか。
それとも――。
運命だったのか。
つづく。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
次話は9/16 20:00に投稿予定です。
続きも読んでもらえると嬉しいです。
もし宜しければ、ブックマークや評価をしていただけると励みになります。




