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第21話 争いは同じレベルのもの同士でしか成立しない

 ファンを装うアンチに唆され、黎人は生配信を行うことにした。もちろんそこにはアンチが大勢集い彼を糾弾するものたちで溢れかえった。


「女性ファンに片っ端からDM送ってんの?」

「気持ちの悪いオッサン」

「勇者だから何してもいいと思ってそう」

「おもちゃの勇者」「相変わらず汚えな」

「なにいってんの?こいつ」

「聞き取りづらい。腹から声だせ」


 いつもと同じようなことを繰り返し言っていた黎人に対して大量のアンチからの辛辣なコメントを浴びせられた。


「ふざけんな!アンチコメするやつはブロックする!」


 彼の粛清が始まり、コメント欄はすぐに静かになった。残ったのは称賛するコメントだけだ。

 

「応援してます。頑張ってください」

「つらい思いをされていたのですね」

「俺はお前を信じているぞ」


 当然ショウヘイもこの配信を見ていた。こんなやつでも勇者が務まるんだと内心バカにしていた。アズーロを雑に放り出されたショウヘイにとって明らかに格下な黎人の存在は都合がよかった。

 女王には冴えないオッサンと蔑まれ、ステータスやスキルも馬鹿にされた。自分も勇者として特別扱いされるはずだった。自分よりも下がいる。そう思っただけで、少し気分が良かった。

 

 ショウヘイは最初は応援してやるつもりだったが、黎人の最近の行動を見ていて気が変わってきた。

 ちょっと試してみようと思った。


「俺、最近召喚されたばかりの勇者なんだ。先輩、色々教えてください」


 コメントを見つけた黎人はすぐに反応した。画面の向こう側にいる勇者が格下であると確信した。マウントを取ることができる、と。


「わたしのほうが3年先輩ですね。わたしは魔族を倒した勇者です。お前みたいな新参はわたしに従うべき」


「何言ってんだ、コイツ。お前全ステータス0のゴミだろ?俺のほうがステータス高いぞ」


「ステータスは誰かが勝手に決めただけ!関係ない!」


「でも実際弱いんだろ。間違ってないじゃん」


「でも魔族はおれが倒した!!!おれが倒したの!!!」


「証拠もないのに誰が信じるんだよ」


「うるさい!お前はおれに嫉妬してるだけ!わたしが本物の勇者だから!嫉妬している!」


「なに言ってるんだこいつ?」


「知らない!お前もブロックする!今日はもう終わり!」


 先輩風を吹かせる黎人の発言にコメント欄は盛り上がっていたが、黎人は配信を終了した。

 黎人は怒りが収まらない。ファン限定の掲示板でショウヘイの身元を特定するように頼んだ。


「あいつはおれをバカにした。おれはあいつをゆるさない」

「あいつの居場所を特定しろ。やり方はまかせた」


 ファンはあっさり場所と素性を突き止めた。最近召喚された勇者は2人だけだから特定するのは簡単だった。


「おれが本物だから怖いんだ。あいつはおれに嫉妬している」

「あいつを潰す。なにをしてもいい。潰せ。俺をバカにするやつは許さない」


 黎人は新しい動画をアップした。ファンが特定した情報を公開し、ショウヘイを潰す、アンチを潰すと高らかに宣言したのであった。


* * *


 一方、ショウヘイはアンチの掲示板で協力者を探すために書き込みを続けていた。

「俺は正論を言っただけ」

「俺は何も悪くない」

「あいつを黙らせるのに協力しろ」

「弱い勇者は退場させるべき」


 しかしアンチたちの反応は悪く、逆にショウヘイのステータスとスキルを特定され、逆に叩かれ始めていた。

「お前のステータスも似たようなもんだろ」

「どんぐりの背比べ」

「セルフデバフってなに?まさかその数字から更に弱くなるの?」

「使える能力がなにひとつない」

「なんでこんな奴呼び出したの?もう勇者要らないだろ」

「勇者ってこんなのばかりなの?幻滅したわ」

「争いは同じレベルの者同士でしか成立しない」

「もっと争え。俺達を楽しませろ」

「ステータス0 VS 自己デバフ いい勝負になりそう」

「世界一どうでもいい争い」


 そしてショウヘイ側もそれに反論する。

「俺はマーチ卒のエリートだぞ!全ステ0のゴミと一緒にするな」


「で?それが何の役に立つの?」

「マーチとかFランだろ。笑わせんな」

「この世界に来たらなんとでも言えるもんな。絶対ウソだろ」


 頭に血が上ってしまったショウヘイはアンチに対して捨て台詞を吐いて後にした。


「お前ら後から俺を持ち上げても遅いからな。覚悟しとけ」


 ショウヘイは許せなかった。なによりも黎人と自分が同列に扱われることが。

 黎人は許せなかった。自分を認めない世界と否定する者たちが。

 しかし周りの人間は2人を面白おかしくコンテンツとして消費していた。

 誰もこんなしょうもない争いを止めることはしなかった。まさか本当にこの2人がやり合うとは思っていない。仮にそうなったとしても、それはそれで面白いものが見られるからだ。


 どう転ぼうが、観衆はどうでも良かった。

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