第十六話 帰りたい⋯
はじめまして、大森林総史です。
本能寺の変の黒幕って誰なんだろう?
そんな疑問から、歴史パロディを書いてみました。
宜しければ、お読みいただけると嬉しいです。
信濃を後にしたコヨミ達は、本願寺を目指していた。
「本願寺ケンニョって何者なの?」
コヨミが尋ねる。
「本願寺の住職にして、一向門徒の主です」
みっちゃんが答えた。
「一向門徒?」
「無知が!」
バシィッ!!
「ぐえっ!!」
のだは、見事に張り倒された。
「な、何をするんじゃ!?」
「その口の悪さだから、謀反されたんじゃないの!?」
「何じゃと!?」
「なによ!?」
二人は額を突き合わせる。
みっちゃんはため息をついた。
「最近、お二人とも痴話喧嘩ばかりですな」
「何が痴話喧嘩じゃ!!」
「誰がよ!!」
息はぴったりだった。
「さて」
みっちゃんは話を戻した。
「一向門徒とは、簡単に言えば僧兵達の集団です」
「お坊さんなのに強いの?」
「強い」
のだが真顔で答える。
「奴らは死を恐れぬ」
コヨミの顔色が変わった。
「極楽浄土を信じ、迷いがない。数も多い。結束も固い」
「そんなに?」
「わしは十年以上戦った」
「えっ」
「加賀の国など、一向一揆によって百年近く支配されたのじゃ」
「ひぇ⋯」
「三河のヤス(徳川家康)も苦しめられました」
みっちゃんも頷く。
「さらに厄介なのは、侍の中にも一向門徒がおることです」
「味方が敵になるの!?」
「その通り」
コヨミは少し青ざめた。
その時だった。
「ほれ」
のだが前方を指差した。
「一向門徒じゃ」
一同は草むらに身を隠した。
その先では――。
巨大な熊と、一向門徒達が戦っていた。
槍。
刀。
鉄砲。
完全武装である。
そして彼らの目は血走っていた。
「死ねぇぇぇぇ!!」
「のだぁぁぁぁぁ!!」
のだ、涙目。
「なぜわしの名前が出るんじゃ!?」
門徒達は熊へ飛びかかる。
一人が飛びかかれば全員が飛びかかる。
鉄砲が乱射される。
槍が突き出される。
その姿はまるで狂戦士だった。
コヨミが震える。
「怖っ⋯」
「でしょう?」
みっちゃんが頷く。
のだはガタガタ震えていた。
「帰ろう」
「え?」
「な?」
「ダメ」
即答だった。
のだは変装させられ、本願寺へ向かうことになった。
やがて一向門徒の集団と遭遇する。
「みっちゃん様ー!!」
「おおっ!!」
「のだを討ち取ってくれましたな!!」
「素晴らしい!!」
大歓声だった。
みっちゃんは気まずそうに頭を下げる。
「殿⋯申し訳ありませぬ」
「やはり憎まれておるのう⋯」
のだは遠い目をした。
「帰りたい⋯」
コヨミは呟く。
「のだって凄いけど、恨まれてもいたのね⋯」
しばらく沈黙が続いた。
やがて、のだがぽつりと言う。
「わしも恐ろしかった」
一同が振り返る。
「だからこそ、あれほど苛烈になったのかもしれぬ」
珍しく弱気な言葉だった。
そして――。
ようやく本願寺へたどり着く。
静かな部屋。
そこに一人の男が座っていた。
本願寺ケンニョ。
長年、のだと戦い続けた宿敵である。
ケンニョは静かに口を開いた。
「来たか⋯のだ」
のだは飛び上がった。
「ち、違いまする!!」
「私は旅の商人で⋯」
「ここには、わししかおらぬ」
ケンニョは微笑む。
「隠さずとも良い」
のだの額から汗が流れた。
「こ、こうしてお目にかかるのは⋯」
ごくり。
「は、初めてですのぅ⋯」
ケンニョは静かに笑った。
果たして本願寺ケンニョは黒幕なのか。
それとも――。
つづく。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
次話は9/12 20:00に投稿予定です。
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