第十一話 謀神と謀聖
はじめまして、大森林総史です。
本能寺の変の黒幕って誰なんだろう?
そんな疑問から、歴史パロディを書いてみました。
宜しければ、お読みいただけると嬉しいです。
「さて――」
モトナリが腕を組んだ。
「わしの死後、およそ十年後の世か。情勢はどうなっておる?」
コヨミがこれまでの経緯を説明する。
のだは本能寺で討たれたこと。
しかし、本人は生きていること。
みっちゃんも生きていること。
そして黒幕を探していること。
モトナリは何度も頷いた。
「ふむ……なるほどのう」
「ほぼ、のだ殿の一強か」
「石高、七百八十万石……」
思わず唸る。
「凄まじいのう」
「わしの時代の毛利家最盛期で、百十二万石じゃぞ」
隣でツネヒサも感心していた。
「それが家臣の謀反で討たれるとはのう」
「……いや、生きとるか」
モトナリが笑う。
「その謀反人と主君が、仲良く旅をしておるのも面白いのう」
ツネヒサも笑う。
「全くじゃ!」
コヨミは身を乗り出した。
「それで黒幕は!?」
モトナリは手を上げた。
「まあ待て」
「ツネヒサ殿と考えてみよう」
ツネヒサは満足そうに笑う。
「お主とは敵味方を超えて、一度軍略を練ってみたかったのだ」
「私もですぞ」
モトナリは立ち上がった。
「タカモト」
「はい」
「ミイと共に、テル達と話して参れ」
「久しぶりの会話もよし」
「毛利のこれからを語るもよしじゃ」
「承知いたしました」
タカモトは深く頭を下げた。
---
その頃。
タカモトは、弟達と向かい合っていた。
「久しぶりじゃな」
「元気にしておったか?」
モトハルとタカカゲが、顔を見合わせる。
「兄上……」
タカモトはさらに頭を下げた。
「我が息子テルを支えてくれて、心から感謝いたす」
二人は慌てた。
「や、やめて下され!」
「兄上が頭を下げるなど!」
「テルは、立派に当主を務めておりまする!」
その横でミイが微笑む。
「あなたがタカモトの息子?」
「ババですよ」
テルは深々と礼をした。
「お初にお目にかかります、御祖母様」
「まあまあ」
ミイは嬉しそうだった。
その様子を見ながら、
のだ、みっちゃん、ヨッチャンはほのぼのしている。
コヨミも思わず呟いた。
「戦国武将も……人よね」
---
しばらくして。
モトナリとツネヒサが戻ってきた。
一同が身を乗り出す。
モトナリが口を開いた。
「黒幕じゃが……」
ツネヒサが続ける。
「分からん!」
全員ずっこけた。
「ええええええっ!?」
コヨミが叫ぶ。
「私達は何のために恐山まで来たのよ!」
モトナリは苦笑した。
「まあ聞け」
「暗殺は、わしもよく使った」
一同が真顔になる。
「しかし、普通は主君を疑心暗鬼にさせ、家臣を斬らせる」
「逆は、まず出来ん」
「そんな事が出来るなら、厳島の戦いの前にハルカタ(陶晴賢)を暗殺しておるわ」
ツネヒサも頷く。
「それが出来るのは、モトナリ殿ほどの智謀があってやっとじゃ」
モトナリは続けた。
「そして暗殺も簡単ではない」
「入念な準備」
「人間関係」
「偶然」
「様々な要因が重なって成功する」
「思いつきで出来るものではない」
コヨミは黙って聞いていた。
「そして謀反じゃが――」
みっちゃんがビクリと震える。
モトナリは見なかったことにした。
「下剋上の世とはいえ、謀反は大きな賭けじゃ」
「成功しても謀反人」
「失敗すれば一族滅亡」
ツネヒサも頷く。
「わしも下剋上の典型などと言われるがな」
「そんな簡単な話ではない」
「実権を握った後は、自分がした事を自分がされるのではと疑心暗鬼になる」
モトナリは遠くを見る。
「わしも何度も死にかけた」
「結局は運かもしれぬ」
ツネヒサが腕を組んだ。
「ひょっとすると――」
「黒幕などおらぬのかもしれんぞ」
コヨミは目を見開いた。
「え……?」
ツネヒサは静かに続けた。
「人を裏切るというのは恐ろしいものじゃ」
「のだ殿は、裏切った事があるか?」
「ありませぬ」
のだが即答した。
「意外⋯」
コヨミがビックリする。
「やかましい!」
のだが、顔を真っ赤にした。
モトナリが笑う。
「裏切った者には、容赦なかったようじゃがの」
「ぐっ……」
のだが詰まる。
「わしも怖かったんじゃ……」
モトナリもツネヒサも頷いた。
「その気持ちは分かる」
「やられる前にやる」
「そういう世じゃったからの」
「恨みも積もる」
「何かの拍子に爆発することもあろう」
コヨミは呟く。
「じゃあ黒幕はいない……?」
モトナリは首を振った。
「分からぬ」
ツネヒサも続ける。
「ただし」
「味方も敵も見た」
「ならば、滅ぼされた側を見てみるのもよかろう」
「武田の遺臣などな」
のだが反応した。
「武田の遺臣……」
「サナダマサコ⋯」
(真田昌幸:真田幸村の父。物語上は女性にします)
モトナリとツネヒサは頷いた。
「それも一つじゃ」
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話が終わりかけた時。
のだが、慌てて立ち上がった。
「待って下され!」
「オブカツに!」
(織田信勝。信長の弟で家督争いの末、暗殺された)
「オブナガが、謝っておったと伝えて下され!」
「ナガマサにも!」
(浅井長政。信長の同盟者で信長の妹、お市の方の婿。しかし、同盟を破棄せざるを得ずに敗北し亡くなった)
ツネヒサが笑った。
「ならば、直接言えばよい」
「将棋大会を見に来ておるはずじゃ」
一同が固まる。
「え?」
ツネヒサが客席を指差した。
「あそこじゃ」
「おった、おった」
全員が振り返った。
そこには――。
次なる再会を待つ者達の姿があった。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
次話は9/2 20:00に投稿予定です。
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