第十話 モトナリ降臨……待った!
はじめまして、大森林総史です。
本能寺の変の黒幕って誰なんだろう?
そんな疑問から、歴史パロディを書いてみました。
宜しければ、お読みいただけると嬉しいです。
「では、戦国一の知恵者に聞いてみようかの」
足利のヨッチャンが不敵に笑った。
「おお!」
コヨミは身を乗り出す。
「ついに黒幕の手掛かりが!」
「キエエエエエエエイ!!」
ヨッチャンの叫びが、恐山に響き渡った。
ガクガク。
ブルブル。
のだ、みっちゃん、モトハル、タカカゲの四人は震え上がる。
テルだけが欠伸をした。
「……眠くなりました」
しかし――
何も起こらない。
沈黙。
風の音だけが聞こえる。
「……公方様?」
のだが、恐る恐る尋ねた。
「いかがなされました?」
「おかしいのう」
ヨッチャンは首を傾げた。
「モトナリ殿から返事がない」
「返事って電話じゃないんだから……」
コヨミが呆れる。
「どれ、映像に映してみるか」
ヨッチャンは、懐から水晶玉を取り出した。
すると――
映し出されたのは。
---
『あの世杯、将棋トーナメント決勝!!』
---
「ええええええええ!?」
コヨミが叫ぶ。
実況席。
『実況はミイの方(美伊の方、毛利元就の正室)でお送りいたします!』
ミイの方
『解説はツネヒサ謀聖(尼子経久。謀聖と呼ばれている智将。毛利元就の敵でありながらも師匠にも近い存在)です!』
ツネヒサ
対局席。
『モトナリ謀神』(毛利元就は謀神とも呼ばれている)
モトナリ
『タカモト六段』
タカモト
「爺様! 父上!」
テルは目を輝かせた。
「父上⋯兄上⋯」
モトハルとタカカゲが瞳を潤ませる。
「お取り込み中であったか」
ヨッチャンは、うんうん頷く。
「せっかくだから、見ようではないか」
「いやいやいや!」
コヨミがツッコむ。
「黒幕探しは!?」
「若いの」
ヨッチャンは、穏やかに言った。
「急ぎすぎると大切なものを見失うぞ」
そう言って水晶玉からコードを伸ばした。
テレビに接続。
「なんでテレビがあるの!?」
「祈祷の力じゃ」
「嘘つけ!!」
---
画面ではインタビューが始まっていた。
「モトナリ謀神、本日の意気込みは?」
ミイが尋ねる。
「息子にはまだまだ負けられませんな」
モトナリが笑う。
「ところでお尻に針が刺さっていますが……」
「死後、地獄に落とされましてな」
「はい?」
「針の山に座らされております」
「……」
「血行が良くなりました」
---
全員沈黙。
---
「そういえばツネヒサ謀聖も、真っ黒ですね」
「ガッハッハ!」
ツネヒサが豪快に笑う。
「マグマ風呂ですわ!」
「マグマ風呂?」
「地獄で毎日入っております!」
「慣れると、これでないと身体が温まらん!」
---
「⋯わしらも地獄行きかのう」
のだが、ポツリと呟いた。
みっちゃん。
モトハル。
タカカゲ。
「……」
「……」
「……」
全員の血の気が引く。
---
テルがお茶を飲む。
「生前の行い次第ですよ」
---
四人。
さらに青ざめる。
---
続いてタカモト六段。
「私は天国に行けました」
爽やかな笑顔。
「毎日神様の下でお祈りしております」
「さすが兄上……」
モトハルが感動する。
「兄上……」
タカカゲも涙目。
「ですが」
タカモトは微笑んだ。
「将棋では、父を超えてみせます」
---
対局開始。
---
タカモト六段の先手
「先手は居飛車ですね」
モトナリ謀神の後手
「後手は四間飛車でしょうか?」
「ツネヒサ謀聖、この戦型は⋯?」
ミイの方が実況する。
「タカモト六段は⋯オーソドックスな居飛車穴熊ですな、守りが堅い戦型です。モトナリ謀神は⋯これは藤井システムですな。居飛車穴熊の天敵となる戦型です。おそらく居飛車穴熊を読んでいましたな」
ツネヒサが解説する。
「おおーっ!」
のだが唸る。
「さすがモトナリ殿!」
みっちゃんが叫ぶ。
「いやいや、タカモト殿も綺麗な駒組みじゃ」
ヨッチャンが感心する。
「兄上、頑張って下さい!」
モトハルとタカカゲは身を乗り出す。
「爺様も父上も、頑張って下さい!」
テルはお茶を飲みつつも、祖父と父の大一番に興奮を隠しきれぬ様子。
「将棋か⋯子供の頃、おじいちゃんと指したっけ⋯」
コヨミもいつの間にか見入っていた。
将棋は進み、中盤戦へ
「中盤戦に入りました!」
ミイの方の実況に熱が入る。
「ほう……」
ツネヒサは感心した様子。
「これはモトナリ謀神が、押しておりますか?」
「ええ」
「モトナリ謀神らしい鋭い攻めです」
画面ではモトナリが駒を打つ。
タカモトも即座に応じる。
「しかし、タカモト六段も受けるだけではありませぬ」
「受けながら反撃の手を指しております」
「なるほど!」
「現在は、モトナリ謀神やや優勢」
「ですが、まだ勝負は分かりませぬ」
「と、言いますと?」
「タカモト六段は粘りに定評があります」
「モトナリ謀神も、まだはっきり優勢とは思っておらぬでしょうな」
「ふむ……」
モトナリは眉間にシワを寄せ、駒を指す。
「ムム……」
タカモトも苦しそうな表情ながらも、目はまだまだ負けていない。
盤上に緊張が走る。
---
そして終盤戦へ。
---
タカモトの玉に王手!
「これはモトナリ謀神、優勢ですか!?」
ミイが叫ぶ。
ツネヒサが首を振る。
「いや」
「モトナリ謀神には、受けがありません」
「詰まさねば負け」
「しかし、見た感じ詰みは無さそうですので⋯タカモト六段が受け間違えなければ勝ちです」
---
モトナリの怒涛の王手ラッシュ。
タカモトが、玉を正しく受け、そして逃げる。
受ける。
逃げる。
逃げる。
そして――
モトナリの攻撃が止まり、タカモトがモトナリの玉に王手。
---
沈黙。
---
モトナリが盤面を見つめる。
やがて笑った。
「負けました」
---
会場大歓声。
---
『タカモト六段優勝!!』
『父を超えたああああ!!』
---
「兄上ーーー!!」
モトハル号泣。
「兄上ーーー!!」
タカカゲも号泣。
テルも目を潤ませる。
「……良い勝負でした」
---
のだ。
みっちゃん。
ヨッチャン。
全員満足げ。
---
コヨミも感動していた。
していたのだが。
ふと我に返る。
「あっ!!」
全員が振り向く。
「本題!!」
---
その瞬間。
画面の向こうで、モトナリがこちらを見た。
「おや?」
モトナリは首を傾げる。
「公方様、お呼びでしたか」
「すみませぬな」
「対局中でして」
---
コヨミは、拳を握り締めた。
ようやく。
ようやく本題である。
---
次回
『戦国最強の知恵者会議!?』
モトナリとツネヒサが語る、本能寺の変の真相とは――?
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
次話は8/31 20:00に投稿予定です。
続きも読んでもらえると嬉しいです。
もし宜しければ、ブックマークや評価をしていただけると励みになります。




