↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
18/20

第十八話 戦う理由

はじめまして、大森林総史です。

本能寺の変の黒幕って誰なんだろう?

そんな疑問から、歴史パロディを書いてみました。

宜しければ、お読みいただけると嬉しいです。

のだは静かに目を閉じた。


昔を思い出すように。


「⋯そうせねば生き残れなかったからじゃろう」


部屋が静まり返る。


「コヨミ」


「なに?」


「仮にお主が生まれる前から隣の県が敵で、いつ攻め込んでくるか分からぬとしたらどう思う?」


コヨミは少し考えた。


「想像もつかないわ⋯」


「怖い⋯」


のだは頷く。


「わしもそうじゃ」


「物心ついた頃から隣国は敵じゃった」


コヨミは神妙な顔になる。


「それが、のだの現実だったのね⋯」


「そうじゃ」


のだは、遠くを見る。


「当主の子として生まれた」


「それだけで国を守らねばならぬ」


「幼い子供には重すぎる責務じゃ」


「⋯⋯」


「うつけと呼ばれた振る舞いもな」


「子供心に恐ろしくてな」


「そうでもせねば、気が狂いそうじゃった」


コヨミは何も言えなかった。


いつもの、のだからは想像もできない話だった。


「余談じゃが」


のだは続ける。


「ヤス(徳川家康)も苦労人じゃ」


「ヤスも?」


「幼少期、人質として両家を行き来しておった」


コヨミは、目を丸くした。


「そうなの!?」


「うむ」


のだは頷く。


「ヤスの母上は、のだ家と縁のある女性でな」


「それを快く思わぬ今川が離縁を迫った」


「ヤスは幼くして母上と離れることになった」


「かわいそう⋯」


「さらに人質として送られる途中」


のだは、少し笑う。


「わしら、のだが奪った」


「えっ!?」


「初めて会ったのはその時じゃ」


「その後、奪い返されたがの」


みっちゃんが苦笑する。


「なかなか波乱万丈ですな」


「その後」


のだの表情が曇る。


「父が亡くなった」


「家督争いが始まった」


拳が震える。


「オブカツを斬らねばならなかった」


部屋に沈黙が落ちる。


「ようやく家中をまとめた」


「だが」


「すぐに今川が攻めてきた」


コヨミが尋ねる。


「和解はできなかったの?」


のだは首を傾げる。


「不思議と、その発想は無かった」


「じゃが」


少し苦笑する。


「和睦しても、わしは殺されたじゃろうな」


みっちゃんも頷く。


「家臣達は許されても」


「のだ様だけは生かされますまい」


「そうじゃ」


のだは、静かに言う。


「わしも死にたくはない」


「それに」


「オブカツを斬ってまで守った家じゃ」


「わしが手放すわけにはいかぬ」


「ならば戦うしかない」


コヨミは黙っていた。


みっちゃんが言う。


「しかし戦力差は歴然」


「のだ様、三千」


「今川、二万五千」


「は、八倍!?」


コヨミは、思わず立ち上がる。


「どうやって勝ったの!?」


「奇襲じゃ」


のだはあっさり答えた。


「大軍は統制が難しい」


「偽報で本隊を減らした」


「さらに」


「雨」


「夜の闇」


「その中を全軍で突撃した」


「そして、奇跡的にヨシモト殿を討つ事ができた」


コヨミは目を輝かせる。


「凄い⋯」


のだは頭をかく。


「なんじゃ」


「お主に褒められるとむず痒いのう」


コヨミは思わず笑った。


「だが⋯」


のだは空を見上げる。


「結局は運かもしれぬ」


「そうなの?」


「そうじゃ」


「偽報に乗るかは相手次第」


「雨が降るかは天候次第」


「大博打よ」


「じゃが」


声に力が入る。


「それでも守らねばならぬ」


「それが家じゃ」


みっちゃんは感心する。


「君主とは大変なものですな」


「幸い」


のだは微笑む。


「家臣達がついてきてくれた」


「謀反を起こした私が言うのも何ですが」


みっちゃんが頭を下げる。


「家臣とは主君に忠誠を誓うものです」


「本当におかしいのう」


のだは笑う。


「申し訳ありませぬ」


「よい」


二人は笑った。


コヨミは改めて思う。


やはりこの二人は戦国武将なのだと。


ケンニョも静かに頷く。


「見事なものですな」


のだは話を続けた。


「その後」


「ヤスが今川から独立した」


「わしは同盟を申し出た」


「承諾してくれた」


「だから西へ向かえた」


コヨミは首を傾げる。


「でも」


「戦が嫌なら、攻めなければ良かったんじゃない?」


のだは、静かに首を振る。


「生き残れぬ」


「え?」


「ヤスが人質になった理由を覚えておるか?」


「力が無かったから⋯?」


「そうじゃ」


のだは頷く。


「勢力が弱ければ強者に従う」


「人質も出す」


「乱世では当たり前じゃ」


「じゃが」


「良い事ではない」


コヨミは黙る。


「主君が弱ければ」


「家臣は離れる」


「謀反も起きる」


「朝倉ヨシカゲ殿も、最後は家臣に裏切られた」


「ま⋯」


のだは苦笑した。


「わしも戦い続けて謀反されたがの」


みっちゃんが俯く。


「私はなぜ謀反など⋯」


「分からぬ」


のだは首を振った。


「人は狂う事もあろう⋯」


「わしも比叡山を焼いた後」


「なぜこんな事をしたのか」


「そう思わなかった訳ではない」


ケンニョが静かに言う。


「のだ殿は、孤独に見えますな」


のだは少し笑った。


「今だから言える事です」


そして。


話は次の出来事へ移る。


「その後」


「公方様がわしを頼って来られた」


みっちゃんが頷く。


「私も、公方様と共に、受け入れてくれる大名を探しておりました」


「だが」


「受け入れてくれたのは、のだ様だけでした」


コヨミが尋ねる。


「どうして受け入れたの?」


のだは静かに息を吐いた。


「それは⋯」


戦国の世。


数え切れぬ戦と別れ。


そして数え切れぬ選択。


その全ては偶然だったのか。


それとも――。


運命だったのか。


つづく。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

次話は9/16 20:00に投稿予定です。

続きも読んでもらえると嬉しいです。


もし宜しければ、ブックマークや評価をしていただけると励みになります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。