第十七話 戦国の世
はじめまして、大森林総史です。
本能寺の変の黒幕って誰なんだろう?
そんな疑問から、歴史パロディを書いてみました。
宜しければ、お読みいただけると嬉しいです。
「すみませぬ!」
「すまぬ⋯」
のだとケンニョは、同時に頭を下げた。
コヨミとみっちゃんは顔を見合わせる。
「えっ?」
「な、なぜケンニョ殿まで頭を下げるのです?」
みっちゃんが尋ねた。
ケンニョは静かに答える。
「門徒達の長として頭を下げたのじゃ」
部屋は、静まり返った。
「わしは、門徒達に仏を信じることは良いと説いた」
ケンニョは遠くを見る。
「だが、他人を傷つけて良いとは教えておらぬ」
「⋯⋯」
「わしは止められなんだ。暴徒と化した門徒達を」
コヨミは黙って聞いていた。
「我らは、統率が取れておらぬのじゃ」
のだが口を開く。
「そんな事は⋯一向衆は手強かったですぞ」
しかし、言葉は途中で止まった。
ケンニョは首を振る。
「戦う時はな。」
静かな声だった。
「だが、守護を倒した後はどうなる?」
「国が乱れまする」
のだが答えた。
「うむ」
ケンニョは頷く。
「争いは終わらぬ」
「確かに⋯」
「国を治める者が、おらねば民は苦しむ」
みっちゃんも腕を組む。
「難しいものですな」
ケンニョは続ける。
「のだ殿の領土拡大も、一向衆への対応も苛烈であった」
コヨミは少し身構えた。
「だが」
「しかし、それは他の戦国武将も一向衆も皆同じじゃ」
ケンニョは、穏やかだった。
「のだ殿も」
「みっちゃんも」
「為政者として国を治めておった」
みっちゃんは少し驚く。
「我らが⋯」
「少なくとも、治めている国は比較的平和であったと思います」
その言葉に、のだは静かに頷いた。
「オブカツ殿も申しておりましたな」
みっちゃんが言う。
「為政者は、しっかりせねばならぬと」
「うむ」
のだは真剣な顔だった。
「領土拡大も大事じゃ」
「だがもっと大切なのは」
一同が耳を傾ける。
「民が、安心して暮らせる国を作ることじゃ」
コヨミは少し驚いた。
いつもの、のだからは想像できない言葉だった。
ケンニョも頷く。
「それができぬ時」
「民は不満を抱く」
「そして反発する」
「だが一向一揆もまた正しいとは言えぬ」
ケンニョは再び頭を下げた。
「改めてお詫び申し上げる」
「頭を上げてくだされ!」
のだが慌てて立ち上がる。
「全国の門徒衆をまとめるなど、誰にもできませぬ!」
「わしは鎮圧に血を流しすぎました⋯」
今度は、のだが頭を下げる。
ケンニョは微笑んだ。
「それだけ一向一揆が強かったという事じゃ」
「そして」
「鎮圧に成功したのも、のだ殿だったからこそ」
のだは何も言えなかった。
コヨミがぽつりと呟く。
「戦国時代って難しいわね⋯」
みっちゃんも頷く。
「誰もが正しく」
「誰もが間違っている」
ケンニョは笑う。
「こうして話ができて良かった」
「わしもです」
のだも笑った。
長年戦った宿敵同士。
だがそこに敵意はなかった。
コヨミは思い出したように言う。
「で、黒幕は?」
現実に引き戻された。
ケンニョは苦笑する。
「のだ殿が、恨まれておるのは事実じゃ」
「だが」
「みっちゃん程の武将を操ることなど我らにはできぬ」
「そうじゃろうな⋯」
のだは肩を落とした。
「やはり黒幕などおらぬのかもしれぬ」
静かな沈黙。
その時だった。
コヨミが、のだを見た。
「ねぇ」
「ん?」
「あなたはどうして戦い続けたの?」
部屋の空気が変わる。
ケンニョも。
みっちゃんも。
静かに、のだを見つめた。
戦国の世。
その中心にいた男は何を思い。
何を願い。
何のために戦ったのか。
その答えが、今語られようとしていた――。
つづく。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
次話は9/14 20:00に投稿予定です。
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