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第25話 光と闇と

「こんな金髪のウィッグ、わたしの趣味じゃないんだけど」


 ウィッグを被り、うまく顔が隠れるように照明と角度を調整している。先ほどまでいた幼女の姿はない。

 不自然な純白で透け感のあるひらひらなドレスを着たその女は不慣れそうに配信開始のボタンをタップした。


 予告はしてなかったので、すぐには人は集まらなかった。真っ白な画面のまま放置していると誰かが気付いたのか視聴者が増え始めた。

 そして1人の魔族が1人の幼女の手を引いている鮮明な映像を流し始めた。


「ん?なんだこれ」

「これって行方不明になってる勇者の娘じゃね?」

「かわいい」

「隣にいるの魔族じゃん」

「どこでどうやってこんなの撮ったんだ?」

「まだ魔族いたのかよ。さっさと滅ぼせ」

「やっぱり魔族は悪だ!女神様を少しでも疑ってしまった自分が憎い」

「これ大丈夫なの?魔族に変なことされてない?」

「鬼畜」

「おい!勇者!見てるか!」


 煇たちも配信に気付き、視聴し始めた。魔族が森の中の小屋へユメの手を引いて連れて行く様子が映し出されていた。


「この場所、特定できるか?」

「見つけたよ。マップのURL送るわ」


 視聴者がすぐに場所を特定した。すぐ近くの森の中だった。煇は配信を見つつ、セリアと共にその場所へ向かう。

 色々と疑問は浮かんでいたが、まずはユメの安全の確保が最優先だ。

 

 そして映像が切り替わり、女神が姿を顕した。

 顔は影になっていて全く見えない。長い金髪と白いドレスが、わざとらしいほど女神らしさを醸し出していた。


「アルカ大陸に生きるすべての者たちよ。私は、女神パルムです」


「今の映像は、私の力で魔族の悪行の瞬間を捉えたものです」


「未だに魔族はこの大陸で悪事を働いています」


「勇者たちよ。私と民たちのために、今一度、力をお貸しください」


「魔族復活の時が、また近づいています」


 女神の配信はすぐに終わった。配信中の背景は一面真っ白だった。


「やっぱり女神様は正しかった!」

「女神様を疑うなんて、あの勇者はやっぱり頭がおかしい」

「ほら、勇者共仕事だぞ」

「魔族怖い。助けて女神様!」

「う〜ん、なんか変じゃね?」

「よくわかんねえけどよ、魔族が出てきたら倒せばいいんだろ?」

「あの勇者はダメだな。俺は女神様に従うわ」

「これ本当の女神なの?怪しくね?」


 現地民は女神からの直接の言葉に安心した。勇者たちは疑いを深めるものと、そうでないものに別れていた。


* * *


「ここか」


 煇は配信のキャプチャ画像とこの場所が一致することを確認した。


「どうするの?」


「中を確認してくる。ここで待っててくれ」


「うん。わかった」


 煇は小屋の扉を開いた。不自然に中央に置かれたベッドの上でユメは眠っていた。


「ユメ!!!」


 煇はすぐさま抱きかかえ、娘の無事を確認した。他に妙な気配を感じたが、まずは外へ出ることにした。


「う〜ん、パパあ?」


「無事だったか!」


「あっ!ママだー」


 ユメはセリアの姿に気付いて煇の腕の中で足をばたつかせる。


「ユメ!だいじょうぶ?変なことされなかった?」


「へんなこと?よくおぼえてないや」


「そ、そう」


「もう1回中を確認してくる」


 煇はセリアにユメを預けた。セリアはユメを抱きしめたまま、少しの間、何も言わずにいた。

 セリアがユメの温もりを確かめていると、小屋の小窓から黒い小さな影が森の中へ走っていくのが視界の端に写った。


「あっ!なにか出てきた!」


 煇はすぐさま振り返り、その小人の姿を確認した。


「行ってくる。ユメは頼んだ」


 煇はその影を追って走り出した。少し離れたところで、その魔族は捕まった。


「おい、お前、口は聞けるか?」


「ウーッ!ウーッ!」


「ちっ、ダメみたいか」


 煇はその魔族の姿形、まともに口の聞けない様子を見て黎人を思い出してしまった。


「どうしたものか」


 魔族は言葉が伝わらないことを察したのか、真っ直ぐ天を指さし始めた。


「何が言いたいんだ?」


 指差す方向を見ても一面青い空があるだけ。魔族の顔を見返すと急に青ざめていた。


「ど、どうした」


「ウッウッウッ」


 その魔族は急に喉が詰まったように喘ぎ始め、白い泡を吐いて絶命した。


「おい!しっかりしろ!」


 体を揺さぶるが反応がない。


「一体、どうなっているんだ……?」


* * *


 一方、ヒカルも女神の配信を見ていた。配信の内容そのものや、映し出されていた真っ白な空間への疑問はあったが、彼が一番注目していたのは、そこではなかった。


「なるほど、彼が女神の所有物を使ってもジャックできなかったのはこういうことだったんだね」


 ユメの捜索を手伝った勇者の能力を使っても視界ジャックは失敗していた。女神には能力が効かないのだと思っていたが、そもそも前提が違っていたのだった。


「煇くんの1/10くらいのステータスじゃ、魔族を倒せるわけがないね。では、本物は一体どこへ?」


 ヒカルは、画面に表示された自称女神の知能以外全て1桁のステータスと謎のスキル群を見て考え込んでいた。


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